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鮫島さんは否定形で全肯定。  作者: 河津田 眞紀@第一回Nola原作大賞早期受賞×2作
第五章 続・否定形の呪い

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登頂開始



 ──翌朝。

 宿で朝食を済ませた四人は、電車に乗り『深水山(みすみさん)』へ向かった。


『深水山』は標高三〇〇メートル程の小高い山だ。

 小学生が修学旅行に登るくらいなので、初心者にも登りやすい山と言える。


 最寄り駅で降りると、登山口に大きな鳥居があった。頂上にある『深水神社』の参道が麓から始まっているらしく、分社と思しきお社や、御守りの販売所などもあった。


「懐かしいなぁ。前来た時と全然変わっていない。ね、雷華」


 辺りを見回しながら、未空が感慨深げに言う。

 しかし雷華は、緊張した面持ちできょろきょろと辺りを見回していた。

 無理もない。自分を呪った神さまの元を再び訪れたのだ。好きだった人や友だちとのトラウマもある。純粋に懐かしめるはずがなかった。


 未空も、そのことは重々承知の上だ。と言うより、未空も相当に緊張していた。

 翠も同じ。『儀式』が無事に成功するようにと、そのことで頭がいっぱいなのだ。


 そしてそれは、海斗も同じだった。

 だから、


「登り始める前に、しっかり準備をしよう。持ち物の最終チェック。登山ルートの再確認。それから、お供え物に食べ物を置くことが可能なのか、神社の人に聞いておきたい」


 海斗はやるべきことを淡々と羅列し、皆の気持ちを落ち着かせようとする。

 その意図を汲み取った未空は、スマホを取り出し、


「わかった。じゃあ私は、登山ルートの再確認をするよ」


 そう言って、確認を始める。

 翠も、一つ頷いて、


「わたしは、登山グッズと、『儀式』に使うものに不足がないか再確認して……転ばないよう、靴紐を結び直しておく」


 と、皆のリュックを開け、準備に移る。

 残る雷華は、少しおろおろしてから、


「じゃ、じゃああたしは……神社の人にお供え物をしていいか聞いてくる」


 そう言って、御守りの販売所の方へと駆けて行った。


 そうして、雷華が遠ざかったことを確認してから……海斗たち三人は、目配せをする。

 そして額を寄せ、『儀式』に向けた最後の打ち合わせを始めた。


「山頂へは、途中で休憩を挟んでも二時間あれば到着する予定だよ。着いたらまず、神社の本殿でお参りをする。その後、裏手にある石像へ向かう。そこで必要なものを取り出したら、いよいよ『儀式』開始」

「お饅頭を供えるのがだめって言われたら、その時だけ置いて、終わったら持って帰ればいい。とにかく、石像に水をかけて、お供え物をして、祈る。この流れを、雷華ちゃんにきちんとやってもらうこと」

「鮫島が祈り終わったら、俺が話しかけて、否定で返されないか確認する」

「うん。できれば疑問形で投げかけてもらえるといいかも。その方が、否定か肯定か、雷華の返答がわかりやすいはずだから」

「わかった。そうする」

「うぅ、ドキドキする……雷華ちゃんの呪い、ちゃんと解いてあげられるかなぁ?」

「大丈夫。雷華は『儀式』を信じ切っている。思い込む力は相当強くなっているはずだよ」

「あぁ。饅頭を作るのも、水を手に入れるのも、それなりに苦労したからな。その大変さが『儀式』の信憑性を増幅させているはずだ」

「うん……そうだね。きっと上手くいく。ここまで来たんだもん。雷華ちゃんの呪いを解いて、みんなで藍山市に帰ろう」


 三人が頷き合ったその時、雷華がこちらへ戻って来た。

 が、その表情が先ほどよりも強張っていたので、海斗たちは心配になる。


「……雷華? お供え物、駄目だって?」


 未空が尋ねると、雷華はハッとなって首を振り、


「う、ううん。別に置いてもいいけど、トンビやカラスが多いから襲われないように気をつけて、って言われた」


 ぎこちない笑顔を浮かべ、そう答える。

 鳥に襲われることを恐れているのか、単に緊張が増しているのか、或いは他に心配事があるのか……

 固い表情の理由は定かではないが、彼女がそれを語らない以上、追及はできなかった。


「よし、お供え物も無事に置けそうだな。それじゃあ、出発しよう」


『儀式』の成功を祈りながら、海斗たちは『深水神社』を目指し、登山を開始した。

 

 

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