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断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【続編】

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18:感動し、絶望しそうになる

 既にバスタブの中に入り、湯船につかろうとしているナタリー様に、慌てて声をかける。


「ナ、ナタリー様、指輪をつけたままです!」


「あ、あら、あなたまだいたの?」


 心臓が止まりそうになりながら、答えることになる。


「し、失礼しました! 背中を流す必要は?」


「あ、あなたペギーの代わりね。私、背中も髪も自分で洗うから平気よ。髪を乾かすのは手伝ってもらうけど」


 ナタリー様が優しく微笑み、私は心底申し訳ない気持ちになる。


「それと指輪ね。この指輪は金だから、外さないでいつも入浴をしているの。婚約指輪は宝石がついているから、部屋ではずしてあるわ。心配してくれたのね。あなた確か名前は……ソーニャね。気を遣ってくれて、ありがとう」


 この瞬間。


 ナタリー様の優しさに感動し、指輪を外さないと分かり、絶望しそうになる。


「そ、そうですか。では失礼します」


 そう答えてバスルームから出るしかない。


 まさか入浴中も外さないなんて。

 もしかすると指輪は、ずっと外さないのだろうか。


 部屋に戻ると、ドレスや宝飾品の片づけをしているメイドがいたので、思わず尋ねてしまう。


「ナタリー様は婚約指輪より、あのゴールドの指輪を大切にされているんですね。まさに肌身離さずで、絶対に外さないのでしょうか」


「そんなことはないと思うわ。たまに外されるけど、そのタイミングは不明なのよ。でも大切にしている。それはそうよ。大好きな婚約者からの贈り物ですもの。当然よね?」


 指輪を外すタイミングは不明……!

 それではすり替えなんて無理だわ。


 どうしたらいいのだろうか。


 私がマジシャンなら「指輪を見せてください」と外してもらい、うまく偽物とすり替えることもできたかもしれない。でもそんな技術は持ち合わせていないし、もし付け焼き刃で身につけても、緊張し、上手くはできないだろう……。


 そんなことを考えていると、ナタリー様の入浴が終わった。


 入浴を担当した私を始めとしたメイドは、髪を乾かす手伝いをするため、ドレッサーチェアに座るナタリー様のそばに駆け寄った。沢山のタオルと髪をケアする香油や蜂蜜などが用意されている。


 私以外のメイド、そして婚約者の魔術師の使い魔だという子ウサギと子リス、そしてナタリー様は談笑している。私だけが暗い表情でタオルでナタリー様の髪を乾かしていた。


 ナタリー様のブロンドは、とても美しい。日々のお手入れの賜物で、まるで高級な金糸のようだ。


 そこでふと思う。


 どうして私がこんなに苦しい思いをしなければならないのか。

 両親が姉をちやほやして、姉は姉でそれが息苦しい。

 それは両親と姉の間のことであり、私には関係がないことだ。

 というか、そもそも私はいつも蚊帳の外だった。

 リック様とそういう関係になったのも姉だ。

 姉の尻拭いを、なぜ私がしなければならないの……?


『一族が社交界から干されるぞ。そうなれば運営する商会にも当然、影響が出る。借金が重なり、爵位の維持も……難しいだろう』


 リック様はそう手紙で書いていたが、関係ないのではないか、私には。


 爵位がなくなろうが、そもそも私に爵位を継ぐ予定もない。

 それにここで得た給金の半分は、両親に搾取されている。

 両親が苦境に立ち、姉が恥を晒せば、この状況から脱することができるのでは?


 ミラー伯爵夫妻やナタリー様は優しい。

 姉の恥であり、リック様の恥で我が家が没落した場合。

 私をクビにすることはないだろう。

 そのまま行儀見習いを続けさせてくれる気がした。


 そうだ。


 このまま悪事に加担するのではなく、ナタリー様に全てを打ち明けたらどうなの!?


「さあ、髪はこれでいいでしょう。ナイトティーをご用意しますか、ナタリーお嬢様?」


「ええ、お願いするわ」


 いつの間にか手に持っていたのは、タオルではなく、ブラシだった。

 いろいろ考えごとをしていたが、意識することなく手を動かしていた。


「あ、ソーニャ。あなたは残ってもらえる?」


 これにはギクッとなってしまう。

 まだナタリー様に対し、何も悪いことはしていない。

 行動は何もしていないのに。

 ただいろいろと策略を巡らせただけで、悪いことをした気分になっていた。


 よって呼び止められたことで、何か咎められるのではないか。


 戦々恐々としてしまう。


「ナイトティーが届くまで、あちらのソファに座って、少し話しましょうか」


 淡いピンク色の寝間着姿のナタリー様が、ドレッサーチェアから立ち上がり、ソファへ向かう。私は「はい」と消え入りそうな声で返事をして、重たい足を引きずるようにして、その後に続く。


 もしやバレたのだろうか、悪事を企んでいたことに。


 挙動不審に……なっていたのか。


 自問自答しながらソファに座った。


 ローテーブルを挟み、対面のソファに座ったナタリー様は、慈愛に満ちた表情をしている。

 私はまるで最後の審判を待つ罪人のように顔が青ざめていたと思う。

 そんな私にナタリー様が問い掛けた。


「ソーニャに聞きたいことがあるの。ソーニャも私に、何か聞きたいことがあるのでは?」

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