大好きな君と私は結ばれない
こんにちは!美甘です(^^)
「メリン王女。私と結婚してください」
色とりどりの花が咲く庭園の見えるバルコニーでレオン王子がメリン王女にひざまづく。
そして、虹色に輝く宝石があしらわれた指輪を差し出した。
メリン王女は頬を赤らめ、王子を見てにっこりと笑う。
「はい!レオン王子」
二人は結ばれ、祝福される。
誰もが喜ぶハッピーエンドの物語だったのだが……
「ううっ!メリン王女と結ばれちゃうなんて……!」
悲しんでいる読者が一人だけいた。
「王女へ祝福を」
ベッドの上で、黄金でそう書かれた淡い桃色の本を閉じ、涙を流す女性。
「本当に本当に大好きだったのにな……」
悲しそうに少し笑って彼女は微笑む。
「大好きな君と私は結ばれない」
♡♡♡
いつだっただろうか、「王女へ祝福を」という小説に出てくる「レオン王子」が私・虹淡は好きだった。
キャラクターとしてではない。
本当に好きだったのだ。
レオン王子は王位継承者であり、厳しく育てられた。
また、その身分から命を狙われることも少なくなく、身内でも警戒して過ごしてきた。
そのせいか、だんだん無表情、無口な王子になってしまう。
でも、そんな彼は本当は優しいのだ。
使用人が水をこぼしてしまった時に自分のハンカチを差し出したり、城内の庭園の花の手入れを行ったり、物語を読み進めるうちに彼の優しさに惹かれ、いつのまにか好きになっていた。
でも、小説の中の彼と私は結ばれることはない。
そう、ずっと思っていたのだけれど。
分かっていたのだけれど……。
「メリン王女と結ばれるなんて……」
メリン王女はこの小説の主人公で、いわばヒロインだ。
逆ハー小説だったので、レオン王子もメリン王女の事が好きな描写がいくつもあったが……。
正直、メリン王女とレオン王子が結ばれることはないと思っていた。
他の登場人物が個性的な人たちばかりだったから。
国一番強いとされているルイス騎士や魔術師デュアル、メリン王女の執事エイト、いい感じの人たちがたくさんいたので、話的にメリン王女とレオン王子は結ばれないだろうと思っていた私は、ただただレオン王子を愛でるためだけにこの小説を読んでいた。
それなのにーー
「メリン王女。私と結婚してください」
「はい!」
まさかのメリン王女とレオン王子が結ばれてしまった。
「どうしてレオン王子を選んだのよ……レオン王子がそらあ一番かっこいいけどさ、ルイス騎士といい感じだったじゃん、メリン王女!!」
小説の中の彼女に私は言う。
「ああ、どうしよう。私の生きがいのレオン王子が他の女と結ばれるなんてやっぱり耐えられない」
私が頭を抱えていると、ふと最後のページに小さく書かれた文字を見つけた。
「王女は創り変える……?」
王女へ祝福をのタイトルとは違うけれど。
その文字も王女へ祝福をのタイトルと同じく、黄金で書かれていた。
なぜだろう、すごくその文字に惹かれた。
そうだ。最近噂になっていた黒魔術を使えば、この物語、私の好きなように創り変えれるんじゃない?
私は本棚にある真っ黒な本を取り出す。
「待っててね?レオン王子」
私は小説の挿絵の中にいるレオン王子を見て微笑んだ。
♡♡♡
色とりどりの花が咲く庭園が見えるバルコニーで、王女は立っている。
そこへ、一人の王子がやってきた。
「メリン王女」
「レオン王子」
お互いは微笑みあう。
その姿はまさに愛し合っている恋人そのものだった。
「今日は大事な話があって会いにきたんだ」
「まあ、そうなの?」
王子は彼女を見つめる。
その時、彼女は静かに静かに呟いた。
「ねえ、レオン。私を“また”選んでくれるでしょう?」
王子は首を傾げる。
「え?何か言った?」
「いいえ、なにも。レオン王子」
隠すように王女は笑う。
「ならいいや、ねえ……メリン、いやメリン王女」
王子はゆっくりと王女へひざまづく。
「メリン王女。私と結婚してください」
王子は虹色に輝く宝石があしらわれた指輪を差し出した。
そして、この時を待っていたかのようにメリン王女は頬を赤らめ、王子を見てにっこりと笑った。
「はい!レオン王子」
メリン王女は嬉しそうに指輪をはめてもらう。
その微笑みは心から嬉しそうだった。
メリン王女となった“彼女“は心の中で言った。
大好きな君は、私と結ばれない。
それでも私は、君と結ばれるためにこの世界を創り変えたの。
♡♡♡
静寂な部屋で、蝋燭の灯ったベッドの上で王女と王子は眠っていた。
ある時、王子は目を覚まし、王女へ熱の灯った目を向ける。
ああ。かわいい……。
ある王子は自分の腕の中にいる王女を見てそう思った。
「俺のために黒魔術を使って、俺と結ばれるためにメリンになって。君はどれだけかわいいんだろうね」
王子は寝ている王女に静かに囁く。
「ずっと、ずっと、ずーっと、この世界で君を待っていたんだよ、虹淡。俺を好きだと言ってくれる虹淡の声がずっと聞こえていた。癒しのない世界で、ずっと俺だけを愛してくれている外の世界の君をずっと手に入れたかった。ずっと俺のものにしたかった」
頬を赤らめ、嬉しそうに王子は言い、そっと王女にキスを落とす。
「これからは俺だけの虹淡だから、離さないからね」
その言葉と共に蝋燭の日は消え、暗くなる。
「ーー愛しのメリン」
その言葉と共に静寂の時が訪れた。
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よろしくお願いします。
虹淡は最後、大好きなレオンがメリンと結ばれるのが嫌になってしまい、黒魔術を使って「王女へ祝福を」の世界に入り、“メリン“となります。結ばれて、幸せに……なったのですが、実はレオンは、メリン王女はメリンではなく、外の世界からきた“虹淡“だと分かっています!まあ、どちらにせよ二人は幸せになったので、ハッピーエンドです(^^)
私は、レオンがメリンではなく、虹淡を見てくれているのがすごく嬉しいです。虹淡もいつか知ってほしい……♡




