2:朝の幸せな習慣
アンディとの星空の遊泳散歩を終え、家に戻ると、すぐに眠ることになった。
お腹は満腹。
星空も満喫。
全て満たされているけれど。
もう少しアンディと恋人……婚約者らしいこともしたかった。
あの魔法で用意されていたラタン製のソファに座り、星空を眺めているだけだったら……。
もしかしたら、頬にチューぐらいされたかもしれないのに……!
星空遊泳散歩のために、アンディに抱き上げられていた。
でもそれは落ちたら一大事!ということもあり、私も真剣に抱きついていたのだ。
ドキドキしたけど、あれは落ちたら怖い~という方でのドキドキだった。
そして星空の中に到達してからは、感動でいっぱいでドキドキしていた。
でも既に来年には結婚が決まっている。
結婚したら王都でも一緒に暮らせるし、きっとラブラブという感じになるはずよ。
ということで眠ることにしたのだけど……。
翌朝。
ぐっすり眠っていたが、なんだか気配を感じた。
それは気持ちのいい秋の風と陽射しだ。
昨晩、ちゃんと閉めたはずの窓が開いている……?
「うん……」
寝返りをうち、今、何時かしらと時計を見るつもりで薄目を開けたところ!
私の瞳に飛び込んできたのは、清々しい顔立ちだ。
髪の色はアイスブルー、瞳はラピスラズリ。鼻梁が通り、薄紅色の綺麗な形の口をしている。肌艶も良く、目覚めた瞬間に拝める顔としては最高のもの……ってアンディ!
「おはよう、ナタリー!」
アンディが朝から爽やかな笑顔となり、「アーリー・モーニングティーを入れたから!」とミルクティーを差し出された。
そうだった!
この家に戻ると、アンディがアーリー・モーニングティーを入れてくれるのが習慣になっていた!
つい熟睡し、忘れていた。
「ありがとう、アンディ」
上半身を起こし、ミルクティーを受け取る。
アンディは丸椅子を持ってきて、そこに腰掛けると、長い脚を組む。
目覚めで見る顔がアンディって……眼福だわ。
一気に気持ちが盛り上がりながら、ミルクティーを口に運ぶ。
淹れたてで美味しい!
自身もミルクティーを口に運びながら、アンディはこんなことを話しだした。
「昨晩、ちょっと考えてみたんだ」
首を傾げると、アンディは少し上半身を乗り出し、私の鼻をツンと指で押す。
「ナタリーのその首を傾げる顔、俺、すごく好きかも」
なんの心構えができていない状態で、まさに不意打ちで言われた言葉に、朝からキュン死そうになっている。でもアンディは、自身が私をキュン死させていることに気付かず、話を続ける。
「マーランの天球儀。彼の魔法はとても正確なもの。昨日の夜に今日の天体の運行を示すなんて、あり得ないと思った。しかも“この星の輝きの導きに従うべし”という星言葉を持つアルテラスという星が、天に昇ってしばらくした場所で止まる。これは何かがあるかもしれないと思ったんだ」
そこでアンディが分析した結果。
アルテラスの星が実際に天に昇った時の座標、そこから真下になる場所はどこか調べたのだ。
そこでアンディがまたも手を伸ばすと、その手には巻物を掴んでいる。
魔法で呼び出した巻物を、するすると広げると、それは地図だ。
「ここなんだ」
「!? これってザロックの森?」
「そう。昨日も見下ろすことになった湖を挟んだ向こう側の辺りなんだ」
ミルクティーを飲みながら、アンディに尋ねる。
その辺りに何があるのかを。
「実は千年以上前に放置された廃墟……修道院がある。人里離れた森の中は、祈りの場として、また修行の場として、最適だったんだろうな。でも石造りのそれは、もう緑の蔦で覆われ、一見すると小さな森のようにしか見えないかもしれない」
「ということは、もしかするとその廃墟の修道院に、何かがあるかもしれない……ということ?」
アンディは「その可能性がある」と言ってから、腕組みをする。
「ただ、何があるのかは全く不明だ。マーランについてはいろいろ調べたけど、ザロックの森との関わりなんて、ないと思うんだよな。ザロックの森からかなり離れた村の出身だったけれど」
「本当に関わりがなかったのか。現地に行って確認するのはどう?」
「そうだな……ナタリー、俺と冒険する?」
「お、いいね。冒険。その冒険、私もぜひ混ぜってもらっていいかな?」
ひょっこり窓から顔を覗かせたのは、ディーン!
ダークブロンドにコバルトグリーンの瞳。柔和な顔付きで、微笑みに慈愛を感じる。長身だがしっかりとした体つきで、細マッチョなアンディに対し、ディーンは見て分かる偉丈夫。でもゴリマッチョではないので、しっかりハンサムと思えた。
白シャツにアンティークグリーンの薄手の上衣を羽織ったディーンは、窓から籠をこちらへと差し出す。
「朝食を一緒に食べようと思って、持って来たよ!」
「ありがとう、ディーン! これはすごい! オイルサーディーンのサンドイッチ、卵サンド、カツレツサンド、フルーツ……これならすぐ朝食だ!」
「使い魔の分もあるから、みんなで食べよう」
オルドリッチ辺境伯の息子であるディーンは、アンディより五歳上。アンディにとっては兄のようであり、親友であり、時に人生の師であり。二人はとても仲が良い。
週末にこの森に戻ることを知っているディーンは、サプライズで会いに来てくれたのだ!
私は急いで身支度をして、フランボワーズ色のワンピースに着替えると、みんなが待つリビング兼ダイニングルームへ向かった。
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