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第三十六話


 ――――ここに記されるのは後々へ語られることのない出来事。

 公に残せぬ記録。歴史の陰に呑みこまれる真実。言わば、大衆が知りえない秘匿される話である。


 それはコウとリーネの説得の末、ミシェル・フィナーリルという担任教師を部の顧問に迎え入れた数日後のこと。


 深夜。月は出ていなかった。覆うように広がる密雲が、夜空を覆い隠してしまっているのだ。

 クライニアス学園に住む人々のほとんどが寝静まっている。夜更かしの学生でも眠りにつくような、夜から朝へと移りゆく時間帯である。


 月、そして星々の姿が見えないために暗闇が広がっている。しかし、全く光がないというわけではない。学園各所に備えられた魔術の炎を灯す松明が、穏やかな光となって薄闇を作り出しているのだ。

 特に学園の中心に聳えるパースライト城は目印となるべく、より多くの松明で飾られ、おぼろげな立ち姿を以て静寂を見守っている。


 学園では消灯時間が決められていた。それは生徒に対してだけに限らず、幾分か時間は違うが教師に対してでもだ。両者ともに健全な生活を送らせるためであった。

 明かりのある部屋が夜間巡回中の警備部隊に確認されると、次の朝には寮長などの各管理者へ連絡が届き、調査すら行われるくらいだ。

 そこまでされて起きていようとする者はおらず、この時間帯に起きて活動しているのは警備部隊くらいものだ。

それが決まり事とも言える日常である。


 この日も当然ながら警備部隊による夜間の巡回は行われていた。

 二人組の隊員がパースライト城から南、建物の少ない区間を慎重に歩んでいた。修練場のような広い空間を必要とする施設が集まる区間なので、必然的に見晴らしがよくなるのだ。

 二人の隊員は比較的若い部類だが、練度に関しては申し分ない領域のようだ。一つ一つの動作に無駄がない。


 隊員達は光源となるものは一切持たず、しかし、薄暗闇の中を迷いなく進んで行く。暗闇を見通せるようになる魔術の『暗視』がすでに施してあった。

 警備部隊の決まりで、巡回は絶対に一人で行ってはいけないことになっていた。もし侵入者を見つけた場合は二人で応戦するか、一人が相手をしている間にもう一人が応援を呼ぶようにするのだ。


 歩む隊員達にとって、そこは何度も見回った経験のある巡回の区間であった。しかし、二人に決して油断は生まれない。それが警備部隊の教えだったからだ。

 声もなく、精練とされた動きで互いの死角を潰すようにして進んで行く。


 だからこそ、それに気づいた。


 一人の隊員が一点に顔を向け、動きながら黙ってもう一人の隊員の肩に触れる。

 暗がりの中、集中しながら周囲の気配を探る。その状態で声もかけずにいきなり触れられれば、跳び上がってもおかしくはない。

 しかし、肩に手をかけられた隊員は大きな反応を見せなかった。一度動きを止めたものの、ゆっくりと振り返る。


 その表情には片眉が上がっている程度の変化しかない。驚きなど微塵もなく、単に何か用なのかと言葉なく問いかけるものだ。

 自分の背を守る仲間を信頼している。それが如実に表れている瞬間である。


 相方を止めた隊員は、肩に置いていた手を眼前へと移動させる。そして、素早く動かした。

 それを見て、振り返った方の隊員の表情が一層に引き締まった。


『気配を感じた。侵入者の可能性あり』


 手の動きは簡潔にそう伝えるものだったのだ。

 これは警備部隊の中で使われる暗号の一種で、手の動きによって相手に意志を伝えるためのものだった。


 夜間の巡回は辺りに静寂が満ち広がるので、場合によっては小声でも離れた位置にいる者に聞かれる可能性がある。

 こちらのことを敵に悟られないために、警備部隊では基本的に必要がなければ、声を発することが禁じられていた。


 二人は一度頷き合い、確認を取ると次には地面を蹴った。相手に身構える時間は与えない。

 気配があったのは修練場と別の区間を繋ぐ、石畳の道を外れた先にある雑木林。景観と簡素な遮蔽物の役割を担うそれだが、身を隠すには打ってつけの場所である。

 二人の内、一人が先行し、もう一人がすぐに追撃ができる位置取りで動く。


 先を駆ける隊員は一直線に進む。気配を見つけた隊員だった。

 手の内で剣の柄を回転させ、逆手に持ち替えて脇を締め、手が胸の前に来るように真っ直ぐ腕を伸ばす。

 そして、木の根を避け、幹をなぞるように踏み込んだ。


「はあぁっ!」


 刺突。

 木の幹に背をぶつけるのと同時に、自らの脇下を削るような勢いで剣を操り、裏にいたその相手に突き立てた。

 ――――いや、突き立てたつもりだった。

 金属が削れる甲高い衝撃音が静寂を切り裂く。


「ちぃっ!」


 敵の意表を突く、完全な不意打ちだったはずだ。

 だが、相手はどうやら防いだらしい。

 先制攻撃を仕掛けた隊員は舌打ちしつつ、転がるようにしてその場を離れる。


石獣(せきじゅう)(きば)!」


 間を置かずに放たれたのは、後ろで控えていた隊員による攻撃魔術だ。剣を弾いたばかりの敵がいると思われる地面が膨れあがり、鋭利な石の矢が容赦なく弾け飛ぶ。

 剣を振るった隊員は飛び退くように後ろへ移動し、魔術を放った隊員の傍に寄る。


 二人はしばらく警戒し続けた後、一度目配せをすると構えを解いた。

 そして、確認のため近づこうとしたところで、


 ――――愚か者どもが。


 唸るような低い声が響いた。それを耳にした瞬間、肌が粟立つ。

 戦闘後の汗が引くのが分かる。認識できたのはそこまでだった。

 構え直す暇すらない。

 自分達の得物が弾き飛ばされた。そのことに気づくのと同時に、視界が激しく揺さぶられる。至近距離で爆発が起こった、と言われれば納得してしまいそうな衝撃が二人を襲ったのだ。


「がふっ!」


「あぎっ……」


 ようやく声を発したのは短い浮遊感の後、地面と背中が熱い抱擁をしてからである。土を抉りながら後方へ無茶苦茶に飛ばされたのだ。

 あまりの衝撃に、息ができないのは肺が破裂したからだと錯覚するくらいである。


 二人はいきなり世界が昼を迎えたと思った。いや、視界が一瞬真っ白に染め挙げられただけだった。

 意識が飛びかけたのである。

 そして、遅れてやって来る痛み。身体は呼吸を欲しているはずなのに、駆け巡る痛みがその行為を止める。

 劇的に、何かが起こった。


 何者かの気配が、丁度横並びになって転がる二人の間に突如現れる。

 訳が分からなかった。だが、隊員達は動いた。意識しなくとも身体が動く。警備部隊で行われる厳しい鍛錬は、生命の危機を感じる彼らに条件反射で行動を起こさせた。


 二人はほぼ同時に全く同じ動作で、腰から常備品の短剣を抜き放つ。自分達を数秒の間にここまで追い込んだ謎の人物に、隊員達は何とか一矢報いようと立ち上がろうとした。


 だが、それを予想していたかのように、再び衝撃が訪れた。

 腹に、腕に、重い一撃を続けざまに受けた。どうやら打撃らしいことは、隊員達は身を以て知った。

 それしか、分かることはなかった。


「っはぁ! はっぁ!」


「ぐっ……ごほっ、う、あ……」


 腹への一撃で何とか補給した酸素を、腕への一撃で短剣を失った。

 もはや咳き込みながら無理やり息を吸って脳に酸素を送り、止まりそうになる思考を強引に動かすことくらいしかできない。

 口の端々から涎が垂れ、みっともない姿を晒す。しかし、二人の隊員の目には怯えといった感情は生まれていない。

 むしろ、燃え上がるような闘志が浮かんでいる。


 場には隊員達の荒い息遣いだけが聞こえる。現在、謎の人物の前で、強制的に跪かされている状態だ。

 そこからの追撃はなかった。どうして何もして来ないのかと疑問に思いならが、二人は素早く顔を上げて敵の姿を確認する。


「…………えっ?」


「なん……あれ……?」


 途端、二人は戸惑いの声を上げた。狼狽した、とも言えるくらいだった。

 敵は老人だった。

 痩せて細く見えるが、年齢を重ねていることを考えれば健康だと言えるくらいだろう。

 服装は特筆しようがないくらい簡素なもので、風になびく白いローブ、それと両手の中指にはめられた指輪くらいが挙げられる特徴である。


 毛髪も白く、眉や胸元まで伸びる髭もやはり白い。禿げあがってこそいないが、かなりの高齢を思わせた。

 全体的に老いを感じさせる。刻まれたような皺が一番にそれを物語っているだろう。

 だが、その瞳から放たれる鋭い眼光は、衰えを感じさせない強固な意志を感じさせた。


 老人がどうして深夜の学園を徘徊し、あまつさえ学園が誇る警備部隊隊員を打倒して見下ろしているのか。

 いや、打倒したこと自体は、不思議なことではないのかも知れない。年齢はそのまま技量の高さに繋がるとも言える。

 ならば、熟練の戦士。名の知れた人物なのだろう。

 侵入者は老兵だったのだ、そう二人は納得する。


 ――――という展開だったのであれば、まだ良かったと思える相手が二人の前には立っていた。


「あ、ああのその……」


「く、クライニアス様……」


 二人を見下ろすのは自分達が守るクライニアス学園の長であり、王国の騎士団で言い表すなら将軍とも言える存在だった。

 偉大なる騎士と呼ばれた男、ゼウマン・クライニアスを前に二人は震えあがっていた。

 その震えは、誰よりも刃を向けてはいけない相手だったこともそうだし、何よりも絶えず向けられる巨大な重圧がそうさせた。


 残虐な殺人犯だろうと睨み合えるはずの隊員達は、自然と視線が下がっていくのを感じた。

 それだけ、彼らに向けられる目は冷酷であった。




 ゼウマンはこちらから視線を逸らす隊員二人を見下ろす。彼らは地べたに身体を投げた出した状態のまま、時が止まってしまったかのように身じろぎ一つせずにいる。


 感情もなく彼らを見つめ続けたが、しばらく時間を置いてから刺し貫くような視線を和らげた。穏やかとは言い難いが、隊員達の震えが止まる程度には落ち着かせる。

 そもそも本気で彼らを威圧していたわけではない。あくまで、戒めとするためだった。


「今から話をするが、お主らはその体勢で聞くか?」


 言葉を聞いた隊員達の反応は素早かった。まだ辛い状態だろうに、弾かれたように身体を起こして立ち上がった。一人は平衡感覚が少し狂ったままなのか、がくりと膝をつきかけるが寸前の所で耐えている。

 ゼウマンの前で彼らは直立の状態で待機した。どちらも青い顔だった。

 彼らはどうしてこんな状況になっているのか、と頭の中は疑問だらけに違いない。


「お主ら、わしは誰だ?」


「は?」


 思わず、といった感じで一人が間抜けな声をもらした。

 ゼウマンは繰り返す。


「わしは何者だ?」


 問いかけはまるで呆けてしまった老人のようだ。八十が見えてきた歳なだけに、冗談とは笑い飛ばせないものがある。

 年齢を考えて、悪い想像をしてしまったのだろう。間抜けな声をもらした隊員が、さっきまでとは違う意味で顔を青くしながら答えた。


「貴方はクライニアス学園の学園長、ゼウマン・クライニアス様です」


「何故だ?」


「何故って……」


 予想を上回る返しだったに違いない。言葉をなくしている。

 困惑の色を強く滲ませる二人に対し、ゼウマンはまだ気づかないのかと溜め息をつく。


「何を以てゼウマン・クライニアスだと判断したのかを聞いておるのだ。お主らは襲われた。わしは先ほどまで敵対していた相手だ。魔術で姿を変えているかも知れない、と何故考えない?」


「あっ!?」


「……そういう、ことですか」


 一人は目を見開き、もう一人は悔しげに呻いた。


 巡回をしていた彼らはある作業を怠ってしまった。それは攻撃を仕掛けてきた相手を調べることだ。

 彼らからすれば言い分もあるだろう。相手が偉大な騎士と呼ばれ、老いてもなお強さを保つゼウマンであり、自分達にとって上司に当たる人物なのだ。

 強さだって身をもって体験したばかりである。


 身元確認のやり辛さは半端ではないだろうし、状況が状況なだけに冷静な考え方ができるかも微妙なところである。

 そういった心理が働いているだろうことは、ゼウマンも察している。けれども、その上で叱らねばならなかった。


「お主ら警備部隊に与えた任務はなんだ? お主らに任せたものはなんだ?」


 二人の隊員は間を置かないで順に答えた。


「学園の守護です!」


「学園に住む人々です!」


 その表情は苦渋に満ちている。彼らも理解したのだ。

 もし仮に、前に立つゼウマンが偽物だった場合、適当な自己完結で見逃していれば、どのようになったか分からない。


 そもそも大前提として、警備部隊では巡回の最中に怪しい人物を見つけた場合、相手が危害を加えようとしてこない限り、平和的解決を目指さなければならない。

 身元確認もその一環であり、義務である。

 だからこそ、ゼウマンは彼らに厳しく接しているし、彼らもそうだと教育されている以上に反論の言葉を口にしようとはしない。

 項垂れる二人は警備部隊の中で若い部類だ。反省しているらしいことを確認して、ゼウマンは頷く。


「分かったのであればよい……魔導具を出しなさい」


 ゼウマンがそう言うと右側に立っていた隊員が、慌てて腰のポーチから拳ほどの大きさの魔導具を取り出す。

 無色透明な水晶に、蛇が絡みつくように鈍色の金属が巻き付いているという品だ。全ての警備部隊隊員に支給されている。


 これは学園が開発したもので、特別な術式が施されている魔導具だ。と言っても機能は単純なもので、この魔導具と契約した者が触れると水晶が光を発するだけである。

 これの特別なところは魔力を操る才のない、完全に平民出の者でも扱うことができるという点だ。


 騎士として武勇を馳せたゼウマンの下へ集まっているためか、警備部隊では魔術を扱えない者が割と多い。魔術師がいないわけではないので、割合で言うと扱えない者が少し多いといった感じだ。

 この魔導具には警備部隊の幹部から新人、最高司令官であるゼウマンまで契約という形で登録がされている。


 ゼウマンは差し出された水晶の魔導具へ手を伸ばす。指先に感触を覚えるのと同時に辺りが照らされた。

 僅かに目を伏せる。魔術の『暗視』は闇を見通せる代わりに、光をより強く見せてしまうので、気をつけないと目をおかしくしてしまうのである。


 松明の灯りよりも明らかに強い光が周辺を染め上げる。水晶から間けつ泉の如く白色が湧き放たれているのだ。

 夜間巡回をする警備部隊は学園中にいるので、もしかしたらこの光を何処かで見ている者達がいるかも知れない。


「……確かに、今度こそ、断言いたします。貴方はクライニアス様です」


 うむ、と短い返事と共にゼウマンは大きく頷いた。

 これが本来は初めにやらなければならないことである。例え、相手が見知った顔であっても、この魔導具を使って確認する。それが警備部隊の規定であった。


 本人かどうかの確認もしっかりやらせたので、ここで解放しても良いだろう。しかし、ゼウマンはもう少しだけ言わねばならないことがあった。


「お主たちが気配を見つけ出したこと。これは褒めよう。しかし、いきなり仕掛けたこと。これは咎める必要がある……分かるな?」


 隊員達は俯いたまま沈黙を保つことで肯定を表した。

 警備部隊が夜間に巡回するのは、確かに侵入者などを見つけ、捕縛もしくは撃退するためである。

しかし、ここが教育機関であり、生徒がいる場所であることを忘れてはならない。


 もしかしたら規則を破り、出歩いている生徒がいるかも知れない。そのことを念頭に置かねば、最悪の事態が起こりうる。

 先ほど隊員達が剣を突き立て、攻撃魔術を放った場所に立っていたのが生徒だったら、果たしてどうなるか。それは考えるまでもないことだろう。

 だからこそ、警備部隊は剣を振るう前に、相手が逃れられない距離まで近づいてから声をかける。そう決められている。


 そのため、気配の正体を確かめることなく武力を振るった彼らに対して、罰を与える必要が生じた。

 それ故にゼウマンは二人に痛みを味あわせたのである。


「先ほどまで一連のことを罰とする。わしからこれ以上、お主らを責めるつもりはない。この件は後で直属の上の者に報告し、始末書を書くこと。良いな?」


「……はい」


「確と、拝命致します」


 言ったのがゼウマンだからか、それとも猛省しているためか。あるいは両方の理由か。

 二人の隊員は硬い顔のまま一度大きく頭を下げる。

 それを見届けてから目で行って良いと伝えると、粛々と二人は地面に転がる武器を拾って去っていこうとする。


「おっと、一つ忘れていた」


 ゼウマンはここで自分がここに来た意味を思い出した。いろいろあって有耶無耶になっていが、ちゃんと用があってこの場に来ていたのだ。隊員にちょっかいを出すために、このような時間に出歩いていたわけではない。

 もっとも、隊員達はゼウマンが時折行う抜き打ち検査だと思っているようではあるが。


 そう考えるとたまたま巡回をする区間と、ゼウマンの用がある場所が被った二人の隊員は、不運だったとも言える。


「どうかなさいましたか?」


「何か任務でしょうか!?」


 叱られた後だからか、挽回の文字が脳内に浮かび上がっているようで、呼び止められた二人は勢いよく振り返った。


「いや、ちょいとこれから鍛錬をする。毎度のように少しばかりうるさくなるかも知れない。それと、ここら一帯に人を近づけないようにしておいて欲しい」


「……いつもの、ですか?」


「うむ」


 夜中に行い、しかも人を近づけないようにする。

 意味不明な注文に聞こえるが、しかし、警備部隊に所属する者にとっては、ゼウマンがそう言い出すことは慣れていることだった。時たま、今回のようなことを頼んでいるのだ。

 それに理由だってちゃんと聞かせている。


 このような時間に行うのは、日中が忙しい為に鍛錬へ回す時間がないから。

 人を近づけさせないのは、なるべく集中できる環境を作り出すためだ。

 なので、人を近づかせないと言っても、警備部隊隊員全体へ「何処何処でゼウマン様が鍛錬を始めた。いつも通りその区間の巡回は行わないで良い」と伝えればいいだけである。

 場所が各寮に近い場合は、寮へ消音の魔術を施すために隊員が派遣されるかの違いである。


 もしゼウマンが鍛錬する区間に、侵入者が現れたらどうするのか。

 これはもっともな疑問であるが、警備部隊に所属する者達にとって最強とはゼウマンを指す。

 老いてもその強さは自分達以上だと信頼しているので、ゼウマンが任せろと言ったら誰も何も言ってこない。


「では、そのように頼むぞ」


 そう伝えれば、隊員達は頷き返すだけだった。


「了解致しました。おい、行くぞ」


「分かってるって……クライニアス様、何か御用があれば通信用の魔導具でお知らせください」


 そう言葉を残して二人の隊員達はこの場を後にした。



 2013/04/11 22:15

 一部文章と誤字脱字を訂正致しました。

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