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星とリングとハーレムと  作者: マノイ
第一章 はじまりは東から(仮題)

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26. 次の予定は……心を癒しに行こう!

「お疲れじゃったのう……おや、もうどこかに出かけるつもりかのう?」

「はい。例の手紙の依頼を受けようかと」


 ロークスユルム王国からサンベールに戻ったホワイトは、国王に結果を報告してから魔法学園へと戻ってきた。

 ホワイトが戻ったことを知った学園長が話を聞きにやってきたのだが、ホワイトはもう次の旅の支度をしていた。スープ辺境伯からの依頼を受けて、一度クラウトレウス王国に戻ることにしたらしい。


「いくらなんでも性急すぎじゃろう。少し休んでいけばよかろうに」

「ちょっと色々あって疲れまして。癒されに行ってきます」

「ふぉっふぉっふぉ、最東へ向かうのもホワイト殿にとっては慰安旅行みたいなものか」

「別にそんな危ないところじゃないですよ。多分」

「何を言っておる。世界で最も危険な場所ではないか」


 クラウトレウス王国東部。

 大陸の最も東側。


 そこは世界一危険な場所として知られていた。


「大丈夫ですって。スープ辺境伯が守っているのですから」

「それはそうなのじゃが。大量の魔物が襲ってくると言われたら心配にもなるものじゃ」

「割と余裕はあるらしいですよ」

「ふぉっふぉっふぉっ、それはホワイト殿がリング・コマンドを教授したからじゃろう」

「それが無くても平気そうでしたけどねー」


 魔力の暴走が原因で大陸各地に出現する魔物。

 その数は少なく、一度撃破したら付近ではしばらく魔物が存在しなくなる。


 だが大陸東部だけは別だった。


 遥か東の荒野から大量の魔物が日夜襲ってくるため、人々は防衛線を張って対処している。

 スープ辺境伯領こそがその防衛を担い、人々を守るべく戦っていた。


 必然的に東に実力者が集まり、魔物と戦うことで経験を積み、歴戦の戦士だらけとなっているのがスープ辺境伯領だった。防衛線を突破して魔物が雪崩れ込んできたなんて話はここ数十年は聞かれない。いかにスープ辺境伯領が真っ当に職務を果たしているかが分かるというものだ。


「しかし戻るとなると、彼女に再会するかもしれないじゃろうが良いのかい?」

「彼女は魔法学園に通っているので戻ってくることは無いとは思いますが……いや、戻ってきますね」


 どれだけ秘密にしたとして、ホワイトが戻るという話を彼女が聞き逃すとは思えない。

 ホワイトが戻るのに合わせて、彼女も一旦学園を離れ実家に戻ってくるだろうとホワイトは容易に想像できた。


 というか、戻ってくることは無いとは思いますが、だなんて言いながら本当は絶対に戻ってくると思っていた。癒されに行くというのは、そういうことなのだから。


「一応考えがあります」

「ふぉっふぉっふぉっ、なら良いのじゃ」


 ロークスユルムでは色々と悩まされたが、日数はそんなに経っていない。

 サンベールで次の魔物が出現するのはもうしばらく後だろう。

 ロークスユルムが戦争を仕掛けなくなったことで他国は様子見となり、しばらくは攻められることも無さそうだ。


 サンベールを離れて遠くに行くなら今しかないし、早い方が良い。


 ロークスユルムでの話を聞きたい学園長には悪いが、さっさと準備を終えて旅に出よう。

 そう思って急ぎ準備をしていた時のこと。


 コンコン。


 ホワイトの部屋に誰かがやってきた。


「はーい。どうぞー」


 ゆっくりと開いた扉から入ってきたのは、ホワイトが受け持つクラスの生徒だった。


「チーズ君じゃないか。どうしたの?」

「あ、あの……ホワイト先生が戻って来たって聞いて、見て欲しいものがあるんです!」

「え?私に?」


 急いではいるが、生徒からそう言われれば作業の手を止めざるを得ない。

 旅支度を止め、しっかりとチーズに向き合って話を聞く。


「あ、ごめんなさい。お仕事中でしたか?」

「いやいや気にしないで。それで見せたいものって何かな?」

「その……外なんですけど……」

「分かった行こう。ということで学園長」

「うむ。ワシは部屋に戻るとしよう」


 ということでホワイトはチーズと一緒にグラウンドへと向かった。


 するとそこではパスタが待っていた。


「先生、お久しぶりですわ」

「ああ、うん、そうだね」


 生徒にお久しぶりと言われる教師はどうなのだろうか。

 いくら忙しいとはいえ、生徒を少し放置しすぎているのではと反省した。


 肝心の生徒達はフェンが色々と教えてくれているので大満足なのだが。

 尤もその満足はフサフサな意味でかもしれないが。


「それで私に見せたいものって?」

「ぼ、僕とパスタで新しい魔法を考えたので、感想を聞きたくて」

「新しい魔法?」


 魔法に詳しいホワイトが新魔法だなんて言われたら興味を持たない訳が無い。

 先ほどまで癒されたいと強く願っていた気持ちは何処に行ったのか、興味津々といった感じだ。


「ねぇチーズ。本当にやるの?」

「う、うん」

「恥ずかしいわ」

「(魔法を使うのに恥ずかしいってなんだ)」


 チラっと卑猥なことを考えそうになったが、教師に見せるというのにそれはないだろうと妄想を振り払った。


「さぁパスタ」

「う、うん」


 チーズとパスタは正面から向かい合って立ち、指を絡ませるように手を繋いだ。


「(ああ、そりゃあ恥ずかしいよな。好きな人が目の前にいて、しかもあんなに濃密に手を絡めるんだもの)」


 パスタは顔を真っ赤にしているが、チーズは魔法のことで頭が一杯なのかパスタの様子に気付かず集中している。ホワイトは新魔法よりもチーズの鈍感さの方が気になってきてしまった。


「それじゃあやるよ」

「う、うん」


 二人はその体勢のまま目を瞑り、集中する。

 パスタだけは集中があまり出来て無さそうだけれど良いのだろうか。


「リ、リング・コマンド。水」


 照れて茹で上がりそうなパスタがリング・コマンドを発動し、水属性を選択する。


「(あれ、チーズ君は何もしないのかな)」


 雰囲気的に魔法を合体させて発動するのかと思ったが、発動するのはパスタだけ。

 だとするとチーズには何の役目があるのだろうか。


「パスタ。良いよ」

「う、うん」


 チーズの合図でパスタが体内から魔力を取り出し、魔法に変換させようと試みる。

 ここまでは通常の魔法の使い方と同じだ。


 だがここからが大きく違った。


「んっ……」

「(まさかチーズ君がパスタさんの魔力を操作しているのか?何故?)」


 チーズの魔力がパスタの身体に入り込み、彼女の魔力と魔法を操ろうとしているではないか。

 しかしそれに何の意味があるのだろうか。

 魔法の使い方がまだピンと来ない人を補助するために魔力を動かしてあげることはよくある話だ。だがパスタは普通に魔法が使えるため、こんな補助的なことをする必要はない。


 訝しむホワイトをよそに、二人は魔法を完成させる。

 パスタの魔力を使い、チーズが発動する。


氷柱(アイスピラー)


 するとパスタの背後に高さ二メートルくらいの氷の柱が出現した。


「ああ、そういうことか!」


 それを見た瞬間、二人が何をやろうとしていたのかをホワイトは理解した。


「(チーズ君がパスタさんの魔力を使って、魔法を実体化(・・・)させたんだ)」


 チーズは精巧な魔法を発動し、実体化させることが出来る。

 それを他者の魔法を借りて実現させたのだ。


 氷柱は魔力という枷から解放され、本物の氷の柱となって立っていた。


「ど、どうでしょうか。これでもっと大きなものを実体化させられるようになったのですけど……」

「チーズ君」

「は、はい!」

「凄いじゃないか!」


 他者の魔力を使って魔法を放つだなど、面倒なだけで使い道は無いと思っていたが、チーズであれば話が別だ。元々チーズは威力や効果が小さい魔法しか放つことが出来ないため、それしか実体化させられなかった。だが他人と協力することで、様々な魔法を形にすることが出来るようになったのだ。


「(この短期間でこんな方法を考え付くだなんて本当に凄いな)」


 自分の力で何が出来るか試行錯誤するのが普通で、他人の魔法を具現化しようだなんて発想は中々に思いつかない。この頭の柔らかさは、魔法研究者に非常に向いている。


「(後で将来について相談してみよう)」


 だが今はそれよりも先に確認しておかなければならないことがある。


「だから言ったじゃない。あなたは本当に凄いことをやってのけたのよ」

「う、うん。えへへ」


 ホワイトに褒められて喜ぶチーズはパスタとイチャイチャしていた。

 聞きたいのはまさにそこだった。


「チーズ君、ちょっと良いかな?」

「は、はい」


 チーズをパスタから離し、肩を組んで耳元でひっそりと聞いてみる。


「パスタさんのこと、どう思ってるの?」

「え!?」


 そう質問すると、チーズの顔がみるみるうちに真っ赤になって行く。


「そ、そそ、それは、その、あの、僕は、その……」


 しどろもどろになってしまうが、顔の赤さを見ればどう思っているかなど一目瞭然だ。


「好きなら押し倒しちゃえ」

「何言ってるんですか!?」

「男は度胸が大事だって私の師匠が言ってたよ」

「で、でもそんな……」

「優しく、時に強引に。それが女心を惹き付ける秘訣だよ」

「そ、そうなんですか……?」

「師匠の受け売りだけどね」


 どうやらホワイトの師匠の中には、大分アレな人物が含まれているらしい。


「その調子だと、まだ付き合ってすらいないのかな?それはそれで楽しい時期かもしれないけれど、一つだけ忠告しておくよ」

「え?」


 別にホワイトはチーズの恋愛アドバイスをしたかった訳では無い。

 いや、その目的もあったのだが、メインは別だった。


「さっき使っていた魔法だけど、他の人が相手だと上手く行かないんじゃないかな」

「うん……」

「他人の魔力を使うっていうのは簡単なことじゃなんだ。相手から心から信頼されていること。自分の魔力を預けても大丈夫だと思われていなければ、ほんの僅かでさえも動かすことすら出来ない」

「だから他の人はダメだったんですね……ってあれ?」


 だがそれは逆に言うとどういう意味なのか。

 チーズの顔がまたしても見る見るうちに真っ赤に染まって行く。


「私からの話は以上だよ。お幸せにね」


 これ以上は無粋だとホワイトはその場を離れた。


 果たして『心から信頼してくれる大好きな女性』の元へ戻ったチーズは一体どうするのか。


 覗き見したい気持ちをぐっと堪えたホワイトは考えた。


「(やっぱり少しだけ皆の様子を見てから行こうっと)」


 学園で生徒達と交流を深めることはとても大事であると。







 おまけ


 そういえばチーズ君が生み出した氷の柱はどうしたのだろう。

 あのまま放置して溶けるのを待つのかな。


 などと思っていたホワイトだが、ひょんなことでその行き先を知ることになった。


「フェン、お前……」


 野性味など全く感じられなくなったフェンが、それを抱き枕に気持ちよさそうに木陰でスヤスヤと寝ていたのであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] あまり抱きしめると、せっかくのもふもふがぴちゃびちゃにw 他人にはそうアドバイスするけれど、ホワイト君自身はちゃんと押し倒しているのかなあ? w
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