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鮫島さんは否定形で全肯定。  作者: 河津田 眞紀@第一回Nola原作大賞早期受賞×2作
第四章 二番目の呪い

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朝日と共にやってくる



 ──翌日。

 ゴールデンウィーク最終日。


 特に予定のない海斗は、午後にでも市の中央図書館へ行こうと考え、目覚まし時計をオフにし、寝ていたのだが……



 ──ピンポーン。ピンポンピンポン、ピンポーン。



 無遠慮に鳴り響くインターホンにより、叩き起こされた。


「……なんだか、猛烈に既視感を覚えるな」


 などと呟きながら、身体を無理やり起こし、玄関を開けると、


「おはよ。迎えに来たわよ」


 案の定、寝ぼけ眼には眩しい程の美少女オーラを放ちながら、鮫島雷華がそこに立っていた。

 迎えに来た、ということは、「お前も『親方』のお別れ会に参加しろ」ということだろう。


「……俺は呼ばれていないんじゃなかったか?」とか、「あまり一人暮らしの男の家にほいほい来るもんじゃない」、といった言葉が喉まで出かかるが、否定の勢いで帰ってしまう可能性もあるため、やめることにした。

 代わりに、


「……すぐ準備する。上がって待つか?」


 そう尋ねるが、雷華はふいっと顔を逸らし、


「上がんない。ここで待ってるから、早く顔洗って着替えてきなさい」


 やはり否定で返した。

 こんな早朝に、家の前で女の子を立たせておくのも忍びない。もっと言葉を選べばよかったと、海斗は後悔する。

 そこで、


(……早朝……そうだ)


 ふとあることを思い立ち、海斗は雷華に近付く。

 そして正面に立つと……彼女の肩に、両手をそっと置いた。


「なっ……なによ、いきなり」


 突然のことに動揺する雷華。

 しかし海斗は答えず、彼女の瞳をじっと見つめる。


「ちょ……なんとか言いなさいよ」

「…………」

「う……もしかして、家に上がれって言いたいの?」


 頬を染め、雷華が問うが、やはり海斗は答えない。

 瞳の奥を真剣に見つめられ、このままどうなってしまうのかと、雷華が唇をきゅっと閉じた……その時。


 雷華の身体は、海斗の手により、その場でくるくると三回転させられた。


「なっ……え? え?」


 混乱しながらも、なすがままに回る雷華。

 そして再び、海斗に両肩を押さえられ、停止させられたかと思うと……



「──ラブラブ☆サンパワァアアアアッ!」



 目の前で、海斗が意味不明な呪文を絶叫した。

 脳の処理が追い付かず、目を点にする雷華。

 しかし海斗は、やり切ったと言わんばかりの清々しい顔で、


「……早朝、朝日を浴びながら異性と七秒間見つめ合い、三回まわって、呪文を唱える。恋愛運が急上昇するおまじないだ」

「はぁあ?! 誰も頼んでないわよ、そんなの!」

「鮫島、すぐに支度するから、家に上がって待っていてくれ」

「イヤに決まってるでしょ?! あんたみたいな変態おまじない男の家になんか誰が上がるか!」

「む、否定か……やはり回った本人が呪文を叫ばないと効果がないんだな。鮫島、今度は自分で『ラブラブ☆サンパワー』と……」

「叫ばないわよ!!」


 海斗の手を振り払い、ふんっと背を向ける雷華。

 恋愛運を爆上げするというこのおまじないなら『否定の呪い』を打ち消せるのではと思ったが……失敗に終わったようだ。


 仕方ない。ならば、『呪い』を利用した言い方に変えるまでだ。


「……近ごろ、この辺によく野良猫が来るから、もしかするとくしゃみが止まらなくなるかもしれないが……大丈夫だよな? 外で待てるよな?」


 雷華の背に向け、海斗が言う。

 すると、雷華はゆっくりと振り返り、


「…………大丈夫じゃない。早く家に入れなさいよ、この変態」


 眉を寄せながら、恥ずかしそうに否定した。





 支度を済ませ、二人は歩いて『つるや商店街』へ向かった。

 アーケードの入口では、既に翠が待っていた。来るはずのない海斗の姿を見るなり、翠はハッと口を押さえ、


「同伴出勤……イヤラシイ」


 などと口走るので、海斗は「妙なことを言うな」と即座に窘めた。


 そのまま三人はメインストリートを進み、『ハンマーヘッド』を目指す。

 多くの店が開店準備をする中、雷華の母親であるパン屋の店主・鮫島風子は、店の前に出て待っていた。


「おはよう。みんな来てくれてありがとうね。……あら? 未空ちゃんはいないの?」


 風子の疑問に、雷華は淡々とした声で、


「旅館の手伝いが忙しいから、今日は来れないってさ」


 そう答えながら……マスクにサングラスというアレルギー対策万全の装いで、猫を見送る準備を整えた。

 

 

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