始まり
SSから続くお話です☆彡
アンティークの香水瓶や魔術書を屋敷に置くと、ザロックの森へ向け、即出発だ。
出発……と言ってもアンディの魔法で移動なので、あっという間だ。
「よぉ、みんな、ちゃんと留守番していたか!」
「ああ、パールだ!」「ブラウンだ!」
「アンディ様~」「ナタリー様!」
ザロックの森の家で留守番してくれていたもふもふ達、子犬、子猫、子ぎつねたちが一斉に玄関に集結する。
みんな、アンディの使い魔たちだ。
一部は王都へ連れて行っているが、残りはこの森の中でお留守番生活を続けていた。
でも金曜日の夜から月曜日の朝までは、主であるアンディと過ごせる。
もふもふ達は我先にとアンディに飛びつき、全力で甘えている。
古参のパールやブラウンより、まだ新人らしいもふもふ達は、アンディに甘えたい盛りのようだ。
ちなみに真っ白な子猫の姿のマシュマロは今回、王都でお留守番。
マシュマロは意外にも事務仕事が得意なようで、アンディが許可した決裁書類に、サイン代わりに判を押すことを請け負っていた。
この土日は留守番しながら、たまりがちな書類仕事をアンディの代わりにやるというのだから、実に有能な使い魔だ! ただし、その対価としてキャビアを要求したというのだから、そこは抜け目ない。
「「「「アンディ様~」」」」
「分かった、分かった、熱烈歓迎、ありがとう。早速だが、俺は腹ペコなんだ。ナタリーも」
「「「「それは大変~!」」」」
「アンディ様にご飯を作ろう!」
「ナタリー様にご飯を作ろう!」
もふもふ達は一斉にキッチンへ向かう。
森の家の管理を任せたところ、留守番もふもふ達は完全に自給自足生活をマスターしていた。主であるアンディがいなくても、料理も作れれば、菜園も楽しそうに管理している。
「どれどれ。先輩が料理の味見をしてやろう」
「わ~い、パール、食べて、食べて!」
「おい、パール、味見と称して食べ過ぎるなよ」
「ぎっく! わ、分かっているよ、アンディ!」
パールはキッチンへ向かい、アンディは「俺は風呂の用意でもするか」と言うと、私を見る。
「私はこのトランクの荷解きをしちゃうわ」
「あたしも手伝うわよぉ~」
「ありがとう、ナタリー、ブラウン、助かるよ」
この森の家には、必要な物がほぼ揃っている。
よってアンディと私の所持品は、トランク一つにまとめていた。
中に入っているのは、もふもふ達へのお土産のお菓子が中心だ。
ということでトランクを開け、キッチンにいるもふもふ達にバレないよう(サプライズにするため)、棚の中にお菓子を片付けていると……。
天球儀の入った木箱が出てきた。
私がアンディにプレゼントした、あの天球儀だ!
「ブラウン、見て。アンディったら、天球儀、わざわざ持って来たみたい!」
「ふふ。森の方が王都より、星が綺麗でしょう。だからこの天球儀で今晩の星の運行を見ながら、星空を一緒にナタリーと眺めるんだって、アンディが言っていたわよぉ~」
これには「本当に!」と嬉しくなってしまう。
アンディは時々、驚くほどのロマンチックなことをしてくれる。
例えばこんな風に。
魔法で湖の真ん中にドーム型のガゼボ(東屋)を出現させ、そこで二人でダンスをしたのだ。夕焼けから夜の帳が降りるまでの時間を使って。
それはまるでおとぎ話のようで。
大好きだったプリンセス映画の世界のようであり。
私は涙をこぼすぐらい感動したのだ。
今晩も素敵な夜を過ごせそうね。
平日のアンディは、王宮付きの魔術師として本当に忙しい。
仕事終わりにのんびりデート……なんて無理だった。
その代わりで金曜日は、前世で言うならまさに“ノー残業”。
そこからはたっぷり私と過ごす時間を大切にしてくれる。
「ナタリー、お風呂を沸かしたから、食事の前に済ませるといい」
「ありがとう、アンディ。ではお言葉に甘えて」
「あ、食事の後、少し出掛けたいんだ。寝間着ではなく、ワンピースに着替えて」
「分かったわ!」
こうして私は入浴すると、ピオニー色のワンピースに着替える。淡く優しい色合いのピンク色は、清楚で気に入っている色だ。さらに! ピオニーの香油も使ったので、なんだか自分がその花になった気分だ。
私の次に入浴を終えたアンディは、自身のアイスブルーの髪に合わせたセットアップを着ている。アンディの瞳はラピスラズリを思わせるので、その装いはとっても似合う!
声も爽やかで、顔立ちも清々しく、肌艶も良い。
森での自給自足の生活が長かったから、体も引き締まっており、スタイルもいいのだから……正直、何を着ようとも素敵なのだけど!
「よし。みんなで食事だ」
デーブルにはもふもふの使い魔達が作ってくれた料理が並んでいる。
サラダ、スープ、キッシュ、魚料理、肉料理、フルーツ。
食欲を刺激する香りが漂い、お腹が鳴りそうだ。
「みんな、食事を用意してくれてありがとう。では、いただきます!」
「「「「わーい! いただきます~!」」」」
みんなで食べる、森の我が家での夕食タイムが始まった。
























































