12、大切な約束を胸に
胸が苦しくなるほどの、二人の愛情を感じながら、目を覚ましたあたしは沙耶さんのところまで案内役を務めてくれている稗田先生の声を聞いた。
「沢城さん、目を覚ましてくれたかしら? 到着したわよ」
助手席の扉が開かれ、心配した目で稗田先生があたしを見ていた。
波の音が聞こえる。見たことのある駐車場にいるのをこの目で確認したあたしは本当に目的地まで辿り着いたことを知った。
「すみません……つい眠ってしまったみたいです」
あたしは素直にそう言った。
「無理しなくていいのよ。今日は様子を見に行くだけにしても」
涙が頬を伝っているのを見てしまったせいか、稗田先生があたしの気持ちを汲み取って言った。でも、あたしの決意はもう出来ていた。
「大丈夫です、やり遂げて見せます。守代先生が残してくれたたった一つの願いですから。早く、目覚めさせてあげたいんです。守代先生が愛する沙耶さんを」
あたしは迷いを振り払い稗田先生に向けて言った。
これでいい……先生の想いに全力で応える。
あるはずだった卒業式を迎えることが出来なくても。
それが、あたしに出来る精一杯の恩返しのはずだ。
だから、あたしはこの命に代えても、先生が愛した沙耶さんだけは救い出そうと胸に誓った。
「さぁ行きましょう、稗田先生。これで大切なあたし達の役目も終わりますから」
あたしは決意を胸に車を降りた。
沙耶さんが目を覚まし、全てが終わったら先生のところに帰ろう。
そんな想いを心に秘めながら。




