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親友と心配

 そうしてひたすら黙々と作業を進めること小一時間。トールがちらほらちょっかいをかけてくるのを必死で受け流しながら、ひたすらに耐え抜いた。……本当にトールにはキレたくて仕方なかった。途中からは明らかに私の反応を面白がっていたとしか思えない。目がすっごく笑ってたし。


 ……まぁとにかく、やっと授業が終わってくれた。


 気疲れのせいで体がずっしりと重く感じられる。禄に作成後の説明も聞けていなかったような気がする。


 アリアとトールに挨拶だけして、教科書を抱えて教室を出た。


「今日はこれで終わりよね……」


私が取っているのは、魔法薬学と魔法応用学、そして魔法実技学だ。卒業前の最終試験も終わっているからそんなに授業が多くないのもあって、今日はこれでおしまいだったはず。


 寮に帰って今日渡された宿題でもするか、と思い、帰路につこうとしたときのこと。


「ティア!」


「わっ、アリア。どうしたの、さっき忘れ物でもしてたかしら?」


後ろから飛びついてきたアリアに訊けば、違う、と首を振られてしまう。


「何か、悩んでるでしょ。さっきの授業、様子がおかしかったから」


「……あぁ、ちょっとね……」


「ティアがよかったらだけど、相談あるなら聞くよ? ほら、私って平民出身だからさ、まだ話しやすいかなって」


気を遣ってくれるアリアに胸が温かくなる。親友相手に隠すようなことでもないし、悩んでいたからちょうどいいかもしれない。


「……そうね。なら少しだけ聞いてもらってもいい?」


公衆の場で話せる内容ではない、ということで私達は寮の私の部屋で話すこととなった。


「失礼しまーす」


「いらっしゃい。お茶でいいわよね?」


「勿論」


沸かした水をティーバッグの入った2つのカップに注ぐ。ローズヒップのものがアリアは好きだったような気がするから、ティーバッグはローズヒップのものにした。


「どうぞ」


「わーいい香り」


改めて、私もアリアと向かい合って椅子に腰掛ける。お互い、一口、お茶を飲んでから、アリアの質問攻めが始まった。


「でー、トールと何があったわけー? 告白でもされたの?」


茶化すように笑って告げた言葉に、黙り込む私。そして次の瞬間、慌て始めるアリア。


「……え、図星な感じ?」


「……まぁ、ねぇ……」


「え、でもティアにはあのバ……いや王子がいるのに?」


いくら政略でも、貴族ってそういうのルール違反じゃないの!? と目を丸くしてアリアは身を乗り出す。……バカ王子って言いかけたな。まぁ心の中では私もそう呼んでるし分かるけども。つい苦笑してしまう。


「そんな身を乗り出したりしちゃ危ないわよ。……そうね。でも、私ね、実を言うと、あの王子とは婚約解消したから……」


「……え? なんで?」


「……あのアイミヤと結婚したいそうで……」


「えー、あり得ない! そんなことするって、常識外れにもほどがあるじゃない!」


私も切実にそう思います。あんな奴が王になるのが不安でたまりません。その意で何度も頷く。


「まぁ、それはいいとして。……婚約しようって、言われたのよ。好きだった、って」


「なるほどね。……で、迷ってるって感じ?」


「ええ、まぁそういうことね……」


「トールと婚約するのは嫌なの? 貴族って、基本は恋愛じゃなくて政略のことが多いらしいし、まだ好感度が高い相手ならマシだって前言ってた気がするけど、生理的に無理、とか、そういう相手としては見れない、とか?」


「そうじゃないんだけど……」


煮えきらない返事に不審そうに私の顔を覗き込んで、アリアは首を傾げる。


「まぁ、さっきも顔赤くなってたしね。でも、ならどうして迷ってるの?」


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