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バイバイパパ


松原2丁目、テナントビル1階。そこは最寄りの駅から歩いて1分圏内にある。

数年前からマンション自体は建っていたのだが、1階のテナントが募集中のまま何年も時が経ち、

ついに入ったのが動物園だった。


 動物園にするにはスペースが小さすぎるために、収容されている動物はアゴがしゃくれたパンダ1匹のみだったが、

そのパンダも脱走してしまったので今は、代わりの怪異が展示されている。


 腕が8本。ピンク色の触覚を垂らせ、八重歯の尖ったスーツ姿のサラリーマン。つけられた怪異名は「ダメ人間」

宏明のなれの姿である。


 そこに、一人娘の麻由が駆け込んできた。


「パパ!!」


 半日失踪していた父親と、娘の再会であるが、


「見ないでくれ!!」


 宏明は部屋の中の柱の影に隠れてしまった。

自分の娘がどうやってここを探し当てたかわからないが、この姿だけは見られたくはなかったのだ。

そこに、飼育員らしき男?が入ってくる。


「コラーー。だめだー愛想をよくしろーお客様にはー」


 それは、手足の生えた全長180センチのチョコボールだ。

アーモンドチョコではない。チョコボールである。

どちらにせよ口などないので、他の怪異と同様どこで喋っているのかはわからなかった。


「ダメ人間! 出てきなさいダメ人間!」


 チョコボールは柱の影の宏明を説得しているが、柱からは啜り泣く声しか聞こえてこない。


「パパを返して!」


「パパ? この怪異がかい? そんなわけなかろうもん」


「パパだもん!」


「だってお嬢ちゃんは、『人間の怪異』だろう? 人間の怪異の親も人間の怪異なはずだよ。なあ? ダメ人間」


「……はい」


「この『チョコボール ユカイ』にいってごらん。 私は人間の怪異ではありません」


「私は人間の怪異ではありません」


「そして人間でもありません」


「そして人間でもありません」


 言われるがままに素直に答えてしまった。


「ちょっとしっかりしてよパパ!!」


「麻由……ほんとごめん。 俺はだめな父親だー」


「パパがそんなだと、私本当に皇帝ペンギンの子供になっちゃうよ!? いいの!?」


「仕方がないんだ……俺は……俺は……お前達を長野から、とんでもない場所に連れてきてしまったのかもしれない。

 今は『チョコボール ユカイ』さんのお世話になっているダメ人間なんだ……カエルもヘビもさわれない。

 馬鹿な猫に馬鹿にされる、……お前の誕生日すら忘れる……だめな人間だからこんなことになっちゃったんだ……」


 麻由は涙ぐんでしまった。その横で、麻由を元気付けようとしているのか、チョコボール・ユカイは誰も見ていないリンボーダンスを始めた。


「じゃあ麻由帰っちゃうよ!? それでいいの!?」


「……うん」


「ばか!!!」


 麻由は走って行ってしまった。


「……さよなら、麻由」


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