表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/41

第十六話


 急遽行うことになったコウとの模擬戦を前に、アヤは緊張を高めていた。

 模擬戦というからには、命のやり取りなど当然ないが、お互いの得物は専用の刃を潰したものではなく、自前の真剣を使用する。

 いくら命のやり取りをするわけではないとはいえ、真剣を扱う以上、万が一ということもありえる。


 アヤは必要以上の力で刀を握る自分の手を見て、緊張していることを自覚した。

 いつもならここで自身を叱咤するところだが、今回ばかりは仕方がないと割り切る。今からアヤが刃を交える相手を思えば仕方がないと。

 この模擬戦はアヤが駄々をこねる形で実現したようなものである。

 理由としては、「よく分からない内にやられてしまい、納得出来なかった」というものたが、それはアヤにとってただの方便であった。


 ロンから借りた指輪の力を使い、コウを背後から奇襲した。

 それにも関わらず、彼は事前に知っていたかのように、反応して見せたのである。驚くべき、というより信じられないような気配察知能力である。


 それだけに留まらず、あの時、奇襲という事態にコウは完璧に反応して見せた。

 背後から迫るアヤの腕を、姿を確認しないまま掴み取ったのだ。

 あまりにも寸分狂いもないタイミングに、たまたま彼が伸ばした手にアヤが運悪く自ら腕を乗せた、という方が、説得力のありそうな完璧なタイミングであった。

 技の入り、投げた後の行動までも完璧。胡散臭いくらいに全てが完璧であった。


 思わずロンが自分が来ることを教えていたのではないのか、とアヤは勘ぐったが、投げた後の彼の驚いた様子は演技には見えなかった。

 そもそも事前に来ることを教えられていたとしても、あそこまで完璧に反応出来るかも謎である。


 そう、アヤは既に理解しているのだ。


 実力を確かめるなんてとんでもない。コウは戦士の理想像が具現化されたかのような存在なのだと。

 無理を言うことになるが、そんな存在と手合わせが出来る機会がある。

 そう考えてしまうと、アヤは駄々をこねるという恥を晒すような行為でさえ、気づけばやってしまっていた。

 つまり、今回の模擬戦は「猛者と手を合わせてみたい」という、武の道を志す者であれば、誰もが抱かざるを得ない衝動によって行われることになったわけである。


 余談だが、コウと手合わせをすることになって、かなり浮かれてしまい、その際に思わず援護してくれたロンに抱きついたことを、後々思い出してアヤは一人悶えることになるが、それはあくまで余談である。


「ルールは細かく決めたりしない。互いに真剣だから今回は寸止め。互いに後遺症が残るような攻撃は禁止。もちろん、これは攻撃する側もという意味も含む。時間は止めるべき時間になったら俺が止める。異論は?」


 緊張のせいで余計な力が入る手を何とか緩めようとしていたアヤは、コウが適当な位置に立って簡単なルールを話すまで、意識が全く周りに向いていなかった。

 このままでは折角の機会が無駄になると、アヤは気合を入れなおす。


「ありません!」


 昂揚を隠せず、アヤは返事すら力が入ってしまった。それを聞いてコウは僅かに微笑むと「そうか」と呟いた。

 笑われてしまい、恥ずかしさが沸き起こるが、そのまま彼が呟きの後にすぐ、


「では、始め」


 と、短く続けたので、アヤは恥ずかしさなど叩き潰し、強引に気持ちを切り替える。


「いきます!」


 自分を奮い立たせるため、アヤは宣言するように力強く言う。

 アヤは自身の半身とも言える刀の柄に手をかけ、数えるのも馬鹿らしくなるくらい繰り返してきた動作で、刀身をあらわにさせる。


 アヤの持つ刀は刃渡りが少し短く、銘はなかった。

 故郷を出る時に、アヤが師と仰いだ者から授けられた物である。少し短いのは女であるアヤを配慮してのことだった。


 まず、左手の小指で柄頭に絡ませ、他の指を順に握らせる。

 そして右手は鍔の下に握るよりは添えるようにして軽く握り、基本中の基本、正眼の構えを取った。

 アヤの流派では始めに正眼で構え、相手の動きに合わせて構えを変えていく、という風な戦い方をする。


 握る刀の刃に目を移す。

 緩やかな曲を描く少し短い刃渡り。刀の特徴の一つとはいえ、圧倒的に薄い刀身は分厚い剣とぶつかれば、簡単に折れてしまいそうなくらい脆そうである。


 しかし、アヤはこの刀で今までリーネを襲う様々な凶刃と切結んできたが、刀身にはひび(、、)一つ入っていないどころか、刃こぼれ一つとして存在しない。

 その秘密はアヤの故郷より伝わる業、そして刀身に刻み込まれている文字にある。


 刻まれている文字、それは古代より失われたという魔術文字であった。

 彼女の故郷では物質を強化する意味を持つ魔術文字が、奇跡的に先祖代々より刀の製造法という業と共に、途絶える事なく伝えられていた。

 本来ならどんな業物であろうと、鉄の塊のような濃厚な剣とぶつかり合えば、簡単に叩き折れるはずである。

 しかし、アヤの故郷に伝わる業と魔術文字、この二つが合わさることで、薄さが特徴である刀でも、剣と渡り合える頑丈さを宿すことを可能としていた。


 アヤが魔力を込めると刀身に刻まれた魔術文字が淡い光を放つ。

 そうすると線が入るようにして、一瞬、刀身全体に光が走り、それは直ぐに収まった。

 この瞬間、掘り込まれた魔術文字が淡い光を放つこと以外は何も変わらない、銘のないアヤの刀は、ただの名剣程度には劣らない一振りと化す。

 いつもなら刀を抜くと共に行う作業だが、アヤは緊張を紛らわす為に、確認するように順を踏んでこれを行った。


 ふと、アヤがコウを見れば、彼は魔力を込めるまでの作業を興味深そうに見ていただけで、手を出さないでいたようである。

 アヤはそのことに対する感謝を僅かに身体を傾けるだけの簡素な礼で示し、そうしてから目で訴えかける。

 次はそちらの番であると。


 それに気がついたコウは口の端で薄く笑うことで反応を示し、そして腰の剣に手をかけた。


 彼が持つ剣。その見た目は正直に言って、みすぼらしいというのがアヤの感想だった。

 全長六十センチ程の何処の武具屋を探しても、当たり前にありそうなただの剣。

 素材として使われる金属によって変わってくるが、彼が素振りをしている所をアヤが見た限り、材質は鉄のようであった。しかも、大分粗末な安物のようである。

 アヤはその剣は素振りだけが用途の為、そういった安物を使っているのだと思っていた。


 しかし、その認識が間違いであることをアヤはすぐに知ることになる。

 アヤが見つめる先で、コウが柄を握り、そしてすっと鞘から引き抜いた。

 ボロボロになった布が巻かれた柄の先、その先には確認した通り荒鉄によって形成された刃が姿を表す。


 瞬間、アヤは肌が粟立つのを感じた。


「ッ!?」


 反射的にアヤは刀を斜めに傾けて胸元に引き寄せ、防御の構えを取りながら大きく後ろに跳んだ。

 跳んでからアヤは自分の行動に驚く。無意識、というよりは本能的な動きだった。

 コウは展開を認識出来ない魔術も、剣による攻撃行動も起こしていない。彼からは殺意も何も敵意すら向けられていない。

 ただ剣を抜いただけである。それだけで、アヤの防衛本能は刺激されたのだった。


(恐ろしいな……)


 アヤは素直にそう思った。

 護衛をやっている以上、気配というものにアヤはかなり敏感である。

 それにも関わらず現在のコウからは、先ほど感じたものは何だったのかと疑問に思う程に、何も感じられない。

 抜いた剣も構えることなく、ただ右手にぶらりと持っているだけである。


 模擬戦とはいえ、戦いであれば、殺意といった負の感情でなくても、なにかしら威圧感は出てしまうものである。

 それは強者であればあるほど、隠せなくなるものだ。

 そのはずなのに、コウからはそういったものが殆ど感じられない。この場に及んで実は弱いのでは、などとは流石にアヤも愚考したりしない。

 コウはどうしても滲み出てしまう、強者の気配というべきものを押さえ込んでいた。

 それをアヤは恐ろしいと思った。


 さっきのは剣を抜いたことで、一瞬だけこぼれた気配を、アヤの本能が感じ取った結果だった。

 無意識とはいえ、防御反応を示した自分をアヤは褒めたいくらいである。


(お嬢様がコウ殿をいきなり信頼しているのは、まさかこれを見抜いていたから……?)


 自身を取り巻く環境のせいで、リーネは人を見る目がかなり養われている。なので、可能性は皆無ではない。しかし、武術を学んだ経験がない彼女にそれが可能だろうか。

 そこまで考えて、アヤはその思考を無散させる。

 余計なことを考えながら戦えるような相手ではない、と考えてアヤは意識を切り替える。


(先日までの自分がここに立っていたら、跳んでしまったことを疑問にも思わずに突っ込んで、何の成果も得られなかったな)


 コウの実力を怪しんでここに来た身として、アヤは自分を恥ずかしく思う気持ちでいっぱいになる。

 アヤは彼の時間割に対してけち(、、)をつけたが、それは大きなお世話だったのだと思い知った。

 彼は様々な専門家を生み出すクライニアス学園で、戦い方について学ぶことなど何一つなかったのだ。逆にアヤが勝手に学ぼうとしているように、教える側でも良いくらいである。


 アヤは自分の身体が震えるのを感じた。武者震いなのか、それとも怯えからなのか。それを考える前にアヤは一歩踏み出す。

 怯えだと認識してしまうと身体が動かなくなると思ったからだ。

 彼の力を既に認めている以上、今から始まる戦いは護衛の任に就く者としてではなく、一人の戦士としてアヤは彼と向き合う。


(勝ち負けは考えない。コウ殿を相手に寸止めなど無用だろう。あくまで全力を出すのみ)


 心の内でそう呟き、アヤは足を速めていく。


 アヤの挑戦が、今、始まる。




 アヤの気魄の込められた掛け声、そして無闇に突っ込んで来たりせず、慎重にこちらを伺う様子を見て、コウは彼女が自分の技量を見抜いていると判断した。


(何が納得出来なかっただよ……。しっかりと理解した上で動いてるだろ、あれ)


 ロンはそれを分かっていたから、模擬戦が行われるよう仕向けたのだろうか。そう頭の隅で考えながら、コウはとにかく目の前のことに意識を集中させる。

 視線の先ではアヤが距離をじりじりと狭めている。

 自分の技力を朧げながら感じ取っていた辺り、アヤは中々実力があるのだろうとコウは思っていた。


 実際それは外れていなかった。今までリーネを狙う数々の襲撃者と刃を交わしてきた彼女は、実戦によって鍛えられていた。

 それは慎重に慎重を重ねてコウに近づきながらも、隙があれば獰猛に攻め立てようとする気概ある姿からも伺えた。


 そんな風にぼんやりと観察していると、彼女の雰囲気が変わる。仕掛けるつもりなのだろうとコウは思った。

 そしてコウがそう思うのとほぼ同時に、彼女の動きに変化が起きた。

 すっ、すっ、とすり足で確実に近づいていた彼女は、突然足を止めると、両手で握る刀を半円を描くように背後に回し、両脇を締めてその刀を隠すようにして下段の構えを取った。


 コウの視界から刀が彼女の身体によって見えなくなる。

 そうすることで相手に攻撃を予想し辛くする型なのだろう。その型は本来なら防御側として用いて、得物の間合いを直前まで相手に悟らせず、いざという瞬間に攻撃のための構えに変えることに意味があるはずだ。

 そのことを頭に置きながら、コウは注意深く彼女の動きを観察する。


 彼女は構えると即座に身を深く沈め、止めた足に再び力を入れると、地面を滑るように疾走して来た。

 距離をつめるまでの先ほどと対照的に、それは歩数を数えるまでもなく、彼女は爆発的な加速を見せる。

 その様子はこの場で唯一の傍観者であるロンに、突如として吹き起こる疾風を連想させたくらいである。

 コウは風のように眼前へと迫らんとするアヤを相変わらず不動のまま迎え入れる。

 そして、彼女は間合いにコウを捉えると、構えを素早く上段へと変化させた。


「はあぁっ!」


 アヤは声に気魄を乗せながら、腕を引き絞り、刀を唸らせ、コウの右肩から左腰へ抜けていくようにして刃を走らせに来た。

 それをコウは身体を倒すようにして、彼女の右側へ移動することで避ける。

 初手は最初から当たると考えていなかったのか、彼女は動揺もなく即座に左足を引きながら、刀から右手を外すと、左手を引きながら柄頭でコウの腹部を狙ってきた。


 咄嗟の判断に感心しながら、コウは脇を締めながら右手の掌でそれを受け止める。

 彼女は芯で当てることが出来なくとも、流石に一刀目を囮にした二段構えを余裕で受けられるとは思わなかったのか、驚きの表情を浮かべている。


 二人の立ち居地は動きが抑制され、普通なら何をしても威力が期待できない超至近距離。

 コウは驚く彼女を置いてきぼりに、左手で拳を作り、最小限の動きで最大限の破壊力を生み出すため、体中の筋肉や関節を総動員にして彼女の丹田へ拳放つ。

 最適の軌道をなぞるようにして放たれた拳は、当たればこの距離でも十分な威力が期待出来るものだった。


 ――――しかし、それはアヤの身には届かなかった。

 アヤはその手を払いのけるようにして、強引に避けながら、追撃を恐れたのか刀を振りかぶるようにして牽制しつつ距離を開かせた。

 ここで彼女の恐れた通り、コウは追撃することも可能であったが、無理にそれを行うような時ではないので、素直に距離を作った。

 物の数秒で行われたやり取り。

 二人にとってそれはまだ挨拶がわりのものに過ぎなかった。


「――――はっ!」


 休む間は必要ないとばかりに、距離が開いてもすぐにアヤが迅速に距離をつめて来た。

 彼女は刀を片手で持ったまま急速に接近すると、コウの視界を塞ぐかのように右手を広げて腕を伸ばし、弓で矢を引き絞るように刀を持つ左手を背後にぐっと引いた。

 そして地を削るようにしてから踏み込むと、限界まで引かれた左手を右手を引く動作と同時に行いながら、穿つように放つ。


 コウの腹を貫かんとする迷いのない突きは、彼女が全力であることを物語っていた。

 コウは半身を捻り、最低限の動きで身を貫かんとする刃を避ける。

 突き攻撃は横の動きに弱いのが難点である。そのことをコウは知っていた。そして。その弱点をカバーする為、次の行動が必ずあるであろうことを。


 案の定、彼女は避けられても焦ることなく、両手で柄を握り刃を押し付けようとしてくる。

 叩き潰すようにして切断する剣と違い、刀は摩擦を利用して擦りちぎるようにして切り裂く。

 刃を相手に押し合てて引けば、致命傷とは言い難いものの、直剣に比べれば十分傷を与えることが出来た。

 いくら致命傷にならなくても、避けられるなら避けるに越すことはないので、コウは押し付けられようとする刃の腹を、下から手の甲で殴り軌道を大きく変更させた。


 まさか腹とはいえ刀を素手で殴ると思っていなかったのだろう。アヤが驚きで目を剥いている。しかし、驚きながらも彼女は次の行動に移った。戦いの最中で静止ほど致命的なことはないからだ。

 アヤは両手で握ったまま、脇を締めて一度刀を胸の前に引くと、肩から入るようにして体当たりを繰り出した。


 くぐもった低い衝撃音がした。


 アヤは今度こそ有効打を与えと思ったのか、表情が僅かに明るくなった。

 コウはそれを見ながらぶつかる瞬間に、自分と彼女の間に差し入れた右手で肩を掴む。

 彼女の肩を手の平で掴んだまま力を入れ、腕を突き出すようにして伸ばせば、必然と彼女は突き飛ばされることになる。

 進行方向とは真逆の方へ無理矢理突き飛ばされたアヤは、慌てて態勢を立て直しながら、後方へ小刻みに飛んだ。

 そうして、仕切直すかのように、両者の間には再び距離が開くのだった。


 一間空いた。そして、おもむろにアヤが尋ねて来る。


「……何故、剣を使わないのですか?」


 アヤの表情には不満であるということが、ありありと浮かんでいた。

 いくら実力に差があるとはいえ、あからさまに手加減のようなことをされれば、気持ちのいいものではないのだろう。

 対して、コウは苦笑と共に言葉を返す。


「いや、使わないんじゃなくて、使えないんだよ」


「はい? それはどういう……?」


 意味不明だと眉を潜めるアヤ。

 コウは実際にやったほうが早いとばかりに、剣をゆっくりと構えた。

 足は動かさずそのまま、というか身体全体ほとんど動かしていない。

 構えた、といっても荒鉄の剣を持つ右手を、あげてみせただけである。

 それでも構えたと表現するのは、対峙するアヤがコウの右手が上がった瞬間、すくみ上がるほどの威圧感を感じたからだ。

 それは一瞬のことで、日常で感じたならば悪寒のようなものだった。


 しかし、だからこそ、それはまるで猛獣が飛び掛かろうとする姿勢のまま、全く動かずにこちらを見ているような不気味さをアヤに思わせた。

 急激な勢いでアヤの身体から汗が吹き出る。

 コウは普段道を歩くのと変わらない速度で、足を踏み出す。

 その一歩ごとに溢れ出るプレッシャーが見え隠れして、彼女の身体は強張っていく。

 コウは一歩、また一歩と足の回転を速めていく。

 そして、数えて五歩目、それを地につけると同時にコウは加速した。

 「歩く」から「走る」まで移行するまでの動作は存在しなかった。まるでその瞬間の時間だけ消失したかのような急加速でコウは彼女へと接近する。


 彼女の速さが風の如くなのであれば、コウはその風を切り裂きなが突き進む、強弓より限界まで引き絞り放たれた矢である。

 模擬戦を始めて初のコウから攻撃。それは右手のみで振るわれる剣。


「ッ!?」


 それはアヤが両手を使って刀を振るうよりも断然速かった。

 一撃、二撃、三撃、四撃…………。


「~~~~!?」


 声も出ないアヤの変わりに刀が悲鳴を上げるように金属音を低く響かせ続ける。

 霞むような速さでコウは黙々剣を操り続ける。

 コウはフェイントは使わないでおくことにした。

 垂れ流れる汗を気にする余裕もなく、懸命に凌ぎ続けるアヤであるが、流石にここでそんなものを混ぜたら対処できるか分からないと思ったからである。

 今度機会があれば試してみようと、彼女が聞けば顔を真っ青にしそうなことを、ぼんやりと考えながらコウは唐突に剣を止めた。


 微風(そよかぜ)の悪戯で木末より舞い落ちる事となった葉が、地面に舞い落ちるまでの僅かな時間に打ち込まれた連撃。数えるまでもない間に打ち込めれた斬撃は数えられないほどであった。

 自分から仕掛けたさっきの攻防では息を切らさなかったアヤだが、今はコウが連撃を止めて無防備に立っていても、その場に立つのがやっとの状態である。


「んで、さっきの答えなんだけど」


 コウは振るい続けた剣の刃を横に寝かせるようにしてアヤに見せる。


「っ、はぁ、は、ぁ、あ、え………?」


 窒息していたかのように荒い息で何度も呼吸を繰り返していた彼女だが、見せられた刃を見ると、一時的に荒い息を吐き出すのを忘れた。

 コウが持つ粗鉄により構成される安物の剣。それが刃こぼれだらけになっていたのだ。

 ついさっきまでは、安物とはいえ刃こぼれ一つなかったので、そうなったのは間違いなく先ほどのコウの連撃によるものだろう。


 アヤは呼吸を整えることを忘れたように、慌てて自身の相棒の状態を確認した。

 コウ持つぼろぼろになった剣を嘲笑うかのように、刀は欠けることなく、なだらかな美しい曲線を乱れなく描いていた。


「つまりはこういうことさ、お前の刀みたいなやつに、ぶつけ合うことを前提に剣を振ると、直ぐに駄目になっちまうんだよ」


 だからこそ、コウは基本的に剣をあまり使わない戦い方をしていたのだった。

 いくら安物の品とはいえ、そう簡単に刃こぼれしないものだが、アヤの持つ刀のように一般的な頑丈さの水準を超えるような得物とぶつかり合ってしまえば、その限りではなかった。

 使い方である程度誤魔化せるにしても、それにも限度があるのだ。


「今は剣だけでやったが、本来ならそんな戦い方しないしな」


 コウの本来の戦い方は別にあったが、今回は剣を使わなかった理由を分かりやすく伝える為に、さっきはあえて剣だけで無茶苦茶なやり方で戦ったに過ぎなかった。

 剣に負担をかけないように剣で受けたりせずにただ躱し続ける。

 言うのは簡単だが、実際にやるとなると背筋が凍るようなことである。


「それ、なら、もっと質の、いいものを持てば、い、いいのでは……?」


 アヤが息を整えながらそう言う。

 なかなかの回復の早さに、何か息の整え方について学んでいるのだろうかとコウは思いながら、その問いに首を振る。


「ちょっと良い剣程度じゃ、駄目になるのが速いか遅いかの違いにしかならん。それなら使い捨てと考えた方が良い」


「使い捨て、ですか……」


 その「使い捨て」という言葉にアヤは衝撃を受けた様子である。

 武器を持って戦う者は自分の武器を大事にするものである。

 長いこと使い続ければ愛着が沸くということもあるが、武器とは相手を倒すのに不可欠なもの、延いては自分の身を守るものである。

 戦いの最中に壊れれば、いざというときに使えなければ、そう考えるだけで大事にする理由は十分であった。


 それなのに、ただの消耗品だとばかりに「使い捨て」というコウに、アヤは戦慄を覚える。

 他者を圧倒出来る強者だからこその発言であった。


「さて、そろそろ日も大分昇った頃だろうし、次で終わりにするか」


 そう言ってからコウは数えて十歩ほどアヤから距離を置いた場所に移動する。

 コウの猛攻にただ受け続けることしか出来ず、しかもそれが本来の戦い方ではないと聞かされたので、もう敗北を喫したつもりでいたアヤは目を瞬かせる。

 そんな彼女にコウは「もう、へばって何も出来ないのか?」と目で語る。

 挑発とも取れるそれに、アヤは最後の力を振り絞らんとばかりに切っ先をコウに向けた。


「上出来だ」


 コウは薄く笑みを作り、そして、爆ぜるような勢いで地面を蹴る。

 それに対してへとへとのはずのアヤは、刀を寝かせるようにして構えると、意外なことに同じく地を蹴った。

 てっきり待ち受けると思っていたコウは笑みを深める。

 勝負は一瞬だった。


 アヤは寝かせていた刀をコウの目へと真っ直ぐ穿つような突きを放った。

 視線に被せるようなその突きは距離感が掴むことが出来ず、コウからすればいきなり眼前に迫るように見えるはずだった。


 しかし、コウはそれに対応して見せた。

 当たれば脳ごと刺し貫かれるだろう目を狙った突きを、コウは左手の人差し指と中指で挟み止める。

 そして、右手に持つ鋸のような刃になってしまった剣先を、アヤの左胸――――心臓を貫く位置でぴたりと向けて静止させた。

 コウの勝ちである。


「はいいいいいいい!?」


 勝敗が確定し、勝負が終わるのと同時にアヤが叫ぶ。

 その目はコウの手、正確には自身の刀を挟む二本の指に向けられている。


「うん、なかなかどうして楽しかった。最初は気が乗らなかったが、ロンが言ったとおり、たまには誰かとやるのもいいな!」


 爽やかな調子でコウは言ったが、アヤはそれが聞こえていないのかのように叫ぶ。


「いやいやいやいや!? コウ殿、え、何ですかこれ!?」


 コウは剣を鞘に収めながら、アヤが指すこれ(、、)を見る。

 左手の人差し指と中指の間に挟まれた切っ先。


「何だっけ、真剣白刃取り?」


「指で!? ……いや、ちょっと待ってください、何故、私の故郷のこれの技名を知っているんですか!?」


 思わずつっこみを入れてから、アヤは気づいたように言う。

 コウはその反応を見てから、そういえば話してなかったと口を開く。


「昔、刀の使い手と戦ったことがあるんだよ。んで、技名を知ってるのは、その使い手が俺に同じことをやって、むかつく顔で技名を言ってきたから」


 コウがアヤの持つ武器の総称が「剣」ではなく「刀」であることを知っていたのは、そういう理由があったからだった。

 彼女のすり足による独特な移動方法を用いる戦い方に、戸惑うことなく対処出来たのも同じ理由である。


「そう、だったのですか」


 驚きの連続で、もはや拍子抜けしたようになるアヤ。

 その姿を見て、自分がやられた時は手のひらで行う白刃取りだったことを、伝えてないでおこうと思うコウである。


「なんだか、驚きすぎてもう何がなんだか……。って、刀の使い手ですか?」


「ん? そうだが?」


「まさか!」


 急に勢いを取り戻したアヤは、何やら人物の特徴らしきものを尋ねて来る。

 まくし立てる彼女を落ち着かせながら、コウは質問に答えていく。


「ん、確かにそんな感じのやつだった。んで、最後に会ったのは三年前くらいか」


「そうですか……。そうですか!」


 確認を終えると、何やらアヤは元気を取り戻した。

 どうやら喜ばしい情報であったらしい。


「知り合いか?」


「はい! 私の探し人です!」


「ふーん。まぁ、何にせよ良かったじゃないか」


「はい!」


 コウは深く訊ねずにそれで済ませた。

 話したければ本人から言うだろうし、それにそろそろ寮へ戻らなければならないことを、意識しなければならない時間だからだ。

 刃こぼれだらけになった剣をどうしようか考えながら、とりあえず帰る準備をしようと、ロンがいる木の元へコウは小袋を取りに行こうとする。


「コウ殿」


 しかし、急に態度を改めた様子のアヤに声をかけられることでそれは中断された。


「ん?」


「何故、コウ殿はクレイストなんかを身を挺して庇ったりしたのですか?」


「……また、いきなりだな」


 コウは苦笑するものの、模擬戦をやったりと遠回りしたが、恐らく今回ここにやってきたのは、それを聞くためだろうとは思っていたので戸惑わない。


「アヤはリーネのことを貶されたから殴ろうとしたんだよな?」


「……はい」


 アヤはそれを叱責されるのかと思わず身構えているが、コウが続けた言葉は少し違った。


「お前、その後のこと考えたか?」


「その後、ですか?」


 少し考える素振りを見せた後、アヤは怪我人が出るだとか、クレイストに嫌われるくらいだろうと言った。

 コウは一度間を置いてから自分の考えを述べる。


「クレイストみたいなやつが、殴って殴られて、で満足するわけがないだろ?」


 ただでさえコウに対してもロンという後ろ盾がなければ、すぐにでも潰してやると明言しているくらいである。

 ロンの存在があることはともかく、コウが今まで直接的に何もされなかったのは、からかうにしてもクレイストの堪忍袋の緒を撫でる程度に済ませてきたからである。


 もしも殴ってしまえば、あの少年は執拗とも言える手であれやこれやと何かしてくるのは間違いない。

 そうなればアヤだけではなく、リーネにまで被害が及ぶことになっただろう。

 コウに言われて初めてその可能性に気づいたのか、アヤは顔を青くした。


「で、では、コウ殿が庇ったのはクレイストなどではなく……」


 アヤは気がついたようだ。コウが真に庇ったのは誰だったのかを。

 彼女が気に病まぬようにさりげない調子でコウは言う。


「俺はお前のことも友達だと思ってるんだぜ?」


「わ、私は……」


 裏切ったと思っていた相手は、実は自分を、延いてはリーネを守る為に動いていたのだ。

 それなのに自分がしたことを考えてアヤは身体が震えた。彼女を襲う衝撃はそれだけ半端なものではなかった。

 私は何をしているのだと彼女は自分を責める。


「コウ殿に信用しようとしたら、裏切られたかと思って、でも、それ違って……、それなのに私は斬りかかったりなんかして……」


 声を震わせながらも、ぽつぽつと言葉を漏らすアヤにコウは笑いかける。


「斬りかかる云々はロンの所為だろ? なんだったらお前もロンのことを殴ればいい」


「ちょっ!?」


 模擬戦が終わったのを確認して二人の下へやって来ていたロンが、驚きながら身構える。

 しかし、それには構わずアヤは顔を勢いよく上げると、真っ直ぐにコウの事を見ると口を大きく開いて声を出した。


「コウ殿! 本当に、申し訳ありませんでした!!」


「許す」


 そんな気合いのこもったアヤのものとは違い、コウの返事は軽いもので、彼女は拍子抜けしたような顔で見つめるてくる。

 コウは笑みを崩さずに向かい合う。


「何度も言うが、別に気にしてないって」


「しかし、やはり何かしらの償いをしたいのですが……」


「いや、そういうのは別に望んでないんだが」


「それだと私の気持ちが収まりません!」


「えー」


 二人は押し問答を繰り返すが、それはなかなか終わりを見せなかった。

 絶対にそれは譲れないと確固たる意思を向けてくるアヤに、そういう強い意志は何か別のことに向けろよとコウは思いながら考える。

 が、本当に気にも留めないようなことだったので、結局は無難な形で場を収めることにする。

 時間もなかったので適当だったという説もあるが、それはこの場で考慮すべきことではないだろう。


「それじゃあ、貸しってことにしておいてくれよ。それで思いついたときに言うからさ」


「……分かりました」


 軽い葛藤はあったものの、なしになるわけでないので、それで良しとしたのかアヤは納得する。

 そして、彼女は言葉を続けた。


「私、あなたの言うことを何でも聞きます!」


「何でもだってぐふぁ!?」


 凛々しさと可愛さという、相反するはずの二つを併せ持つ少女から出た「何でも」という甘い響き。

 それに対して予想通り興奮した様子で何か言いかけたロンを、何も言わずに彼がここに来てすぐに殴った場所と同じ箇所をコウは殴ることで黙らせた。

 二人のやり取りを見て、不可解そうに首を傾げるアヤに、天然ってすげぇなと思いながら、コウは何でもないと伝える。


「気にしない、気にしない。それより日も大分昇った頃だろうし、寮へ戻るか」


「そうですね。汗も大分かいてしまいましたし」


 苦笑しながら胸元をぱたぱたと開かせてアヤは言う。

 位置的に胸元が見える、というハプニングはないものの、汗を浮かべながら薄く張り付くシャツを気にする姿は十分扇情的である。

 痛みで身体を抱くようにして蹲るロンが再び暴走する前に、コウは先に帰るように伝える。


「俺はちょっとやることあるから、先に行ってくれ。帰り方は分かるな?」


「分かります。……手伝えることならやりますよ?」


 さっそくコウに何か出来るチャンスだと思ったのか、アヤが遠慮がちにそう言って来る。

 敵意を剥き出しにされたり、背後から襲われたりしたが、根は素直で良い奴なのだとコウは思いながら、その申し出をやんわりと断る。


「いや、そんなに時間かかることでもないし大丈夫だ。それより、時間的にリーネが起きていてもおかしくない時間だと思うんだが、良いのか?」


 コウが言うとアヤは今思い出したかのように慌てだす。


「わ、私、ここに来ることお嬢様に伝えてないんです! は、早く戻らないと! す、すみません、それじゃあ、失礼します!」


 そう言葉を残して彼女は慌しく秘密の通路がある方へ走り出すのだった。

 コウは彼女が通路へと入っていくのを遠目に確認してから、蹲るロンを見下ろしながら口を開く。


「んで?」


「いたいよー、いたいよー」


「分かりやすく棒読みするのはやめろ。なんでアヤをここに連れてきた?」


 咎めるような口調ではあるが、コウの態度は淡々とした様子で、ただの事実確認という風である。

 問われたロンはコウが怒っているわけではないことを知ると、安心したように立ちあがった。


「この場所教えちゃいけないって約束破ってごめんね」


「……まぁ、その件に関しては後で何かしらしてもらう」


 感情的な面で問題はなくとも、約束――――契約で違反があれば、何かしらの償いをさせるのがコウの流儀であった。


「うん、しばらく昼限定日替わりサンドと気まぐれパフェ奢るよ」


 と、償いといっても、身内に関しては、ロンの言うとおりの内容であることが、多かったりするコウである。

 コウは苦笑しつつ頷いた。


「毎日サンドイッチ奢られてもな。まぁ、いつかリーネとアヤには教えようと思ってから、それはいいとして……、お前が約束事を破るなんて珍しかったからな。どんな考えだったのかを聞きたい」


 ロンがこの場所を教えたのはアヤにコウを襲わせる為である。

 本当に憎くて襲わせたわけでなくとも、それでもやることが普通ではないことは確かだ。


「う~ん、なんというかなぁ、これ言っていいのかな……?」


 言い辛そうにしながらもロンは切り出す。

 クレイストを庇う形でコウがアヤに殴られた後、喫茶店で彼女と話したこと。

 コウを信用したいと思っていたと聞いたこと。裏切られたと思っていたようであること。

 どうしたら良いのか分からないようであったこと。

 ロンは彼女のその時の様子を含めて話した。


「それで俺はアヤちゃんにコウ暗殺計画を持ちかけたんだ」


「いや、意味分かんねぇから。そこを詳しく説明しろよ。しかも、殺す気満々かよ」


 どうして襲わせたのかをコウは聞きたいのである。


「なんと言えばいいのか……」


 一度を言葉を句切ってからロンが話し始める。

 どうしたらいいのか分からないアヤに何かしてやりたいと考えたこと。

 彼女は信用したいが信用出来ないと悩んでいたので、まずは何でもいいから一つ信用出来ることを知る機会を作ろうと思ったこと。

 コウの絶対的な上に分かりやすく信用できる点は強さであると判断したこと。


「何も信用出来ない相手を信用しよう何て無理だと思ったんだ。だから、何か一つでも信用出来れば、そこからいろんな面を知る機会が出来る。そうすれば信用出来ることを増やしていって、いつかは信頼出来るようになれば良いと思ったんだよ」


 何一つ信用出来ない相手を信用するのは難しい。

 それは見方の問題だろう。

 何も情報がない相手を信用するというのは難しい話だろう。しかし、逆に一面でも信用出来ることがあれば、その相手を信用しても良いと思えるものではないだろうか。

 要は信用を得るきっかけとして、強さという信用をアヤに見せようというのが、ロンの考えだったようである。


「なるほどな」


 ロンの言い分を聞いてコウは納得した。

 信頼を得るには、信用に応え積み重ねる必用がある。

 そう考えた彼の行動だったのだ。


「俺はてっきり、女の子に良い所を見せようとするお前の悪癖かと思ったわ。疑ってわるか――」


 勝手に疑ったことを悪かったと謝罪しようとするコウだが、それは最後まで言わなかった。

 何故なら、ロンが思いっきり顔を背けているからである。気まずげに。

 どうやら純粋な気持ちだけでなく、コウが言ったような気持ちが全くなかったわけでないようだ。

 それだけアヤに対しては本気なのだろうかと苦笑しつつ、コウは話は分かったと手をしっしっと振る。


「とりあえず納得は出来たから、お前も先に寮へ帰れ。俺もやることやったらすぐに行くから」


「やること?」


 邪な気持ちを見破られたことで、怒られるのだと思っていたロンは、コウの言葉に安心しつつ、意外そうに訊ねて来る。

 てっきりアヤを先に帰す時に言った「やること」というのは、このことに対する方便だと思っていたのだろう。


「ああ、いいから、先に帰れって」


「う、うん」


 訝しげにしながらも、先ほどのことを突かれたら堪らないと思ったのか、素直にロンは隠し通路方へ歩き出す。

 そして、ロンの姿が完全に見えなくなるのを確認してから、コウは息を一つ吐いて、小袋を拾うと木に剣を立てかけて歩き出す。

 広場を抜け、草木を掻き分けるようにしてコウは奥へと消えていく。

 そうしてから暫くすると、コウは消えた奥から再び姿を現し戻って来た。

 コウは一度目を剣に向けて考えたが、時間もないので、今日のところはそのままにしようと判断して、真っ直ぐに秘密の通路の方へと向かっていく。


 こうして、コウのいつもとは違う朝の日課は、ようやく終わったのだった。



 ハロー効果的な……


 2012/02/04 02:05

 一部文章と誤字脱字を訂正致しました。


 2012/09/09 16:41

 一部文章と誤字脱字を訂正致しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ