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断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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43:強硬手段

翌日も順調に進み、旅籠で一泊した。


この旅籠は王都にも近い場所にあるため、前日に泊った宿より、いろいろとスケールが大きい。一階の食堂も広いので、夕食はみんなとワイワイガヤガヤと過ごすことになった。


ただ、やはりスチュ王太子とその騎士は別の旅籠に滞在している。だから勿論、夕食は別々だった。


「ナタリー、もういいのか?」


「うん。もうお腹いっぱい。少し部屋でお腹を休めたら、お風呂に入るわ」


「そっか。今日もお疲れ」


アンディに手を振り、二階の自分の部屋へと向かう。


アンディもそうだが、オルドリッチ辺境伯も彼の騎士も、みんなまだ一階で夕食を楽しんでいる。にぎやかな一階に対し、二階に着くと、廊下は明かりが少なく、ガラリと雰囲気が変わった。


鍵を開け、部屋の中に入り、ランタンをテーブルに置いたその時。


「……!」


突然、口を手で押さえられ、背後から抱き寄せられた。

驚いて体を動かし、足が何かにぶつかりそのまま私だけ床に倒れ込んでしまう。


何に躓いたのかと思い、見て見ると、床には兜が転がっている。

さらに床に手をつき、顔を上げると、そこにいたのはスチュ王太子だ。


甲冑は着ていないが、鎖帷子を着ていた。


兜を被り、騎士のふりをして、私の部屋に忍びこんだの!?


声を出そうとした私の口を、馬乗りになったスチュ王太子が押さえた。必死にその腕を両手で掴み、はずそうとするが、敵わない。


「ナタリー、君はわたしの婚約者だ。なんでアンディと屋根で寛いだりしているんだ?」


押し殺した声でスチュ王太子に言われ、もう訳が分からなくなる。


私はもうスチュ王太子の婚約者じゃない。

なんでしつこく私につきまとうの?


「どうしてもアンディがいいと言うなら、わたしも強硬手段に出るしかない」


スチュ王太子の手が胸に伸び、恐怖で目をつむると。


「スチュ、止めておけ。腕を切断するぞ」


アンディ……!


「一度、ナタリーをさらわれている、お前に。二度目を俺が許すと思うか?」


見上げるスチュ王太子の顔は、ランタン一つの明かりしかないので分からないが、恐らく蒼白であろうと思えた。


「もう明日には王都に着く。余計なことはするな」


「うるさい! わたしは王太子だ! 王族に盾つくつもりか?」


「スチュ、それは聞き飽きた。相手が王族だろうと関係ない。俺の大切な者に手を出すなら、容赦しない」


スチュ王太子の手が口から離れた。

アンディがスチュ王太子の首に自身の腕を回している。


「……! や、やめ……」


スチュ王太子はアンディの腕を掴むが、既にその手に力はない。

それどころか、その手は糸が切れた人形のように、突然力が失われた。


「アンディ、大丈夫か!?」


部屋に何人もの騎士が入ってくる。


「スチュ王太子がナタリーを襲おうとした。気絶させたから、隣の旅籠の彼の部屋まで運んでもらいたい」


「!? あっちの警備はどうなっている?」


騎士達は騒然となり、バタバタ駆け出す者、スチュ王太子を運び出す者、慌ただしく動き出す。


「ナタリー、大丈夫か? 怪我はないか?」


アンディが体を起こしてくれた瞬間。

堪えていた恐怖でその胸に抱きついていた。


もう、スチュ王太子は本当に嫌だった。

彼の婚約者を10年以上やっていたことが自分でも信じられない。


もう顔を見るのも、声を聞くのも、触れられるのさえ、嫌になっていた。


「ごめん。ナタリー。もっと早く駆け付ければよかった」


私は首を振り、「そんなことはない」と示す。

床に倒れた時。

物音がしたはずだ。

でも一階は、皆で大声で騒いでいた。

私の立てた物音に気付かない可能性も高かった。

でもアンディはちゃんと気づいて助けてくれたのだから。


「こんなに震えて……。怖かったよな」


ぎゅっと抱きしめられると、守られていると感じ、バクバクしていた心臓が次第に落ち着いてきた。


騎士が代わる代わるアンディに声をかけ、アンディはそれに答えているが、その会話は次第に耳に届かなくなる。


私の耳に届くのはアンディの心音だけだ。

最初は私と同じぐらいドキドキしていた。

でも今は規則正しく鼓動していると分かる。


ついアンディを頼りたい気持ちになってしまう。


でもこの胸で守られるのは、本当は私ではない。

それは分かっている。

ただ、今だけは……。

神様、お願いします。

あと少しだけ、この胸に身を寄せることを許してください。


ぎゅっとアンディのシャツを握りしめていると。


「アンディ、すまなかった。王太子は自身を護衛する騎士と入れ替わり、兜を被って顔を隠し、この旅籠に入り込んだようだ。王太子の騎士がこの旅籠に近づくことも、入ることも禁じ、表と裏口に警備の騎士を配置した。スチュ王太子の部屋がある廊下にも騎士を配備し、彼の騎士には兜を外すよう命じたから」


オルドリッチ辺境伯の声に顔を上げる。


「ナタリー嬢。君には怖い思いをさせてしまった。本当に申し訳ない。君の部屋にも警備の騎士を配備した。廊下に2名の騎士が朝まで寝ずの番で警戒するから、安心して休んで欲しい」


「……! そ、そうなのですね。それは……恐縮です。ありがとうございます」


「ナタリー、これから入浴だろう? 俺がバスルームの入口で見張るから」


「ありがとう、アンディ」


私は元伯爵令嬢。でも今は、国外追放されているのに、ちゃっかりマルセル国に居座る断罪された人間だ。寝ずの騎士の護衛やアンディに見張ってもらうだけの価値が自分にあるとは思えない。


それでも。

申し訳ないと思いつつも。

スチュ王太子が怖かった。


さすがにみんなにあっさりバレた。そしてガッチリ見張られている。だからもう今晩、悪事を働くことはないと思う。それでも心配だった。またスチュ王太子がやって来ないかと。よって今は、皆様の厚意に最大限甘えさせてもらうことにした。


ただ……。


入浴を終えた後、アンディはこんなことを言い出した。


「俺、ナタリーの部屋の床で寝ようかな」


これにはもうビックリ。

要人の警護につく騎士だって、床で寝て護衛対象を守る……なんて聞いたことがない。アンディの今の提案は、さすがにやり過ぎ。それに廊下で警備の騎士がついてくれる。もうそれで十分だった。


アンディは、元は王族で、王太子だった幼少期だってあるのに。それなのに本当に私のためにそこまでしてくれることに、申し訳なく思ってしまう。


ということでアンディの有難い提案は丁重にお断りし、入浴後はすぐベッドに潜り込んだ。

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[一言] もう顔を見るのも、声を聞くのも、触れられるのさえ、嫌になっていた。 ナタリー様 なんてお優しい(T_T) 私ならもう触れられるのなんて論外、もちろん顔を見るのも、声を聞くのも嫌です…という…
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