22:完璧な帰結
「アンディ、こちらがソーニャ。今日から私付きの専属メイドにしてもらったわ。彼女が勇気を出し、リックの悪事を知らせてくれたの。おかげで大切な指輪を、すり替えられなくて済んだわ」
庭園に来てくれたアンディを、私は改めて応接室へ案内していた。
対面でソファに座る私達のところへ、お茶とスイーツを届けてくれたメイド。
それはソーニャだった。
「君がソーニャか。今回は勇気を出してくれて、ありがとう。ナタリーの大切な指輪が守られ、本当によかったよ。これからもナタリーのことを頼む」
「こちらこそ、恩情をかけていただき、ありがとうございます! このご恩は一生忘れません。これからナタリー様に、誠心誠意でお仕えします」
ソーニャは深々と頭を下げる。
「給金の件も、私の専属メイドになった分の手当てをつけるけど、それは明細を分けて渡すわ。なんとか貯金して、今後に役立てて頂戴ね」
「ナタリー様」
ソーニャは涙目になると、「別嬪さん。笑顔でいる方が幸運が舞い込むわよ」とブラウンがハンカチを渡す。これにはソーニャは驚きながらも「ブラウン様、ありがとうございます」と丁寧に頭を下げる。
するとブラウンは「御礼は……胡桃でいいわよ」「勿論ですよ。ブラウン様とパール様のおやつも持参しています」と、ソーニャは白のエプロンのポケットから、胡桃とキャベツの葉を取り出した。
「「わーい」」とブラウンとパールが飛びつく。
ソーニャはブラウンとパールのそばにしゃがみ、三人でおしゃべりが始まった。
一方のアンディと私は、お互いに目を合わせ、微笑み合うことになる。
「ナタリー、うまくいった? 俺は登場しない方がよかったかな?」
「大成功よ。アンディが来てくれて、良かったわ! だってこれでガッツリ、リリィからリックを引き離すことができるもの。それにカウンセリングや司祭と話すことで、弟の……リックの洗脳も、解けると思うの。どう考えても善悪の判断ができている状態ではないし、あの姿を見たでしょう? 身だしなみを大切にする貴族なのに。そうとは思えない状態。リックが今、身を置いている状況はおかしいと思うの」
アンディは紅茶を口に運び、同意を示す。
「この応接室に向かい歩いている最中、ナタリーはお茶会の様子を話してくれただろう。それを聞く限り、リックは……常軌を逸している。いくら家族であっても、指輪を偽物とすり替えるなんて、れっきとした犯罪だから。貴族は特権階級と言われるし、家族間の問題は家庭内で解決が多い。でも今回の件は、窃盗罪や詐欺罪に問える。そもそも道義的に許されることでもない。リックが事の重大さを認識していないところも……大きな問題だと思う」
「それはその通りだと思うわ。もしアンディがあの場に来てくれなかったら、父親がリックを一喝し、もしかすると『勘当だ!』となったかもしれない。でもそれでは抜本的な解決にならないわ。むしろ今のリックなら、勘当に大喜びしていたかもしれない。だって歯止めがなくなるから。さらにリリィに心酔したかもしれない」
それこそ勘当したら、リックの消息はつかめなくなり、私への嫌がらせがエスカレートする可能性もあった。私に怪我をさせるような事態にだってなりかねない。よってリックの心のリハビリを兼ねた幽閉が落としどころになり、正解だと思えた。
「ではベストタイミングで登場できたのか」
「まさに完璧だったわ」
「だけど今回の舞台を整えたのは、ナタリーだ。すごいと思うよ」
アンディに褒められた私は、なんだかメロメロになりそう。
ただ本当に。
うまく行ってよかったと思う。
そもそものきっかけは、ソーニャだった。
いつも私についている専属メイドの代わりで、私のところへ来てくれたソーニャ。
バスルームで初めて会話をした。
それまでは廊下ですれ違い、挨拶をする程度だった。
そのソーニャは、少し様子が変だと思ったが……。
何かおかしいと確信たのは、髪を乾かしてもらっている時だ。
他のメイド達がおしゃべりをする中、ソーニャだけが会話に入らず、黙々と私の髪の手入れをしている。何か考え事をしているようだった。
何をそんなに考え込んでいるのかしら?
もし深刻な悩みなら、助けてあげたい……と思ったら、魔法が発動していた。
そしてソーニャの置かれている状況が、分かってしまったのだ。
























































