ユナンの夢
爽やかな風が吹き抜ける。心地よい感触がユナンの頬に伝わってくる。少女の背中には本来、人間には無いはずの翼が生えている。晴れ渡る空を飛翔し、さっきまでお世話になった街の人々やこれまで出会ってきた人々の顔を思い浮かべる。こうして一人で居る時には寂しさからか郷愁に狩られる。しかし、すぐに頭を切り替えて前の街で得た情報を頼りに次なる目的地へ向かうべく、その白く輝く翼をはためかせる。
ユナンには幼い頃からの夢がある。それは誰も見た事がない黄金郷に辿り着くことである。
黄金郷には一生を遊んで暮らせるほどの金銀財宝、世界の全てを記した本、そこに到達したものにはあらゆる願いが叶う等の逸話がある。
子どもの頃におとぎ話として両親からよく聞かされ、幼い少女はその夢のような場所に毎晩、妄想を膨らませた。そして18歳になった今でもその憧れを持っている。周囲の子は黄金郷など空想上のもので現実には無いと話しているが、ユナンだけは信じている。
だからこそ、伝説上の黄金郷というロマンを求めて毎日、冒険をしている。
ユナンの背中に翼が生えたのは6歳の頃である。初めて親に黄金郷のおとぎ話を聞かされ、いつか必ずその地に足を踏み入れたいと強く願った結果、空を飛ぶという能力に目覚めた。この世界には叶えたい夢に応じた能力が手に入る。例えばユナンのように探求や冒険の夢を持つものには空を自由に飛空する力や海を渡る力などが与えられる。しかし、例え能力を得ても夢を叶えたり、その夢を途中で諦めてしまうと力は失われる。また、強く願った夢が想念となり力として宿るため、誰でもその能力に目覚める訳ではない。そしてこの能力を人は神さまが授けた奇跡と考え《祝福》(ギフト)と呼んでいる。
2時間ほどゆったりと空を飛び続け関所である門の手前で翼を仕舞い降り立つ。一度、勝手に街の中に入り、不審者として衛兵に長時間、詰問されてからはこのようにしている。
手荷物の検査と旅の物資を調達するのが目的と門番に伝え街に入る。
これも以前黄金郷に行くための情報収集と伝えたら全く理解してもらえず、中々通してくれなかったので以降は理由を変更している。
そうして新たな目的地である温泉街「フィール」へと足を踏み入れた。
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