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星とリングとハーレムと  作者: マノイ
第一章 はじまりは東から(仮題)

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19. 【ロークスユルム】せめて衣食住はちゃんとしようよ……

「ここがロークスユルムの王都か。なんというか……素朴だな」


 煌びやかで豪華な建物が乱立し、街はたくさんの商店と買い物客で賑わっている。

 なんてことは全くなく、質素な建物が沢山あるだけの、農村の延長線上ではと思える程度の街並みだった。


「あれが……城?」


 肝心の王城ですら木材で作った少し大きな建物というだけであり、周辺国家と比較すると古い時代にタイムスリップしたかのように思えてくるくらいだ。


「おりゃああああ!」

「負けるかあああ!」

「よっしゃ俺の勝ち!」

「もう一回!もう一回だ!」


 しかしその寂れた街並みとは対照的に、人々は活気に満ち、至る所で訓練をしている。

 貧乏で喘いでいるというわけでは無さそうだ。


「(情報収集と言えば酒場だけど……)」


 そもそも繁華街らしき場所が見当たらない為、どうやって探せば良いか分からない。

 仕方なくホワイトは近くで模擬戦をしている若い二人組に声をかけた。


「話を聞きたければ」

「俺達に勝ってから」

「「うぎゃああああ!」」


 などとお約束を終え話を聞いてみたが、彼らは何も知らなかった。


「酒場?そんなのあったっけ?」

「知らね。考えたことも無かった」


 明らかに成人している若い男性が、酒場の場所を知らないなんてことがあるのだろうか。

 もちろん酒が苦手な人物は一定数存在するが、訓練終わりに一杯なんて話は彼らの周りでも良くしてそうなものだが。


「二人はお酒は飲まれないのですか?」

「飲まないな」

「俺も」

「飲む暇あったら模擬戦するしな」

「そうそう」

「そ、そうですか」


 彼らにとって模擬戦は単なる訓練ではなく、趣味に近いものだった。

 飲むよりも気持ち良いこと、それが模擬戦であり戦争というのがこの国の常識的な感性だったのだ。


 せっかくなので、気になっていた街並みなどについても聞いてみることにした。


「もっと立派な家に住みたいとか、お金が欲しいとか、綺麗な女の人を彼女にしたいとか、そういうのって無いのですか?」

「家なんて寝る場所があればそれで良くね?」

「だな。金も飯食えて装備を直す分だけありゃ良いしな」

「女は好きだが、たまにで良いや」

「そうそう、戦ってる方が気持ち良いもんな」

「そ、そうですか……」


 三度の飯より戦好き。

 快適な生活より戦好き。

 酒池肉林より戦好き。


 あまりの価値観の違いに、くらくらしてしまいそうだ。


「(じゃあこの国が素朴なのは、そもそも衣食住に興味がほとんど無いからなのか)」


 粗末な城を見る感じ、その考え方は王族もまた同じなのだろう。

 王族といっても基本的に最も戦争で活躍した人物が王になるだけなので、『族』というより王個人という感じだが。


「(王が戦争のたびに代替わりするから、この国には貴族がいない。蛮族だなんて揶揄されているのは分からなくも無いが、略奪とかしないから少し印象が違うんだよな)」


 やはり戦争バカという表現が一番しっくりくる。


「(さて、価値観の確認はこのくらいにして、子供達の様子を見てくるかな)」


 この国の子供達は、幼い頃から『学校』に送られて『教育』される。

 その様子を確認しておきたかった。


 そこで酷い体罰などの残虐的な『教育』を行っているのなら、それを非難することで子供達を開放し、その子供達が戦争バカに育たなければ国は徐々に変わってゆくだろう。


「おおーすげー!」

「俺もタチウオみたいに強くなる!」

「私も強くなりたーい!」

「いずれ王様になってやるからな!」

「早く大きくなって戦争に行きてー!」

「(ダメだこりゃ)」


 子供達はすでに洗脳済みで、強くなりたいだの戦争に行きたいだのと目を輝かせながらそんなことを話していた。

 そして肝心の教育内容だが、決して戦争好きを強いるものではなく、活躍した人物の逸話を聞かせたり、強い人達の模擬戦を見せたりして、強さに『憧れ』を抱かせるやり方だった。

 しかも『戦争以外で他人を傷つけてはいけません』『戦争以外で他人には優しくしましょう』などと、『戦争以外で』という文言を取り除けば至極真っ当な教育をしていた。


「(どうしてこうなった……)」


 『好き』の方向性が戦争で無ければとてもまともな国家になっていたのではないか。

 その可能性が見えてしまったからこそ、ホワイトには単に滅ぼすだなんて選択肢はとれない。


 子供達が笑顔で模擬戦をする様子を苦々しい気持ちで観戦していたホワイトだが、その背後に人気(ひとけ)を感じて振り返った。


「よお」


 その人物は筋肉ダルマとでも表現したくなるほどに、全身が筋肉で覆われている、壮年の男性だった。何故全身筋肉なのか分かったかと言うと、上半身裸で短パンという露出過多な格好だったから。


「(変態かな?)」


 国によっては逮捕されそうな見た目のその男性は、獰猛な笑みを浮かべながらホワイトの身体をジロジロと見てくる。ここがロークスユルムで無ければお尻の心配をしてしまいそうだが、恐らくはホワイトの強さを測っているのだろう。


「へぇ、お前強そうじゃん。俺といっちょやらないか?」

「いえいえ、陛下に勝てるわけないので遠慮しておきます」


 その人物はロークスユルム王国の現国王ギュウニクであり、ホワイトはすぐにそのことに気が付いた。


「(町中をうろつき、模擬戦をふっかけるのが趣味っていうのは本当だったんだな)」


 スパイ入り放題のこの国では、あらゆる情報が外に漏れまくりだ。

 ゆえに国王の顔や動向や趣味嗜好についても事前に学習済みだ。


「(ヤキニク団長と気が合いそうだな)」


 実際、ニクギュウとヤキニクは戦争で何度もぶつかり、お互いに好敵手と思っている。


「なんだお前、外のやつか」

「え?」

「うちんとこなら喜んでかかってくるからな」


 戦争バカは勝てる勝てないなど関係なく、戦える機会があれば喜んで戦う。

 そうでない時点で、他国の人間であるとすぐに分かるわけだ。


「まぁ良いか」

「うわ!」


 そして他国の人間だろうが、容赦なく戦いを仕掛けてくる。

 突然殴りかかってきたニクギュウの攻撃をホワイトはバックステップで躱した。


「良い動きだ。やはり貴様強いな。相手にとって不足なし!」

「いやいや、勘弁を!」

「うるさい!」


 別にニクギュウが強すぎて危険というわけではない。

 ホワイトならば余裕で制圧できる相手だ。


 だがそれをしてしまったら大問題になってしまう。


「(次はお前が王だ。なんて言われちゃう!)」


 周辺国家から蛇蝎の如く嫌われているロークスユルム王国の王になってしまったなんて知られたら、ホワイトの印象は地に堕ち、そこから回復するにはかなりの時間を要するだろう。


 絶対に倒してはいけないのだ。


「ふん!ふん!ふん!おりゃあ!」

「だから、やめ、ましょう、って!」


 ニクギュウはやたらめったらに殴ってくるが、ホワイトはその全てを余裕で捌いて逸らした。


「ふふふ、やるではないか。血が滾るぞ!」

「滾らないで、落ち着いて、もう止めましょう」


 しかしホワイトの言葉は全く届かない。

 好戦的な表情を浮かべたニクギュウは、殴る蹴る以外の手段を取った。


「リング・コマンド!」

「マジかぁ」

「聞いて驚くな。俺はリング・コマンドにより三つの属性魔法を操れるようになったんだ!」

「わ、わーすごーい」


 相手がリング・コマンドの発見者であるホワイトだと知ったらニクギュウはどんな反応をするのだろうか。少し興味はあったが、面倒なことにしかならないのが確実だったため試すのは止めた。


「ここからが本番だ!覚悟しろ異邦人!」

「えぇ……」


 ホワイトのことを強敵と認識し、本気で襲い掛かって来そうだ。


「あ、へいか!」

「誰かと戦おうとしてる!」

「へいかー!がんばれー!」


 しかも騒ぎを聞きつけた子供達が、ニクギュウを応援し始めたではないか。


「(ああもう、やりにくーーーーい!)」


 こんなに注目されてしまったら、こっそり勝利して気絶させて無かったことにすることも出来なくなってしまったではないか。しかも憧れる国王が敗れたとなれば子供達をがっかりさせてしまう。


 こうなったらホワイトに出来ることはただ一つ。


「さようなら!」

「あ、おいコラ、逃げるな!」


 決して倒してはならず、かと言って説得も聞かない相手など面倒くさいの一言だ。


「ずるいぞー!」

「たたかえー!」

「ひきょうものー!」


 子供達のブーイングを背に、ホワイトは妙な敗北感と共にその場から立ち去るのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 王様になるの、一応考えはして否定したのかあ。 でも、国民の意識を変えられたら、あのアタオカ国を立て直したって、讃えられる可能性も微レ存w 今のこの世界も、スポーツとかの疑似戦争がなければ、…
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