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断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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4:なぜ彼はここに?

「え、何!? どうしたの!? 狙っていた魚にでも逃げられた?」


「……いや、狙った魚は全部捕まえたよ」


アンディは魚がたっぷりつまった籠を、地面にドカッと置いた。

一番上にのった魚が飛び跳ねている。


「それより、パールと街や村の話をしていたみたいだけど」


「ええ、そうね。地図を見る限り、村や街なんてなさそうだったから」


「村や街へ行きたいのか……」


村や街へ行きたいか?

行きたい……と思ってしまうのは、そこに自分がこれまで暮らしていた文化水準に近いものがあるからだろう。

でも。

行ったところでどうなるのかしら。

アンディの鬼畜ぶりに怯えた際、真っ当な大人に助けを求めようと考えた。

それこそ一番危険だと、冷静になった今なら理解できる。

もし名前を名乗れば、すぐに照会され、国外追放の身であるとバレてしまう。


ここは森の中のポツンと一軒家であるが、乙女ゲーム『愛され姫は誰のもの?』の舞台であるマルセル国の領土内だ。本来、私はここにいることは許されない。


つまり、村や街へ行きたいか?


答えはノー。村や街へは行けない。むしろ近づくことは危険なはず。


「別に村や街へ行きたいわけではないわ。……むしろアンディはどうしてこの森に留まっているの? なぜ村や街で暮らさないの?」


「どうなのかな。俺が森に捨てられてもう十年以上経つ。とっくに死んだと思われているから……村や街で暮らしても……大丈夫なのかもしれない。ただこの森がもう俺にとっての家みたいなものだから。離れがたいのかな」


死んだと思われている……。

それはつまり、死んでも構わないと思われ、この森に捨てられたということだろう。


一体、どんな理由があって、アンディはこの森に捨てられたのかしら……? 気になるが、パールは教えてもらっていないと言っていた。プライバシーに関わることだし、本人が話したいことではない可能性も高い。気になるが、私からは聞けない。


「そうなのね。でも助かったわ。私こそ、今、村や街で身分がバレたら、大変なことになるから」


「……! そうだよ、ナタリー。森にいたら安全だから」


なぜか嬉しそうに微笑むと、アンディはドカッと地面に腰をおろす。


「ナタリー、魚は捌けるか?」


「えええ、それは流石に。……それになんだかグロテスク」


「命をいただくんだ。グロイとか言っている場合じゃない」


その後は。

アンディの指導の元、魚の捌き方を習った。

まさか乙女ゲームの世界に転生し、悪役令嬢として断罪された後に、魚の捌き方を習うなんて。ホント、驚きだった。



アンディの家で目覚め、自給自足の生活をしながら過ごして、一週間が過ぎた。


すっかりこの家での生活にも慣れている。

アウトドアが得意だったわけではない。

ただ、ソロキャンプも面白そうとたまに動画を眺めていたこともあり、大自然の中の生活を思いのほか楽しく感じていた。


ちょっと前までは伯爵令嬢として、ドレスを着て、おしとやかにしていたのに。それがなんだか嘘みたい。


何より、アンディが私の傷ついた体を癒してくれた時に。かなり体が健康になったようで。長時間森の中を歩き回っても。薪割をしても。足腰が疲れることもないのだから。


それにしても。

すっかりこの家に馴染んでしまった。

でもあのブレスレットでどれぐらいの滞在が許されるのかしら? ゴールドに宝石が使われたものだから、それなりの値段はすると思う。三ヶ月ぐらいは許されるのかな?


いずれ追い出されたら、どうやって生きて行こう。

この一週間、アンディと過ごすことで、森の中で生きる術はかなり覚えたと思うのですが。もしこの家から出ることになったら、洞窟で自活する……とか? できれば家が欲しいけれど、さすがに魔法も使えないから、家を建てるのは……。あ、魔法でアンディに家を建ててもらえばいいのか。でもそのためには……対価が必要。


私には……もう何も残っていない。家を建ててもらうのに、どれだけのお金が必要だろう? あ、そうだ。髪。このブロンドの長い髪はかつらに使えるだろうから、売れるはず。フロスティブルーのワンピースの上で揺れる自分の髪を改めてみる。痛みもなく、美しい。


そうだ。いざとなったらこの髪を売ろう。そしてなんとかお金を得て、あとは……。


「ナタリー!」


勢いよくドアを開け、アンディが家の中へと入ってきた。

私は昼食の片づけをしていたが、アンディは仕掛けた罠にかかった獲物がないか見に行っていたはず。


アンディの服を見る。白シャツに黒いズボンに足元はブーツという姿だが、獣と接触したようには見えない。代わりに手に抱えている籠を見ると。そこにいっぱいに入っているのは……。


「これ、アプリコットね」


「そう。丁度食べ頃だったから。いつも乾燥させて、保存食にしている」


「なるほど。……ドライフルーツにするのもいいけど、ジャムにしたら? 甘酸っぱくておいしいわよ。パンケーキやパンにつけたり、パウンドケーキにいれて焼いたり。アンディは魔法を使ったら甘い物を食べたくなるのでしょう? 丁度いいと思うけど」


私の言葉にアンディの瞳が輝く。


「そうか。ジャムか。作ったことがないけど……ナタリーは作れるのか?」


「ええ。ジャムなんて簡単よ」


「じゃあ、ナタリー、アプリコットでジャムを作って。俺は庭でイノシシを捌くから」


……! イノシシが罠にかかっていたんだ。そしてそれを仕留めていたのね。さらにこれから捌くと……。森の中で生きていくなら。イノシシぐらい捌けないとダメよね。


「どうした、ナタリー?」


「ううん、何でもないわ。半分はドライフルーツにしましょう。半分はジャムにして。ジャムは保存もきくから」


「うん。それで明日だけど、ディーンが来るんだ。さっき手紙が来ていた」


アンディとディーンは伝書鳩を使い、手紙のやり取りをしている。どうやら鳩が来ていたようだ。そしてディーンがどんな人物であるかは、初日の夕ご飯の席で、既にアンディから聞いていた。


「話を聞いた時から会ってみたいと思っていたわ。楽しみね」


「……ナタリーも会ってくれるんだね?」


「あ、ええ、もしアンディが嫌でなければ。むしろ私なんかと知り合って、迷惑にならないかしら」


するとアンディはアイスブルーの髪を揺らし、朗らかに笑う。

こういう時のアンディは本当にイケメン。

というか。

初日に散々鬼畜アンディを見せられたが。

それ以降、アンディが鬼畜発言をすることはない。

あのブレスレットによっぽど価値があり、現状、何かあっても、これ以上対価の要求は不要ということなのかしら?


「ディーンはとってもイイ奴だよ。何せ咎人扱いの俺にも優しくしてくれたし、いろいろと庇ってくれたから。ナタリーも気に入ると思うし、ディーンもナタリーを気に入ると思う」


それは分かる。

パールからも話を聞いているから。

会ったことはないし、パールとアンディから話を聞いたに過ぎないけれど。ディーンがイイ人だということは、十分に伝わってきていた。


それよりも。

咎人扱い。

アンディは何か罪を犯したのだろうか……? 実はシリアルキラーとかだったりして……。

イノシシを捌くアンディが、怖い姿で脳裏に一瞬浮かんでしまう。


いや、それはないでしょう。

もしそうであるならば。既に私は殺されているはず。

何より。

河で見つけた瀕死の私を助けるはずがないのだから。


「私もディーンのこと、気に入る予感がするわ。今からディーンに会うのが楽しみ」


「良し。明日のディーンのために、頑張ってイノシシを捌くぞ!」


アンディは嬉々として庭へ向かう。

私はアンディがテーブルに置いていったアプリコットの籠を、洗い場へと運んだ。

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