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第10話『残念ですが、私には決まった方が居ますので、二人のお気持ちには答えられません』

面倒な会議も終わり、アルバート陛下と一緒にヴェルクモント王国へ戻って来た私は、まずエリカさんが待っている王城の庭園に向かった。


そして、庭園に居た二人に声を掛ける。


エリカさんと、ヘンリー君ことヘンリー・ガーラ・ヴェルクモント。


ヴェルクモント王国の第一王子にして、エリカさんとアルバート陛下のお子様である。


「ヘンリー君。エリカさん」


「っ! セシルさん!」


「セシルさん。戻ったんですね」


「はい。陛下も戻ってますよ」


私は走ってきたヘンリー君を抱きとめて、そのまま手を繋いでお茶会用のテーブルでお茶の準備をしていたエリカさんの元へ向かった。


「もしかしてタイミング悪かったですか?」


「いえいえ。そろそろセシルさん達も戻ってくるかなって、今日はアリスちゃんと一緒にお茶をする予定だったんです」


「それは良かったです」


「多分そろそろ着くと思うので、セシルさんは座って待っててくださいね。長旅でお疲れでしょうし」


「いえ、レーニの転移ですぐ移動出来ますからね。それほど時間は掛かってないですよ」


「それでも、ですよ。ヘンリー。セシルさんをエスコートして下さい」


「はい! 母上!」


エリカさんの言葉にヘンリー君はキリっとした顔になると私を椅子に案内してくれた。


まだ幼い体で椅子を動かすのも大変だろうに、一生懸命お母様のお願いを聞こうとしている姿はとても可愛らしい。


「どうですか!? セシルさん!」


「えぇ。とても助かりました」


「えへへー」


感謝を告げると嬉しそうにはにかむ姿がとても可愛らしい。


いや、まぁヘンリー君はお父様みたいな格好いい男になりたいと言っているから、可愛いという言葉は微妙かなと引っ込めた。


「少し見ない間に頼もしい子になりましたね。ヘンリー君」


「そうですか!? セシルさんの相手として相応しいでしょうか!」


「いや、ヘンリー君にはもっと相応しい人が居ると思いますよ。こんなおばさんではなく」


子供の頃からよく接していたからか、妙に懐かれてしまったのは難しい所だ。


それに、アメリアさんから聞いたけど私、魔法使いだから子供出来ないらしいし。


王族の血を途絶えさせるワケにはいかないからね。


「う、まだ足りないという事ですね。では「セシル!」っ! この声!」


ヘンリー君が悲しそうな顔をしながら私に何か言おうとしていた瞬間、誰かが背中から声を掛け、座っていた私の元へ駆け寄ってきた。


まぁ、直接見なくても分かるけど、一応顔を確認してから声を掛けた。


「ライリー君」


「へへっ! 久しぶり! 俺の事まだ覚えてる?」


「えぇ。当然覚えてますよ」


「やりぃ!」


「もー! 一人で走っていかないでよ! それに、セシルさん達に迷惑かけないの!」


「うわっ、ごめんよ!」


「ごめんじゃなくて、申し訳ございません! でしょ!」


ライリー君を叱るアリスちゃんを見ながら、成長してもそんなに変わらないんだなと私は笑みを零す。


ここは本当に、心が安らぐ様な場所だ。


「もう。段取りがぐちゃぐちゃ。ごめんね。セシルさん」


「良いんですよ。感動的な再開なら出来ましたから」


「母様。ごめんじゃなくて、申し訳ございませんじゃないの?」


「揚げ足とらないの!」


ライリー君こと、ライリー・ロザム・メイラー君はアリスちゃんとエリオットさんのお子様なのだが。


どうにも元気で落ち着かないところがあるらしく、二人は苦労しているみたいだ。


まぁ、親によく似たのかもしれない。


しかし、活発なタイプの少年らしく、爽やかな笑顔は将来多くの女の子を泣かせるんだろうなと想像して笑ってしまった。


いや、それを言うのなら、ヘンリー君も同じなのだけれど。


ヘンリー君はどちらかと言うと大人しいタイプだから、静かな恋をする子が多いんじゃないかな。


知らんけど。




さて、そんなこんなでメンバーも集まった事だしお茶会を始めよう。


というタイミングになっていつもの問題が起こった。


「じゃ、俺セシルのとなりー」


「ぼ、僕もセシルさんの隣に」


「真似すんなよ。ヘンリー!」


「真似してません! むしろ僕の方が最初にそうしたんです!!」


「真似してたろ!」


「もう、止めなさい。ライリー」


「ヘンリーも。怒鳴ってはいけませんよ」


「でもさ!」


「母上……! しかし!」


そう。こうなんだ。


何がどうなってそうなっているのか分からないけれど、私は二人にモテモテなのだ。


まぁね? この世界に来てから私の外見はそれはもう女神様の様だし。


魔法使いだからか見た目にあんまり変化が無い割に何か年々神々しさ? みたいな物が増してて、外を歩けば人に魔物に、とモテモテなワケだけど。


流石にさ。


親友の子供に手を出したら人間としてどうよってワケで。


適当に流しているんだけど、この子たちも結構本気なんだよね。


セシルー困っちゃうー。なんて冗談を言っている場合じゃないのかもしれないけど。


こりゃまた二人となるべく合わない方が丸いかななんて思ってしまう。


その間に婚約者でも何でも決めて、その子とラブラブして欲しいものだ。


私と一緒になっても未来が無いからね!


無駄よ無駄。


「残念ですが、私には決まった方が居ますので、二人のお気持ちには答えられません」


「「誰!?」」


勢い。


凄いのよ。


「お二人もご存知かと思いますが、私はリヴィアナ様と心を通わせているのです。片時も離れたくないと思う程に」


という訳で、いつもの様にいつもの言い訳をぶつけて、このお話は終了。


リヴィには後で何かご馳走しよ。




「議会はどんな感じでしたか?」


「特に何も変わらないですね。いくつかの問題の提示と解決策の実行予定は話しましたが、他はいつもの通り、アルバート陛下が一部の国から責められて終わりです」


「また?」


「はい。まぁ、状況は変わってないですからね」


「確かにね」


会議で起こった事を二人に伝えると、二人は考える様に紅茶の入ったカップを見つめながら言葉を落とした。


複雑そうな顔をしているのは、このままではいけないと考えているからかもしれない。


でも……。


「セシルさん……! 私も」


「エリカさん」


「っ」


「聖女の役割は私一人で問題ありませんよ」


「でも」


「今までだって聖女はずっと一人だったのですから、聖女が三人になっても三人が対応する必要はないと思うのです」


「……セシルさん」


アリスちゃんの寂しそうな顔に微笑みを返しながら、私は紅茶を一口飲んだ。


心を落ち着かせながら話をするために。


「それに、聖女は私でも出来ますが、ライリー君とヘンリー君のお母様は二人にしか出来ないのですから、どちらが重要かなど考えるまでもありません」


「そうは言っても、世界が動けば分かりませんよ」


「それはそうですけど……今はすっかり平和なのですから、あまり気にしなくても良いとは思いますよ」


そう。


何だかんだと人間同士で言い争いはしていても、世界は平和なのだ。


いや、レーニやアンドレイ様が言っていたが、世界が平和だからこそ人は争うのだという。


ならば、今こそ平和な世界という事だ。


「平和……か」


「アリスちゃん?」


「いや、何か最近空気がざらつく様な感じがあって、昔の事を思い出してたの」


「昔、というのは」


「ほら、ヘイムブルで昔、ドラゴンが暴れたじゃない? いや、あの頃はセシルさんはヴェルクモントに居なかったけど」


私は既に終わっていたドラゴンイベントの事かと頷きながら、ふと何かが頭を過る様な感覚があり記憶を探る。


そして、ゲームで似たような事を言っていたなと思い出そうとした。


何だったか……。


「っ!!」


「セシルさん?」


「申し訳ございません。少々用事を思い出しました。失礼します」


そうだ。


そう! アリスちゃんが同じ事を言うシーンがある。


それは主人公エリオットに攻略された後の展開を描いた後日談。


太古の森から魔物の軍勢が攻めてくる前にアリスちゃんが言ったセリフだ。




やばい。後日談イベントが始まった!

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