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注目を吸い込む闇 下


おおお落ち落ち落ち落ち着け……


猫がでかいからなんだ。デカかろうが猫は猫だ。脅かしおってからに!!


ええいまずは貴様から! 光の届かぬ暗黒の世界に送……


「ペンつくペンつくツッペケペンのペンペン♪」


何奴!?


「ペンつくペンつくツッペケペンのペン♪

 照美! 照美やい! 皇帝が朝の乾布摩擦を所望する!!」


……ペンギンでか!!

皇帝ペンギンでか!! なんだこりゃ!?

しかも、この威圧感、このオーラ、この下衆な言動に反比例した気品の高さ……只者ではない、何者だ!


「ん?……君はだあれ?

 千代子! 千代子の友達か!?」


「(トイレから)なあにー?」


「この真っ黒黒助君は千代子のボーイフレンドか? こんな辛気臭い見た目の、顔色悪い半グレのヤンキーに千代子はやらん!」



……半グレではない! 真黒まぐろだ! 真っ黒だ!!

こやつ好きに言わせておけば……



「(トイレから)知らない。朝からいたのー」



な……! 我は漆黒の闇であるぞ!! 貴様等人間が幾千年と恐れてきた漆黒の闇の一族であるぞ!!



「じゃあ君は誰? 東横キッズなの?」


そんなものは知らん!


「じゃあ、新しい間男か! マオちゃんのお友達だね!! よかったねマオちゃん! 新しい友達ができて!!」


「(リビングから) 友達じゃない。あと間男はお前だ」




こ や つ ら!! 漆黒が貴様等の領域に侵略しているのだぞ! 怖がれ! 少なくとも興味をもて!!

ええい辛抱たまらん!! こうなればいよいよ実力で……



「(勝手口をノックする音)ヤアヤア 拙者、春崎藤右衛門と申す!! 主人は御在宅か!!」


今度はなんだ!? 客人か? ……これはいい。この家の住民が例え神経の腐った人間どもだとしても、

客人であれば、漆黒の闇を見れば恐れるであろう。

どれ、ここは一つ、理不尽な闇を見せつけてやろう……


「(勝手口をノックする音)誰もおらぬのか! 拙者、赤堤の勇! 春崎藤右衛門と申す!!」



ククク……こちらから出向いてやろう。さあ、暗闇に絶望するがよ……(ガラガラ)……

でか!!……ザリガニでか!!

ザリガニでかザリガニでか!!


「むお?! お初にお目にかかる。拙者、春崎藤右衛門と申す。

 出会いを祝して、拙者の十八番『子別れ』と『芝浜』を通し、そして『初天神』から帰ったそばから『時そば』を食べ、

『粗忽長屋』にて『死神』と共に『寝床』につくという創作落語を披露いたす。」


なんだその時間がかかりそうな演目のパレードは!!


なんだ!なんなのだこの家は!

何かに取り憑かれておるのか!?どれだけの業を背負い込めばこんな怪異まみれの家に住むことができるのだ!!

これぞ古き言葉に聞く、


『深淵を覗くとき、深淵もまたお前を見ている』だとでも言うのか!?


恐るべし鈴木家!

しかし我こそは暗黒の闇である!かくなる上はこの家ごと闇に……


「あのー……よろしいですか?」


「むお!? これはお靖殿!?」



む?ええい邪魔くさい女だ……





……なんだこの女は……

柔和な笑顔に隠れた、

この背筋が凍りつくような殺気は……


只者とは思えぬ……



「わたしたち平和に生きております。それだけですので、

 どうか殺伐とした雰囲気は引っ込めていただけますか?」


さ……逆らえぬ……!!『夜さえも影を潜める』と称されたこの我が、気で押されているだと……!?

やむなし!出直すしかあるまい……


久方ぶりに魔窟を見たわい……くわばら、くわばら……




「ママーなんだったの?あれ」


「さあ、なんでしょう。さ、みんなで朝ごはんにしましょう」



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