黄金郷の噂
冒険者ギルドの受付嬢から目的地の地図を受け取り、ユナンは招待された家に到着した。そこは街のハズレにあり壁は蔦で覆われているため、街の人からは森の洋館と呼ばれていた。ユナンがドアをノックすると、中から年老いた女性が姿を表す。老婆に案内され客間に通される。外見からは全く想像できないほど、部屋は整頓されていた。老婆は紅茶と茶菓子を机の上に置きお礼をのべる。
「先日は、ワシの愛犬を見つけてくださりありがとうございます。なにぶん、この身体じゃ長時間探すことは難しくてですね。森の方へ薬草を採集しに行ったら、知らぬ間に逃げ出してしまったのですよ。 幸い街の方で迷子犬の目撃情報があったのでギルドに依頼したという次第です。」
事の経緯を説明しさらに続けた。
「ギルドの報酬に加え、お礼として何か1つ報酬を受け取ってください。愛犬は家族のような存在で、お礼不足だと思っていたのでこうして今回招待致しました。」
ユナンは黄金郷について何か知ってることがあれば、どんな些細なことでもいいから教えて欲しいと伝えた。すると老婆は重たげな目蓋を見開いた。しかし、すぐにいつもの状態に戻るとあくまで噂でしかないがと前置きして告げた。
「黄金郷は《祝福》(ギフト)持ちのみが住まう楽園と噂されております。《祝福》持ちが無能力の人間と共に暮らしたくないと願った結果、別の国を作り上げたのが始まりとされております。」
ここまで旅をしてきて、初めて聞くその情報に思わず身を乗り出すユナン。そして、
「なぜ《祝福》保持者は無能力の人と共に住みたく無かったのですか?」
と疑問に思ったことを質問するが、
「それは、ワシにも分かりません。」
と返された。
しかし、今までこれといった進歩がなかったユナンにとって今日の話は大変興味深かった。
彼女の頭には、どんな方法で国を作り上げたのか、そもそも国を新たに作るといった規模の大きい《祝福》など聞いたことが無いが本当にあるのか、なぜ《祝福》を持たない人間とは共に生活したくないのか等の疑問が浮かんできたが後にした。
思わぬ形で新たな情報が得られ、老婆に「ありがとう。」とお礼をする。物品じゃなくて黄金郷の噂話なんかで本当に良かったのか尋ねてきたが、彼女にとっては十分だった。最後に老婆はこの噂は、はるか昔に情報屋から聞いたものであり、眉唾物かもしれないという旨を伝えて見送った。
宿屋に帰ると彼女はベッドの上で、今日老婆から聞いた話を思い返していた。頭の中で黄金郷の噂について整理を付けようとしたが、襲ってくる眠気には耐えきれず就寝してしまった。




