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第6,5話 「Lv1で反則(チート)必須の第二次試験」

※ 改行3つ

 → 『軽い』場面スキップ (数分後 他視点への切り替え)


※ ◆ 

 → 場面スキップ (数時間後 場面切り替え)

 もう皆、薄々勘づいていた。

 この試験は元より一人では突破不可能な試験であることを。


 問題用紙の問いに、一人一人の趣味や旧世界の知識が問われていることから、それは明白であった。


 だからこそ、この協力要請は必然的に呑む以外の選択はなく、それどころか天の助けですらあったのだ。


「———マガツ、これでこの場にいる受験者三十人全員に協力要請が届いたな」


 そうだな。ありがと、ご苦労様だカース。

 それでみんなの耀偽は聞けたか?


「あぁ、それがだな…一人を除いて全員協力はすると言ってくれたんだが…耀偽まで教えてくれたのは六人だけだった。教えてもらう条件に言い出しっぺの俺とマガツの能力は明かしちまったが、よかったんだよな?」


 あぁ、構わないよ。それで、聞けた耀偽はどんなものだったんだ?


 カースが耀偽の開示交渉に成功したのは六人。これ以降にも試験が控えている中で、耀偽の能力を教えてくれる人が少ないのは当然だ。


 どうにかこの状況で使えそうなものがあることを願いたいが…。


 俺は天に祈るでもなく願望を掲げながら、顎に手をつけ、カースから六人の耀偽の情報を聞き取る。


「———それで六つの耀偽の中で使えそうなのは有ったか?」


 あぁそうだな…テイクさんのリプレイプロジェクター。

 今この状況に置いて、最適解の耀偽だよ。




 耀偽名、リプレイプロジェクター。


 能力は端的に言えば「一定の空間に過去の映像を映す」といった能力。


 例えば、サッカーコートの大きさに合わせて、観客席までは届かない範囲で発動するとしよう。


 その際に空間に映す映像は過去数日前にあった試合とする。


 すると、観客席側(外側)からは過去の試合が観戦でき、今まさしく目の前で試合が繰り広げられているように見せることが出来る。


 しかし、サッカーコート側(内側)では映像の中にいるため過去の映像は見えず、何もしてないのに観客席側だけが、何故だか異様に盛り上がっている状況になる。


 また、映された過去の映像は映像に過ぎず、物理的接触能力はない。


 要は内側を過去の映像で蓋をして、外側から内側の現状を見えなくするという訳だ。




「———それで、何でこの耀偽が必要なんだ?」


 そりゃもちろんカンニングするのに監視の目、ストログの監視を誤魔化すためだよ。これがないと、仮にカースが全員から1問ずつ答えを教えてもらって、さらにみんなにその答えを教えるなんてしてたら余裕で制限時間超えるだろ? だけどテイクさんの耀偽なら———?


「そうか! ———カンニング大会が安全に行える!」

 ———カンニング大会が安全に行える!


 たださすがに、何の前触れも無くリプレイプロジェクターを発動したら、急に俺たちの位置が若干動いて不自然なことになる。


 だからストログの目を一瞬だけズラす…っのためにカース、頼めるか?


「…ハハッ、あぁ! もちろん、盛大なのぶちかましてやる! ———三、二、一…!」


 カースの一の合図が終わると同時に、俺はテイクへ耀偽発動のサインとして机にペンを二回叩く出す。


「———オマエノウシロニイルゾ…」


 カースはもはや本物の呪いとしか思えぬ名演技で、ストログに耀偽を用いて話しかける。


 ストログの強面の顔は一瞬にして恐怖の顔に歪み、後ろを大慌てて振り向く。


 その隙を見逃さず、リプレイプロジェクターはストログを巻き込まない程度の範囲で発動され、俺たちの現在を過去の映像が覆う。


 瞬時に受験者たちは中心の席に集い、念願のカンニング大会が始まる。


 皆これ以上ないほど必死の形相で他者の解答用紙をカンニングしていく。

 これで一件落着、皆で合格ハッピーエンド。


 ———ならばどれほど良かっただろうか、問題が発生する。


「この筆記問題だけ誰も書いてないじゃん…どうすんのこれ…」


 影雷の一言に、受験者の一人が廊下側の一番奥の席を指差して言う。


「あいつが答え知ってんじゃない? 一人だけ席に座ったまま協力しないあいつがよぉ…」


「いや、アイツの解答用紙もこっそり覗いたけど、ここの問題は空欄だったぜ?」


 万事休すとはまさにこのこと。

 皆が沈黙し困り果てる中、これに追い討ちをかけるカムイの一言が彼らを襲う。


「というかまず、これとこれ、答えはどっちが正しいの? 誰か確証を持ってわかる人いる?」


 さらなる沈黙、そして絶望。いや、これも皆が薄々勘付いていたこと、というよりもぶつかると予期していたこと。何なら偽りの希望にすがり、目を背けていたことだった。


 一方の解答用紙ではAと答えているのに、もう一方の解答用紙にはBと書いてあるという矛盾。


 ここまでしてもなお、解決しない問題に皆現実逃避。

 湧き出るはストログへの殺意。


「……はぁ、打つ手はもうねぇな。まあ、よくやった方だ。今回は俺たちの勉強不足…まさかこんな、三十人いて誰も解けねぇ問題がでてくるとは思わねぇだろ。良い終わり方じゃ無いけどよ、みんなありがとな。協力してくれて。とくにマガツ、お前には一番…マガツ?」


 どんよりとした空気に、カースは早くも諦めの言葉とここまでの皆の労いに感謝する。と、そんな最中にマガツの顔を見ると、顎に手を置いて、何か深く考え事をしている姿が目に入り、口を止めて首を傾げる。


 ———俺は何かぼんやりとこの状況に引っかかっていた。

 それを明確に思わせ、思考を働かせるまでに至ったのはカースの言葉だった。


 ———三十人もいて、誰も解けない———


 果たしてそんな問題をこの試験で出すか? それでは満点という合格ラインが現在のような状況を見越したとしても突破を不可能にさせてしまう。


 考え得るのは騎士団側が求めている形と違うから。


 なら、どのような形にすれば誰もがこれっぽっちもわからない問題を解き、全ての問題を正しい答えで書き、満点の解答用紙を完成させられる?


 ここまでくれば、考えはまともではないことを導き出す。


 何、すでにカンニング大会なんてものを開催したんだ。

 この方法だって、これといって変わらないだろう。


「———模範解答の紙…」


「え…?」


「模範解答用紙があれば…満点の解答用紙に出来る…」


 俺はボソッとそう呟いた。


 そんな発言に皆がまず思ったのは、コイツ突拍子もないことを言い始めたぞ、だった。しかし次にこう思う。


「———それだッ!」


 どんより悲観的な空気は一変し、皆が一気に活路を見出す。


「でもその模範解答用紙はどこにあるんだ?」


 まず問題がそこだが、あらかた検討はついている。


「おそらくはストログが座る教卓の上に置かれた裏面になった紙。あれだと思う。影雷が俺の股下に潜り込んで不審がられた時、ストログは近づく際にその紙をわざわざ手に取って上着のポケットにしまっていた。あん時は何ら気に止めなかったけど、今となればあの紙はかなり怪しい」


「場所はわかってるのか…でもさすがにあんなガッツリ腕で抑えてる物、俺の速さでも取りにいけないぜ…?」


 その通りだ。影雷が如何に速く動けても、引き抜く際に紙が破れては意味がない。それにストログは今さっきからいろんなことが起こって警戒心が最高調だろう。


 無策で至近距離まで近づけば、確実に気づかれる。


「影雷の言う通り、模範解答用紙を真正面から奪うのは難しいだろうね。だけど心配ないだろ? ここには核者が三十人もいるんだ」


 俺の言葉を聞いて、皆が皆を見る。そして理解する。


 今目を向けた者、向けられた者たちは、目指すものを同じくする同志であると。


 それに気付いた時、カースたちのか細く消えかけていた闘志は再び燃え上がる。


「そうだな! そうだぜ! みんなで協力すれば、ストログから気づかれず模範解答用紙を奪うことは十分できるはずだ!」


 皆の決意は結束となり、俺は最後の喝を入れる。


「この試験、敵はストログただ一人! 絶対奪い取るぞぉぉ!」


「———模範解答用紙ぃぃぃッ!」


 受験者たちの掛け声は打ち合わせた訳でもなく、同時に同じことを言わせてみせる。これは正真正銘の結束。


 狙うはストログが持つ裏返った用紙、すなわちラストリゾート。

 熱き思いの若人どもは、今成せる全力にてそれを狙い定めたのだった…!


 その頃、教卓で大講義室全体を監視するストログは———


「……奇妙にも…動いていない受験者たちから、声だけは聞こえてくる…まさか、気づいてないのか…?」


 皆、ストログの優しさで耀偽の使用を知らないふりをしてもらっているなど気づかないまま、模範解答用紙奪取作戦は実行されるのだった。

 第6話は文字数が8000を超えていたので

読書カロリー高いかな…と思い分割しました!


 これからも公開されていたやつでも長ければ

「〜,5話」として、分割すると思います!


——————

第6,5話をお読み頂きありがとうございました!

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