【男】と【漢】の差
感覚的に把握しよう
あくまでも個人的な仮称として男性を【男】【漢】と区分します
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もし、この作者(男性)にBLを書かせたら、どうなるだろう?
主人公を性転換させてしまうなら『男』
ガチムチ筋肉のふんどしゲイ兄貴ネタを突っ込んできそうなのが『漢』です(笑)。
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『漢』系の作者の作品は、どこか男のストイックさがあります。
どんなにハーレム要因女子を詰め込んでも、ちょっと大胆なエロ要素を詰めても、なんかエロくない。
メインは男で、あくまでも女はオプション。
登場人物も男女比率が半々〜男が多めで、主人公が尊敬する『兄貴キャラ』『師匠キャラ』が登場したりするため、登場人物の平均年齢が高め。
女性読者に媚びる意識が低い、あるいは皆無という感じで、BLじみた話を書かせるとマッスル兄貴による筋肉祭りと化し、
萌えを書こうとして燃えになる。いまいち萌えない娘が爆誕する。
古風なパロディネタを突っ込んで来るなどの特長があげられます。
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対して『男』作者の話はバラエティーと奇想にとんだ楽しさ、軽やかさがあります。
ワクワク感のあるストーリー。丁寧な説明があるから理解しやすく、読みやすい。
脇役や登場人物たちが魅力的に描かれ、ちょっとドキドキさせられるようなサービス・エロがあったりする点も大変いい。
特長として女性キャラクターの比率が多く、ロリババアと呼ばれる若づくりキャラの台頭もあり、平均年齢も【漢】と比べて10〜20歳は若い。
チートや有利な能力を駆使した爽快感。女の子達の個性を魅力的にアピールしてくる技術の高さがあります。
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BL展開としては笑いに逃げ勝ちな【漢】作者に対し、【男】作者は性転換シチュエーションなどを使い、ソフトに描写。
男の友人と喋っているのを恋人関係と誤解させる(これでBL)
女の子と合法的にいちゃいちゃしたり、可愛く着飾られたり、男の無神経なセクハラに閉口したりと女性的な感覚、配慮でも見せてくれる。
初心者や読者や女性読者にも読みやすい工夫や配慮があり、見たことのない人々、感じたことのない世界の空気を楽しませてくれる話が多い。
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両者の違いは【主人公】によく表れます。
『漢』作者の書く主人公は、タフでやや不細工。
『男』作者の書く主人公は、理性的でやや美形。
それぞれ主旨が違うため、こんな差違が出ます。
あなたは【主人公】に何を求めますか?
そう聞かれたらまごつく方が多いかもしれません。
【男】作者は『自己投影』を
【漢】作者は『理想像』を求めて作品作りを行っています。
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ハァ?
と、感じるかもしれませんがまず例題
『ギャルゲー』系。
主人公には特定の性別、職業以外の人間性がなく“無個性”にしてあるのが一般的です。
主人公キャラクターと自分を同一化し、画面の中の彼女と、より親密にいちゃいちゃする気持ちを味わってもらうためです。
そのためゲーム画面もヒロインやギャル達がメインで、主人公は手足しか写っていない。目元が陰っていて顔がわからないような演出がよく使われます。
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マンガで言うなら
『ドラゴンボール』の悟空。
『進撃の巨人』のエレン
アニメでの
『ワンピース』のルフィがそれに近い。
嫌われる『クールぶった主人公』『無駄に熱血漢主人公』にも同様の雰囲気があるかと思います。
彼らは天涯孤独の存在で、行動パターンが明確。単純で、それでいてどこか大切な何かが足りない。
意図的に『人格』を排除し、模範的なリアクションを答えるような質問だけを投げ掛けられる存在。
それが【男】作者の好む主人公像です。
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【男】主人公の多くは経歴、性格、交遊関係、技能は初っぱなから読者に提示され、疑問に思う点は特になし。
場合によっては乳幼児期からストーリーを開始させる作者も多数。
読者の疑問=主人公の疑問になるため、分かりやすく読みやすい。
全ての前提条件を開示してくれるため、複雑なストーリーや伏線を入れやすいし説明をねじ込みやすい。
読者にも作者にも優しい主人公でもあります。
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こんな【男】主人公の難点は
「ベタすぎてつまらない」事です。
主人公は読者のアバターであるべき
その前提で生まれた彼らはベタの一言に尽きます。
『そこそこの容姿』
『14〜19歳』
『学生』
『学生程度の知識』
プラス、こうだったらいいのにな要素
『天才』
『美形』
『優秀』
『人に好かれる』
『金持ち』
をくっ付けられると【量産型主人公(笑)】という感じのキャラクターと化してしまいます。
更に、あまりに若すぎるため、様々な職業に就いていても、どこか胡散臭さが漂ってしまうのも難点です。
交遊関係も若くなりがちで年上と関わる機会も少なく、あまりストーリーに深みを出せる年齢のキー・パーソンを出しにくい作品傾向になっています。
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対する【漢】主人公は
『こち亀』の両津
『進撃の巨人』のリヴァイ
初期段階の
『ワンピース』のルフィ などになります。
【漢】主人公は総じて“語られていない過去”があります。
謎のコネクションがあるだとか、奇妙な癖がある、不可思議な言動をする。漠然と実績を感じる。
それらの過去分だけ彼らは“年上”で“大人”で、どこか謎めいている。
自分とは違う人間。
それが【漢】主人公の本質です。
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こういった【漢】主人公作品には「第二主人公」がいたりします。
第二主人公は新人であり、野望はあるが勇気や自信がなく、能力は未知数。
圧倒的に技術と経験、度量が足りない、口ばかりの軟弱な「子供」「初心者」
『進撃の巨人』のエレン
『ワンピース』のコビー
が該当します
ヒロインが代わりに務めたりしますが「第二主人公」は読者や作者のコンプレックス要素をたっぷり詰め込んだ【読者のためのアバター】でもあります。
そんな「第二主人公」を指導する先輩や目標のシンボルとなる上司的な位置にくるのが【漢】主人公。
彼らは「第二主人公」ひいては読者の、厳しい兄貴分であり、憧れの未来像。暗闇で手を引いてくれる存在です。
こんな作品の難点は
「主人公を好きになれるか」
にかかっています。
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ある種完全無欠パーフェクトな【男】主人公と違い、【漢】主人公は欠点だらけ。
失敗だらけで絶望し、のたうちながらも闘い続ける不屈のタフガイ系です。
第二主人公より老けていて不細工(渋いと言って欲しい)。勝っているのは経験や努力量であり潜在能力も低め。無神経。珠に傷……というより傷だらけ。
それが【漢】の美学ですが、はっきり言って理解できない。
性に合わない。
ウザい。
ついていけない。
生理的に無理。という方も多々います。
ナルシズムの極致であり【不細工、男は顔じゃない】といいつつ、女には顔を求める、美女にもてたい臭がプンプンプンプン。
どこまでも泥臭く、汗臭く、血腥くハードボイルドなので、嫌いな人は大嫌い。野蛮、萌えない作品に興味ない。 汚い。女性蔑視反対。
嫌いになる要素はだいたい全て揃えられ、それを上回る『魅力』を感じないと読めない作品になります。
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利点は
「バリエーションの豊富さ」
「奇想天外なストーリー」
になります。
【漢】主人公は大量の敵が、恋人が、悲しみが、敗北が、憎しみが、トラウマとトラブル、因業と因縁があって当たり前。
職業も読者に重ねる必要はなく、謎の専門職、時代錯誤なファンタジー職やとんでもSF職をぶちこみ放題でもあります。
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ただ【男】と【漢】はコインの裏表。
主人公は時にミステリアスなタフガイ時に普通の少年となり、【憧れ】と【親近感】をこちらに投げ掛けます。
それらの裁量は人それぞれ、判断するのは読者の勝手ではありますが、わりとパターンがあるので一考してみてください。