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第5話「脅威の調査! 第一次試験!」

※ 改行3つ

 → 『軽い』場面スキップ (数分後 他視点への切り替え)


※ ◆ 

 → 場面スキップ (数時間後 場面切り替え)

 影雷やカムイという女性との一連から、少し時間が過ぎた頃。


「マガツさん、第六フィールドにお上がりください」


「はい!」


 とうとう自分の順番が来たな…




 指示されたフィールドまで上がると、そこは天井が無に迫るほど透明なガラスで覆われ、首を真っ直ぐ真上に向けなければその頂上が見えないほど高く、手を伸ばせば先にある晴天の大空に触れられるかと錯覚してしまうほど圧巻。


 両隣の壁は選抜試験のために造ったであろう簡易的な高さ七メートルほどの壁で仕切られており、向こう側から受験者が発した雄叫びやら岩が派手に崩れる音が響き渡ってくる。


「この場所だけでも、広さは学校の校庭くらいはあるのかな、いやもっとか…ん?」


 圧巻のフィールドに心を高鳴らせ見回していると、ふと前方の地面を見下げる。

 すると、何やら黒い液体めいたものが、地面から生えてくるように現れる。


 それは徐々に怪獣のぬいぐるみの形をかたどっていき、姿が完全にかたどられると、すぐさま話し出す。


「———やあ。受験者くん、僕はシャドリン。今日は贖罪騎士選抜試験に来ていただきあ…あぁぁ! もう前置きは面倒だな! 省略してっ、今日の大事なことだけ伝える。メモを取るほどややこしいことは言わないからそのまま聞いていてな!」


 俺はいきなり始まったことに理解もできずにいるが、そんなことお構いなしにシャドリンという奴はどんどんと話を進めていく。


「この第一次試験では君の力がどれほどかを見せてもらう! 通常時の身体能力はどれほどか。それから君の『耀偽(かがりぎ)』———その核者の特有の能力と言った方が伝わるかな? 君も無論あるだろ?それが実際どんなものかを見せてもらう。試験内容はあらかじめエントリーシートに書いてもらった実績や耀偽を考慮して決めさせてもらった…ってなことで説明終了だ。最初は全ての攻撃を回避でも防御でもいい、三十分間やり過ごせ! ただし耀偽の使用は禁止だ! んじゃバ!」


 説明するだけして、シャドリンはすぐに液体のように形を崩して地面にバシャッと音を立てて消えてしまう。


「え!? ちょ待てよ!? …もう開始なの? …え?」


 雑な説明に心の準備もできずにいると、唐突に辺りが暗くなり天井を見上げる。

 刹那の唖然———なんと見上げた上空、視界を埋めるほどの巨大な…


「い、岩が落ちてくるー!」


 驚き焦った末、俺はまるでかの有名な狩りゲーのダイナミックな回避行動を再現するかのように地面に飛び込み倒れ込む。


「緊急回避ィィ!」


 ギリギリのところで大岩を回避するが、次々と俺目掛けて天井からさらなる大岩が出現し落ちてくる。


「うわぁぁぁ!」


 全力疾走でフィールドを駆け回り岩を回避、時に避けきれないものは剣で切る、というよりは叩き割ってやり過ごす。


 そんなことを繰り返していると、叩き割った岩が破片となって飛び散り、ゴツンッと額に直撃する。


「痛ってぇ…! うぅ…目に砂粒も入ってきた…」


 そんなこんなの危機が永遠とも思えるように続き、色々ともう限界がきた時、ようやく三十分経過のベルが鳴る。


「はぁ…はぁ…こ、こんな、最初の試験で…ゼェゼェ…死にかける、なんて…」


 息を切らしながら膝に手をつくが、休む暇を与えるかというようにシャドリンが再び現れる。


「うむ、よく乗り切った! では最後だ受験者くん! この特大の打ち岩を君の耀偽を最大限生かして破壊したまえ! では!」


「あっちょっと!? はぁ…」


 その特大の打ち岩はどこに? と、辺りを見回していると、シャドリンが現れた時と同じように何か特大の黒い液体が徐々に、そして急速に形を形成していく。


 俺はその液体に巻き込まれそうになって、急いでそれから逃げるが、すぐに追いつかれて黒い液体に巻き込まれる。


 と思いきや、見るからに液体のそれは、不思議と弾力のある感触で、俺はそれに乗るように押されていき、黒い液体はフィールドギリギリまで膨らんだところで変化を止める。


 俺はまさかまさまと全体像を見にフィールド入り口に向かう。


「———っ! これは流石に、でか過ぎんだろッ…」


 シャドリンの言う特大の打ち岩、その大きさはフィールド全体を埋め尽くすほど。

 俺はそれに驚愕しながらも、すぐに覚悟を決めて岩の方へ向かう。


「これだけの大岩、耀偽で強化した剣でも無理だろうな…」


 その通りである。———この岩は中もぎっしりと詰まって空洞はない。

 しかもただの岩ではなく、転生元日から生まれた特殊な物質で形成された岩だ。


 たとえ前回の耀偽による強化でも、剣では中心まで衝撃が行かず、逆に剣の方が折れてしまうだろう。


 ならばと俺はガサゴソと持ってきたバッグを漁り、とっておきの物を引っ張り出す———




 ———バガァァァン!


 フィールド全体、試験会場付近、この重い衝撃音が鳴り響く。


 試験管制室ではあまりのことに騒然となって、その中で一人の女性がテンションを高めて言葉を発する。


「ふっふっふー! 見ましたか! 彼を! あれが私が言っていた期待の子です! あの子が誤って設置したAランクの打ち岩を見事破壊したんですよ! 見てたでしょ!? もう合格でもいいでしょう? ねえ死水(しすい)団長〜」


「…確かに実力はそれなりにあるようだが、ここで決めるのは早いだろう…ツクシ」


 興奮気味にモニターに映るマガツを指差し問いかける団員、ツクシ。

 それに対して団長の女はマガツを睨みつけるように凝視する。


 ———試験会場にいる一同、皆騒然だった。

 ではその中で一番驚いていたのは誰か。


 誤って設置してしまったシャドリンか、それとも管制室の人達か、違う。

 ならば試験会場付近の人か?…違う。


 一番この結果に驚いていたのは———


「あ、あぁぁあ…俺が、やったのか…?」


 ———ただ呆然とするマガツだった。


 大きなハンマーが滑り落ちると地面に零れたのは無。

 ハンマーは痕跡も残らず消えてしまう。


 ———俺は今回、ハンマーに壊す勢いで全力の強化『限界解除』を施した。


 しかし、それは打ち岩に剣を刺し込むための———例えるなら、剣を釘に、ハンマーを金槌に見立て、打ち岩へ徐々に亀裂を入れるための、()()()()()のはずだった。


 全くもって、ハンマーであの特大の打ち岩を粉々に壊すつもりはなかったのだ。




 俺の能力———耀偽は強化における段階が存在する。


 一、最低限の強化で対象の性能、性質を幾つかに絞って強化。


(硬度や切れ味など)



 二、限界解除のラインギリギリまでを攻める強化。


(一より圧倒的に強力だが、緻密な能力操作を要し、失敗すると前のように斧がガラスのように弾け壊れてしまう)



 三、耀偽の力をフルに強化対象へ施す『限界解除』。

 またの名を『ロストランフェイン』。


(強化対象が最終的に木っ端微塵になる代わりに、性能を爆発的に向上させつつ、その道具が生涯耐え切れるまでの衝撃をその一振りで放つことが出来る)




 ———しかし、今回の限界解除は例と違う。

 ハンマーの壊れ方、そして何よりも放たれた威力だ。


 通常の限界解除も十分すぎる威力を誇るが、ここまで圧倒的なまでの破壊力を生み出すものではなかった。


 壊れ方だっていつものパターンなら、ガラスが割れるような、耳に響く騒々しい音を発して壊れる。


 だが、今さっきは固体が蒸発するような不自然な壊れ方…いや、消滅だった。

 何かいつもと違う要因が作用したのだろうか…?


 といっても、特に理由は見つからない。

 強いて言うのなら、あのハンマーは奮発して買った物だってくらいだ。


 しかし武器の違いは今回の要因ではないだろう。


「———まっ、今は考えても仕方ないか」


 俺はとりあえずわからないことは頭の隅に置いておき、これで第一次試験は合格だと喜ぶことにする。


 そんな最中にシャドリンが地面からウニョウニョと、少し焦った様子で現れる。


「も、申し訳ありません…じゃ、じゃなく…! コホンッ…君には間違えて試験用じゃなく訓練用の、それも最上級の打ち岩を出しちまったッ…あれは本来相当な事がない限り壊れない作りの岩なのに、まさか粉々に破壊しちまうとは驚いたよ! 君、名前はなんてぇんだ?」


「え、えーと…マガツです…」


「そうかマガツか! 覚えとくぞ! ってことでマガツ、第一次試験、満点プラスアルファの百二十点で合格だ! 本っ当に見事なものだったぞ!」


「———! ありがとうござ…」


「ってことで退出の準備してくれ。今日はこのまま第一次試験が終わり次第、第二次試験も行う。それまでゆっくり休んで備えとけよぃ! んじゃバ!」


 シャドリンは全くこちらに話す隙を与えず、嵐のように去っていく。そんな対応に俺はため息を吐きつつも、第一次試験合格に安堵する。


「…よし。まず第一次、突破だ…!」




 今回の試験会場だったスタジアムからフロントに戻ってくるとすぐ、洋画に出てきそうな殺し屋にしか見えない強面の男と目が合う。


 強面の男は数十人の受験者を整列させているようで、おそらくは第二次試験の試験官だろう。強面の男は手に持ったリスト表を確認すると、俺を含めた数十人に向かって話し始める。


「これでこちらの方は全員だな。ではこれから第二次試験を行うための大講義室に移動する。マガツくん、君も私へ着いてこい」


 そう言うと強面の男はさっさと歩き出し、数十人の集団も男の後ろに着いて行く。


 俺はもう始まるのか…と若干テンポの良すぎる進行に困惑していると、集団の中から影雷が人の間を掻き分けてこちらに出てくる。


「マガツ! お前もしっかり、第一次は突破してきたな! 次は第二次だぜ! 大講義室まで他の受験者と一緒ってことは次のは俺たち一緒に試験受けんのかな? もしグループものとかだったら一緒になろうな! さっ、みんなも先行っちまってるし急ぐぞー!」


「え…? はぁ…少しは休憩したかった…」


 影雷は元気そうに早々と走って行ってしまい、俺は疲れた身体を一度休めたいという気持ちを押し殺して走って着いて行く。




 大講義室に着くと、そこは「大」が付くだけのことはある広い講義室で、机が後ろにいくほど高い位置になる階段型の作りになっている。


 座る席は自由らしく、俺は一番前の列、窓側の端っこの席に座る。

 すると一席空けて隣に座る人が———


「あっ…」


 俺はつい声が出てしまい、隣に座ろうとした人と目が合ってしまう。


 なんと、隣に来たのは第一次試験前に出会った女性、カムイだったのだ。カムイは俺のうっかり発した声でこちらを向くと、困惑した顔でこちらに声をかけてくる。


「ん? …ここ、座っちゃダメ?」


「あぁい、いえ。どうぞ…」


 俺は動揺ながらに平然を保ち、返答する。


 どうやら先の出来事は気にしていないようだ。もしくは俺のことを覚えていないかだが、とりあえず問題がないようで安心した。


 それからしばらく待っていると、ドアから先ほどの強面な男が何かの用紙を持って前の教卓に着く。


「もうしばらくで第二次試験が始まる。試験官を担当するのはこの私、ストログだ。よろしく頼む。始めに、この試験の内容だが…君らにはこれから、学力試験を行なってもらう。今から問題用紙と解答用紙を配る。解答用紙には正しい解答をすること。制限時間は三時間。全て解き終わったなら、解答用紙は自身の席に置いたまま退出して構わん。私が席に行って解答用紙の結果をつけよう」


 大半の受験者はこの説明から、何だ、ただの学力調査かよ…そう感じたことだろう。


 ———しかし彼らはまだ知らない。この第二次試験があまりにも理不尽な内容で、めちゃくちゃなものであるのかを…。


「———では第二次試験、開始っ!」

——おまけパート——

シャドリン

「はぁはぁ、受験者への説明が終わったら岩を用意して移動…

 私だけじゃ足りないよー…

 贖罪騎士団は常に人手不足なのに、

 こういう時くらい他の場所からでもスタッフ雇ってよぉ…」

他試験スタッフ

「おーい、ェ…こ、こほん、シャドリンちゃん!

 こっちに邪魔にならないようA級打ち岩置いとくから、他の岩と間違えないでねー!

 あと壊れはしないだろうけど、もし壊したら5ヶ月間の給料なくなるってよー」

シャドリン

「わ…僕はそんな失敗ないよー———えっとー次は…」

他試験スタッフ

「シャドリンちゃん! 受験者溜まっちゃってるよー! はよ試験の説明説明ー!」

シャドリン

「は、はひー…まずいまずいよぉー…えっとこの岩を試験の場所へ…あっ」

(——A級打ち岩移動——)

「あっ…あぁぁぁあ! い、いや落ち着け私…大丈夫…

 A級打ち岩なんてまず壊せるようには出来てないし、

 いくつか受験者の対応を終わらせた後に急いで戻しに行けば…」

 (——バガァァァン!)

「わ、私の5ヶ月…無給勤務確定…だ——だ——だ——(泣)」

——終わり——


——————

第5話をお読み頂きありがとうございました!

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