表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/1

『出雲神話真実― 徐福と大国主』第六話 神在月 ― 神々が集まる理由

神在月――

それは「神が集まる月」と言われています。

けれどもし、

それが“人が集まり、国の未来を決める月”だったとしたら。

第六話では、出雲に集う族長たちと、

「大国主」という存在の芽生えが描かれます。

神話が、少しだけ現実に近づく回です。


秋が深まっていた。

出雲の海は静かで、

高い雲がゆっくりと流れている。

ユイは

稲佐の浜に立っていた。

波は静かに砂を洗い、

その足元で消えていく。

懐の円空仏が、

ほのかに温かい。

――そのときだった。

海の向こうに

小さな光が見えた。

一つではない。

二つ。

三つ。

やがて、

いくつもの光が

海の上に並んでいく。

船だった。

松明を灯した船が、

静かに浜へと近づいてくる。

ユイは息をのむ。

船は次々と浜へ着き、

そこから多くの人が降りてくる。

遠い国の衣をまとった者。

山の民。

海の民。

それぞれの土地を治める

族長たちだった。

その光景を見つめながら、

ユイの隣に立つ老人が言った。

「始まったな」

「神在月だ」

ユイは小さく問いかける。

「神様が来る月、ですか」

老人は、静かに笑った。

「違う」

「神が来るのではない」

「人が、集まるのだ」

族長たちは

言葉少なに歩き出す。

向かう先は――出雲大社。

長い列となり、

夜の中へと吸い込まれていく。

社の奥では、

大きな火が焚かれていた。

その中央に立つのは、

須佐之男命。

そして、そのすぐそばに

静かに座る男――

徐福。

火のゆらめきが、

二人の影を大きく揺らしていた。

やがて、会議が始まる。

山の民が口を開く。

「鉄の道具で

田を広げたい」

海の民が続く。

「船を増やし

遠い国と交易したい」

川の民は言う。

「斐伊川の治水を

さらに進めたい」

須佐之男命は

静かにうなずいた。

「この国は、豊かになった」

「だが――

まだ、一つではない」

火の光が

人々の顔を照らしている。

そのとき、

一人の族長が言った。

「ならば――」

「この国を

まとめる者が必要だ」

ざわめきが広がる。

誰もが、炎を見つめていた。

須佐之男命は

ゆっくりと口を開く。

「やがて、この国には」

「大きな王が生まれる」

その言葉に、

場の空気がわずかに変わった。

徐福は、何も言わない。

ただ静かに、

炎を見つめている。

ユイはその横顔を見つめた。

老人が、そっと囁く。

「その王をな……」

「人は後に――」

「大国主命と呼ぶ」

夜は、深くなっていく。

火を囲みながら、

人々は語り続けた。

国の道。

川の治め方。

鉄の使い方。

そして――

未来の国の姿を。

外では、

波の音が静かに響いていた。

ユイは、社の外に立つ。

空には無数の星。

海の向こうから、

また一つ――

船の灯りが近づいてくる。

まるで、

星が海を渡ってくるようだった。

懐の円空仏が、

静かに温かい。

ユイは思う。

神在月とは、

神が集まる月ではない。

人が――

知恵を持ち寄り、

未来を決める

国づくりの月なのだ。

遠くで、

波が静かに打ち寄せていた。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

この回は、物語の中でも重要な転換点です。

神在月を「政治と知恵の集会」として描くことで、

神話の見え方が大きく変わってきます。

そしてついに、

「大国主」という名前が現れました。

次話から、物語はさらに大きく動き始めます。

人が“神”になる瞬間へ――。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ