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第2話「男らしきはモテるのか、遅刻は評価を下げるのか、弱さは相手に舐められるのか」

※ 改行3つ

 → 『軽い』場面スキップ (数分後 他視点への切り替え)


※ ◆ 

 → 場面スキップ (数時間後 場面切り替え)

 核者(かくじゃ)———それは誰もがなれるわけではなく、また誰もが目覚める可能性のあるもの。


 多くの者は今際の際に見た走馬灯に自身の本質、『核心』に迫る解答を得たことで覚醒すると言われ、それをもって()()とされ、『核者』と呼ばれるようになる。


 彼らは自在に固有の超常的な力を発揮し、転生元日より現れた異形の獣『異核獣(いかくじゅう)』から身を守り、また、多くを救った———


『その確信に力あり、馴染んで『核心』は神秘となり 万人万種の己を示す』




「———本当にすみませんでした…」


 スイートリーパーを倒す際に強化した斧が、まさかここまで跡形もなく崩れ去るとは…限界解除まで強化したつもりはなかったのだが…。


「いやいや、斧のことなんていいんじゃよぉ…元々ボロボロだったんだし……君があのバケモノを倒してくれなければ、儂はとっくにこの世とおさらばしているとこだったんだ。お礼はあっても咎めることなんてせんよ…」


 さすがにお爺さんがここまで言うのだ。これ以上謝っても、ただ困らせてしまうだけだろう。


「は、はい…そういうことなら…あぁそれで、お爺さんはどこか怪我はありませんか? 逃げる際に荒っぽく運んでしまったので…」


「ははは、儂は大丈夫じゃよ。それよりお前さんは大丈夫かい? かなり怪我をしているようじゃが…。———っ! お前さん片目をやられているじゃないか! すぐに手当をっ…」


 老人が慌てて家から救急箱を取りに行こうとするが、俺はそれをすぐに引き止める。


「あぁ…! これは元からで…昔に色々と……ホントッ! 少し見えづらいだけなのでお構いなく!」


「そ、そうか…? いやでも怪我をしていることは変わらん。うちで手当てだけでもしていきなさい。騎士様にもらった傷薬があるんじゃ…」


 老人の言う傷薬、それは核者が作った特別な薬であり、大きな傷でも半日足らずで治癒してしまう優れものだ。


 かく言う俺自身も『贖罪騎士団(しょくざいきしだん)』から配給されており、今も荷物の中に入っている…ん? 贖罪騎士?


「———あぁっ!」


「おぉぉ! どうしたんじゃ!」


 俺は思い出す。今日何が目的でこんなにも大荷物を背負って外に出たのかを…。


「選抜試験のこと忘れてたぁぁ!」


「何ぃぃぃ! そうかそういえば今日が選抜の開幕日じゃったか! おぉ…どうしよう…どうしよう…」


 正確には今日が試験会場である贖罪騎士団本部基地「贖罪騎士団(しょくざいきしだん)防衛都市(ぼうえいとし)」の一般開門日であり、入場から受験者登録を行えるのは、この日のみなのだ。


 老人はあたふたし、俺は涙目になりながら絶望的な表情を浮かべる。


 傍から見ればとても面白い光景だ。

 そんなこんなしていると風が吹き、荷物から地図が飛び出る。


 俺はその地図がゆらりゆらりと落ちていくのを目で追っていると、ふと、一つあることに気づく。


「山を、越える…」


 本来、目的地に向かう場合は整備された道から行くと、山を避けた作りのため何度も迂回する羽目になる。


 しかし、全ての山を突っ切って目的地に向かう場合———


「最短距離で行ける…」


「は、はあ…? 何を…」


 老人は正直アホだとも思える俺の発言に口を開く。


「何を言っとるんじゃ…確かに地図上では一直線に行けば、贖罪騎士団の防衛都市に最短距離で向える! しかし、しかしじゃ! 山には高低差がある! それに加えて整備もされとらんのじゃ。何より、騎士様たちが張った獣避けも山には届いておらんじゃろう! あまりに危険すぎる。…儂のせいでこうなってしまったのに、こんな発言を…許してくれ…来年もある…今年は…諦めるんじゃ…」


 俺は下を向いて申し訳なさそうにする老人に、これ以上元気を無くして欲しくないため言葉をかける。


「お爺さんのせいじゃありませんよ。俺が助けたいから助けたんです。何よりお爺さんは人のために木を伐採しようとしたんです。悪いことをしたなんて思わないでください」


「じゃが…」


「心配いりません。それに俺は核者ですよ。———自分の身は、自分で守れます!」


 俺は親指を立ててグッドサインをする。それを見て老人も元気を取り戻したように笑顔で言う。


「…うむ…そう、じゃな! 儂が心配する必要はないな! お前さんは強い! 強い子じゃ!」




 軽い手当てをして老人と別れ、進んでいた道から多少外れてロスになってしまった時間を取り戻すように全力で山を進み、道に出て、山を進み、道に出て———


 途中、異核獣と遭遇したり、黒い衣で身を隠した人影と目があった気もしたが———とにかく目をつけられる前に全力で走り、走り、走った———




 ———贖罪騎士団防衛都市関所にて。女の騎士が二人、騎士選抜の案内役として務めていた。


「ツクシせんぱーい…もう帰りましょうよ〜時間も過ぎてますし誰も来ないっスよ〜」


「も、もう少し待ってくれ。来るはずなんだ…」


「え〜、ツクシ先輩の知り合いっスか?」


「いや、知り合いというわけではないのだが…」


「…イケメンすか?」


「いや、顔も知らん。いい男とは言っていたが…って! 顔なんてどうでもいいだろう! だ、大事なのは中身だ、中身。中身さえよければ、あとは私を一途に想ってくれるだけで———」


 先輩騎士が自分の世界に入り込んでいるのを見て、後輩騎士は冷笑する。

 そうしていると遠くから来る何かに気づく。


「ん? あれ、なんかめちゃくちゃ大量の異核獣引き連れた子が走って来てませんっスか…?」


 青ざめたように言う後輩騎士の発言で妄想から覚めたか、先輩騎士が慌てて剣を取り戦闘態勢に入る。


「あれはどう見ても引き連れているのではなく追いかけられているだろう!? フクレ! 戦闘態勢! 異核獣を一掃するぞ!」


「うっす! じゃあアタシはいつも通りツクシ先輩のやり損ねた奴らを始末するっス!」


 先輩騎士が剣に力を込めて青い光を輝かせると、瞬時にそれは風となって剣を包む。


風刃(ふうじん)!」


 風を纏った剣を薙ぎ払うと、連なった風の刃が放たれ、大量の異核獣をまとめて切り裂いていく。


 絶妙な間隔で異核獣に追われる人のみを避けながら幾度も放ち、そのままほんの数秒で数十体といた異核獣は一掃されたのだった。




「いや〜アタシの出番はありませんしたね〜。そこの君。大丈夫スか?」


 後輩騎士が小走りで追われていた人の元に駆け寄り、安否を確認する。

 まあ、その追われていた人物は幾つもの山を直線で走ってきた俺なのだが…。


 正直途中から迂回した方が楽だし早いとも思ったのだが、そう思った時には異核獣を引き連れすぎて他の町へ通ることも出来なくなっていた。


 …ホント、助かったぁ…。


「ぜえ…ぜえ…、だいじょ、ふぅ、だ、だい、ゲホゲホッ…ハイ…」


「アハハ。全然大丈夫じゃなさそー! …で君、騎士選抜のために来たんスよね? あんな大量の異核獣に襲われるなんて、いくら大遅刻したからって山突っ切ってくるのは正気じゃないっスね〜。こういう大事な日は時間に余裕を持って動くのが大事っスよ〜」


「うっ、はい…」


 後輩騎士の説教に俺は言い訳をしたいと思うも、そんな気持ちをグッと堪えて説教の続きを黙って聞く。


「アタシなんて騎士選抜の前日にはこの関所前まで来てテント張ってオールし———ッ」


 突然、先輩騎士が説教途中の後輩騎士をフィジカルアタックで吹き飛ばし、俺に話しかけてくる。


「大丈夫! 君のことは聞いているよ。ご老人をスイートリーパーから助けたのだろう!」


「え? なんで知って———」


「そのご老人が緊急連絡線を使って教えてくれたのだよ。本当は町に大きな問題が起こった時しか使用出来ないものなんだけど、ご老人がどうしてもと、町の巡回騎士に頼み込んでくれたんだね」


 先輩騎士は続けて獣避けが機能していなかった場所はすでに騎士を派遣し貼り直させに行った、と話すが俺にそのことは聞こえない。


 今はとにかく、お爺さんの優しさに触れ、瞼に沁み始めてきた涙を堪えるのに必死だったからだ。


「———おいおい…異核獣にこんな時間になるまで足止めされるなんて…この騎士選抜は赤子でも選ばれるくらい楽勝な試験で構成されてんのか?」


 突如、三人は声のした方を向くと、いつの間にか大量の異核獣が横たわる場所から、一番巨体の獣に上り、見下すように腕組みをしてたたずむ少年がいることに気づく。


 その少年の容姿、年齢は十二〜十三ほどか、それ以下にも見える。背はその歳なら平均より少し低いくらい。


 一瞬、女の子かと見間違う可愛らしい顔立ちをし、何より気になるのは服装———


「忍者…?」


 後輩騎士がそう言うと瞬間、少年の姿が消える。


「その通り…正確には忍び! 俺はこの騎士選抜のために数多の修行を重ねてきた…!」


 少年は三人の周りを高速移動で動き周りながら話を続ける。


「は、速い…!」


 その動きは俺が見てきたどの生物よりも速く、目で追うのがやっとであり、それに驚愕して俺に少年の言葉は一切入ってこない。


「だが、そんな修行、いらなかったか?」


「———!?」


 いつの間にか、少年は俺の真後ろにまで来て耳元で挑発する発言をしたのだった、が———ゴツッ!


「———うげっ!」


 そこに来ることがわかっていたかように、後輩騎士は速攻で少年の頭部に手刀打ちをかます。


「いってぇぇ…」


「ちょこまかとハエのように動かないでほしいっス」


「あはは…こいつはフクレ、目がとてもいいんだ。なんというか、その…残念、だったな!」


 呆れながらもフォローする先輩騎士に、悔しそうに少年はしゃがみ込んで後頭部を押さえる。


「さ、問題も済んだことだし、贖罪騎士選抜の試験会場に案内するとしよう!」


 先輩騎士が両手をパチンと叩き、話を切り替えて防衛都市の方へと指を差す。すると、少年があっ、と声を漏らしたかと思えば立ち上がり———


「それなら…俺も案内してもらえます?」


 場は凍りつくような冷えた風が吹く。そして自称忍びの少年の発言に、三人は言葉を合わせるように———


「お前も遅刻してたのかよ…」


 黄昏に迫る空の下、俺の分岐点はここにあった———

——おまけパート——

それは青年が防衛都市につく前の出来事———


青年

「うおぉぉー! やばい、やばい! 今俺は何体の異核獣に追われているんだ!?

 まさか少し暗い森に入っただけでこんなに異核獣がいるなんて!

 マ○クラでもこんなにスポーンしねぇぞ! うおぉぉー!」

 ———プシュー…。

青年

「うおー! ……ん…? この音…まさか、クリー———」

 ———ドカーンッッ!!

青年

「うわぁー爆発オチなんて最低ー!」

——終わり——


——————

第2話をお読み頂きありがとうございました!

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