薬草採取
ギルドへ寄って依頼を確認するがめぼしいものがない。ユナンはこの街へきてから依頼続きだったので、ゆっくりとした時間を過ごすと決めた。街の市場を散策しながら露店をキョロキョロ、と見て回る。特に何か買う訳でもないが、彼女はあてもなくアクセサリー屋を覗いたり、魔導具店を覗いたりする。数時間ほどたち汗が額にじんわりと滲むのを感じたため、街一番とされる温泉へ行くのだった。
温泉へ入る。周りには誰も居ない。少女は顔を半分まで湯に浸からせながらこの街で聞いた話のことを考えていた。
洋館の老婆から聞いた黄金郷の噂、男性冒険者から聞いた《祝福》(ギフト)の変化。おとぎ話にしか登場しない黄金郷。誰もその姿を見たことはない。幼い子どもでもそこは現実世界にはなく、夢の世界にしかないことを知っている。そんな誰もが空想上のものでしかないと思っている場所を、少女は目指している。また、煙のないところに噂はたたない。ユナンはいつか必ず見つけてやると再び決心をするのだった。
温泉を上がり宿屋へ戻る。気持ちよすぎて、湯に浸かりすぎてしまったと反省する。窓を開けて、のぼせてほんのりと赤くなった頬に風を当てる。温泉につかり少し体が軽くなったように感じる。数分後、熱が冷めるのを感じると窓を閉めてベッドへ横になる。
ここ最近の疲れが溜まっていたのか、すぐに意識が落ちた。
翌日は薬草を採取しに森へ向かった。森の深部は強力な魔物が現れるため、護衛の居る時以外は行かないようにしている。今回は一人なので街に近い場所にした。一応今から向かう場所にもスライムやゴブリンなどの魔物は生息しているが、多くの冒険をしてきたユナンなら空を飛ばずとも逃げられる。依頼された薬草は魔力草。大陸全土で見られ、日当たりの悪く湿気の多い場所に生えている。魔力草は魔力を補給できるポーションとして使用される。ただ、魔毒草という魔力草によく似た薬草があるため初心者はよく間違える。魔毒草はその名の通り毒があるため、使い物にならない。ユナンは幾度となく魔力草の採取をしているので素早く確認をしカゴの中へ入れていく。3時間ほどでカゴが一杯になる。満足気な顔をしながらフィールの街へ帰るユナン。
納品をするとギルドの受付嬢に驚かれた。この短時間でここまでの量を採取する人はいないらしい。それもそのはず、冒険者の九割以上は魔物を討伐しにいくため、ユナンのような人はまずいない。それに加え初心者が採取した薬草には魔毒草も沢山混じっているので仕分けに時間がかかるらしい。そして、初心者を卒業する頃には魔物を狩りにいくから、誰も薬草採取をしなくなるのだ。お礼を言われ報酬を受け取る。
ユナンは最後に、街のハズレに住む老婆にもう一度会えないか連絡して欲しい、と受付嬢に伝えた。
それから2週間がたったある日、ユナンはギルドから呼びだしを受けた。中へ入ると別室へ通される。そこには、老婆がソファーに腰かけていた。
「お久しぶりですね。ワシに話って何でしょうか?」
「黄金郷について聞きたいことがありまして。」
ユナンの言葉に老婆はやはりその話かと頷く。そして、目をゆっくりと開けて静かに口を開いた。
「聞きたいことがあるのなら何でも聞いてください。実はワシも昔は黄金郷に憧れ冒険していたんです。」
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