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星とリングとハーレムと  作者: マノイ
第一章 はじまりは東から(仮題)

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30/35

30. 【東の辺境】めっちゃ美人になってる!

「カレイ……ちゃん?」

「ちゃ、ちゃん付けは止めろよ。はずいだろ……」

「(あのカレイちゃんが照れている!?)」


 ちゃん付けで呼ばなければ返事をせず、隙あれば密着して瞳を覗き込もうとして来たカレイが乙女のように照れている。眠そうで無口な雰囲気が荒っぽい印象に変わったことも含め、記憶の中のカレイとはかけ離れている。


「分かった。カレイ」

「お、おう、それで良いんだホワイ……ええと、誰だっけ?」

「俺は流浪の戦士、ブラックだ。よろしくな」

「ぶはっ!なんだよそれ。わっざとらしー!」


 本当にわざとイキった演技をしているのだから仕方ないだろう。

 とはいえ演じ続けるのは面倒だし正体がバレているのが大前提なので、大半はいつも通りのホワイトなのだが。


「にしても良く私がカレイだってすぐに分かったな。自分で言うのもなんだが、印象が違ってるだろ。てっきりバターのやつと間違えるかと……」

「待て、カレイ」

「ん?どした?」


 ホワイトに再会できたことが嬉しいのか、勝気な瞳をだらんと溶かしてニッコニコなカレイだが、残念ながら今は再会の会話を楽しむような場面では無かった。


「あっち見て」

「何だよ一体……ひえっ!」

「カ・レ・イ?」


 ホワイトと遊べる番がようやく回ってきたと思っていたスープ辺境伯夫人が、娘に邪魔されたことで笑顔で激怒していたのだった。


「お母様ごめんなさーい!」


 そのあまりの迫力にカレイは引き下がらざるを得ず、ホワイトも会いたくてたまらなかったカレイとの逢瀬の時間を今しばらく待ち夫人と遊ぶ(戦う)のであった。




 そんなこんなでスープ辺境伯夫妻との模擬戦を終えると夕餉の時間になり、ようやくカレイとじっくりと話をする時間が出来た。カレイは不自然なまでにホワイトと席を近づけ、肩が触れそうなくらいの距離で座わっている。


「ホワ……ブラックと一緒。ブラックと一緒」


 顔を赤くして照れながら、子供のようにウキウキして喜んでいる。

 登場時の格好良い姿は何処行った。


「カレイったらあんなに喜んじゃって」

「ようやく会えたのだ。仕方ないだろう。むしろあの程度で治まっているのが不思議なくらいだ」

「彼に会いたい会いたいってずっと言ってたものね」

「お父様!お母様!」


 これまでの様子を少しだけバラされて抗議するカレイ。

 しかしそれは単に恥ずかしいからだけでは無かった。


「そういう話は本人が来てからします」

「(なるほど、これまでのことはちゃんと再会してから話したいって決めてるんだな)」


 ブラックという中途半端な相手に想いをぶちまけたところで、ホワイトも受け取り方を困るだろうしもやもやが残ってしまう。だったら今回は最初から割り切って込み入った話はしないと決めたのだ。


「(なら私も余計なことは聞かないようにしたいけど、やっぱりアレだけは確認しておきたいよなぁ)」


 それはもちろん、再会の約束が延期になったことについてどう思っているかだ。

 こんな歪んだ再会でも喜んでくれているのだから、否定的ということは無さそうだが、ずっと彼女達の気持ちがどうなのか不安に思っていたので、少しだけでも聞いておきたかった。


「カレイは魔法学園に通っているんだったな。学園生活は楽しいか?」

「おうよ!楽しいぜ」

「(私が居なくてそれだけ笑顔になるとちょっと虚しい気がする)」


 それはホワイトが彼女の『楽しい』の意味を正確に理解出来ていなかったからだった。


「誰かさんが来れなくなった原因のゴミ共をぶっ潰すのが超楽しい!」

「そ、そうか。その、掃除は上手く行ってるのか?」

「かなり綺麗になったぜ!学園に来る時を楽しみにしてろよな!」


 学園に巣食っている貴族至上主義の連中は、彼女達の手によって順調に着実に追い詰められているようだ。


「(彼らにストレスを全力でぶつけているから『楽しい』わけか。何をやっているか聞くのが怖いな)」


 だがホワイトとして再会した暁には、自分達が何をどうしたのかを事細かに説明して褒めてもらおうとしてくるだろう。どんな無茶苦茶なことをやったとしても受け入れる覚悟をひっそりとしたのであった。


「それにしてもカレイは元気だな。師匠から昔はもっと大人しかったと聞いていたが、こんなに変わるだなんてびっくりだ。(このくらいは聞いても良いかな?)」

「お、おう。こういうのは嫌か……?」

「格好良くてとびきり美人で好みだ」

「そ、そうか!良かったぁ……」

「(そしてそうやって照れるところが可愛くてたまらないな)」


 勝気娘の乙女モードが男心にクリティカルヒットなのはどこの世界でも変わらない話だった。


「(それにスタイルが良すぎる。手足が引き締まっていて全体の輪郭がバランス良く整っている上に、胸や腰つきが女性らしさをしっかりと主張している。思わず見惚れちゃったよ)」


 ホワイトは特に女性の好みにこだわりがあるタイプではないのだが、今のカレイを猛烈に好みに感じているようだ。


「(ただ、いきなり半袖短パンで来るのは困ったよ。あまりにも肉感が色っぽくて、師匠達が居なかったらいきなり押し倒しちゃいそうだった)」


 それもまた別の師匠の教えだった。


 魅力的な女性に出会ったらすぐに体で答えてやりなさい。


 最低な思想をホワイトに植え付けたのは誰だ。


「こっちにいるとさ、魔物と戦う機会が嫌でもあんだろ。誰かさんの傍にいるためには強くならなきゃって思って魔物と戦いまくってたら、いつの間にかこんな感じになっちまった。嫌われなくて良かったぜ」

「(私の傍にいるために……うう、そんなこと言わないでくれ。めちゃくちゃ愛でたくなってしまうじゃないか)」


 ここが食堂でなく彼女の自室であったならば、今はブラックだということも忘れて強制ベッドインの流れになってしまっていたかもしれない。


「(今の私はブラック。今の私はブラック。今の私はブラック。今の私はブラック)」


 必死に精神を落ち着かせ自重しようとする。

 そのためには話を少し雰囲気の違う話題に変えなければダメだ。


「そ、そうだ。魔物で思い出した。やはりここではそんなにたくさん魔物が攻めてくるのか?」

「ああ。毎日ってわけじゃないが、二、三日に一度くらいのペースでは来るな。ですよね、お父様」

「(両親に対してだけお嬢様になるのがちょっと面白い)」


 辺境伯夫妻もそのことに違和感を覚えていない様子なので、ここではそれが普通なのだろう。


「そうだな。それに襲ってくる場所や魔物の量や強さも毎回変わる」

「ただ、同じ場所に連続して攻めてくることは少ないのよね」

「うむ。それで大体の予測をして対応しているわけだ」


 となると次に襲われる場所も察しがついているということになる。


「なら参考までに、次の襲撃を見に行きたいな」

「いいね!行こうぜ!」

「え? カレイは学園に戻らなくて大丈夫なのか? というか今更だけど、明日戻るはずだったんじゃ」

「ばっか野郎!あんなとこよりこっちの方が重要に決まってんだろ!だからめっちゃ頑張って片を付けて帰って来たんだ!それにあっちはあいつらがいるから問題ねーよ」

「そ、そうか (流石に今のはデリカシーが無かったかな)」


 自分に会うために予定を繰り上げて帰って来てくれたことは何となく察しがついていたのに、話の流れでつい聞いてしまったことは失敗だった。とある師匠が見ていたら『女心を分かっとらん!』とお説教だっただろう。


「じゃあ一緒に行くか」

「おう!」


 こうして最前線デートが決まったのだった。


「待て待て。見に行くのは良いが、戦うのか?」

「まぁ少しくらいは」

「久しぶりで腕が鳴るぜ!」

「少しどころか全部やってくれても良いのだがな……」

「はは、仕事は奪わないって」


 前線で戦う戦士達にとって他の誰かが代わりに戦ってくれれば助かるかもしれないが、彼らにもリズムというものがある。交代制で準備して、自分の番の時に全力が出せるように体調を調整していると、以前辺境伯から聞いていた。ここでホワイトがしゃしゃり出てしまい彼らの出番を奪ってしまったら、体調管理のリズムが崩れて次回以降の防衛に影響が出てしまうかもしれない。

 そう考えると横から自分がやってきて好き勝手に無双するというのも、あまり良くないことかと思っていたのだが、辺境伯は気にせずやっちゃえというスタンスらしい。


「そういえば、手紙で言っていた私にやってもらいたいことって言うのは何だ?」

「あ~それはまた今度説明する。前線に行くならそっちに集中して欲しいからな」

「ふ~ん、分かった。(そう言って、少しでも長く滞在させようという魂胆だな)」


 サンベールの様子は今のところ安定しているため、少しならば滞在が長くなっても構わないだろう。

 それにホワイトもカレイともっと一緒に居たかった。


 今は辺境伯の魂胆に敢えて乗り、愛しい人との変わった逢瀬を楽しむことに決めたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] もしかしたら、オープニングのシーンは、出会い直後の島なのかな。だとしたら、本当にずっと合っていなかったのだなあ。 印象は変わっても、中身はそんなに変わっていないと。
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