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断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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36:心臓がトクンと高鳴る

「アンディ、何を言っているの? 確かにアンディと私はかつて婚約するために出会ってはいたけれど……。私はスチュ王太子の婚約者になってしまった。その後、アンディと私は別々の人生を歩んでいたのよ。その中で、私に不幸な事態が起きた。でもそこでアンディが責任を感じる必要はないわ。アンディのせいで断罪されたわけではないのだから!」


「ナタリー……」


「それに私は……アンディ、何もしていないわ、あなたに対して。アンディは私のことを覚えてくれていた。でも……私は全く覚えていなかった。だからね、私のおかげ、なんて思う必要はないわ。アンディ自身の頑張りで、今日までこれたのよ! 何より私はちゃんと生きているから、駆け付けるのが遅くなったからと、自分を責めないで。私は助けてくれたアンディに心から感謝しているわ。もっと早く来てくれれば、なんて一度も思ったことないから!」


しばしアンディと私は見つめ合う形になった。先に視線を逸らし、困ったように頬を赤くしたのは……アンディだ。


「どうして……何もしていないと思うんだ、ナタリー?」


「え?」


「俺は……絶対にもう一度ナタリーに会いたいと思ったから、辛いこと全部に耐えてきた」


なるほど!

アンディは、誰かにもう一度会いたいと願うことで、困難な状況を生き抜こうとした。

その誰かを誰にするのか。

そう考えた時……。

両親から見捨てられた。

周囲にいる家臣も、誰も彼を助けなかった。

当時のアンディの周囲に、信頼できる人間はいない。

だから私にもう一度会うことを目標に、生きる気力にしたのかしら?


ただ、私だって当時、何もしていない。

しかも一度会ったきりよ。

それで私のために頑張るの……?


う~ん、分からないわ。


キョトンとする私の顔を見て、アンディはため息をついた。


「ナタリーって……もしかしてものすごく鈍感?」


「!? 鈍感かどうかなんて、本人に聞くこと!?」


アンディは赤い顔ではなくなり、今度は心底「困った」という顔になった。そうなると……私はどうしていいか分からなくなる。


お互いに困り切った顔をしていたが、アンディがクスッと笑い、伸びをした。そしてまだ困り顔の私の頭に、ぽんぽんと優しく手で触れる。


「帰ろうっか、ナタリー。森に戻ったらやること盛沢山だ」


「う、うん。……なんだかごめんなさい」


「なんであやまるの?」


「……鈍感だから」


私の答えを聞いたアンディは、吹き出して笑った。

これはどういうことなのかしら?


「あやまる必要なんてないよ。……とにかくナタリーが無事でいてくれてよかった。ちゃんと森には俺達の帰る場所も残っている。だから大丈夫だ。帰ろう」


そう言ってアンディは当然というように手を差し出した。その手はエスコートする時の差し出し方ではない。これは……。


考え込んでいると、アンディは私の手を握った。


……!


手をつなぎ、アンディと私は歩き出していた。


な、どうして手をつないでいるのかしら!?

友達同士で手をつなぐって……女子ならまだしも、この年齢でもしたりするもの!? 男女で!?


でもアンディは一切照れる様子もなく、手をつなぎ、そしてディーンの執務室に向かっている。


私はもう、心臓がとんでもなく反応し、気が気ではない。ディーンの執務室の扉についてようやく、アンディが手を離してくれた。


森へ帰ることをアンディが話すと、ディーンは「これを持っていくといい」と言って、麻袋を示した。その麻袋には森が燃えたことで失ったであろう食料が詰め込まれていた。野菜、果物、干し肉、蜂蜜などだ。


アンディは驚き、その場で魔法を使い、森の様子を確認したところ、畑やミツバチの小屋、川のほとりの小屋などは燃えていなかった。だからこんなに食料をもらわなくても大丈夫だとアンディが言うと……。


「陣中見舞いみたいなものだよ。二人が食べないなら、使い魔達に食べさせるといい」


太っ腹ディーンにアンディと私は、何度も御礼を伝える。そしてアンディと手分けして麻袋を持ち、魔法であっという間に森に戻って来た。


森は……。

ヒドイ状態だった。

家の周りは、花壇の花はすべて焼け落ち、芝も全部燃え落ちていた。周囲の木々もほぼ焼け焦げ、木炭状態だ。唯一、魔法で守られていた家とニワトリ小屋は無事だった。


スチュ王太子達はこの家から森の外へ出て行く道中で、火をつけて下っていたようで、家から河の方へ下る方角の森が焼け落ちていた。


「ナタリー、大丈夫。木々の再生には時間がかかるけど、すべてを失ったわけではないから」


それは勿論、アンディの言う通りだと思う。

でも森がこんな風に燃やされることになったのは……アンディが私を助けたからだ。


幼い頃に一度だけ会っただけだったのに。婚約者になる予定だった私を、アンディは覚えていてくれた。そしてとても義理堅いからだろう。カマキリから救った、ただそれだけの恩しか私にはないのに。断罪された私を、アンディは助けてくれた。


その結果がこれだ。

もし私を助けなければ、こんなことにはならなかった。


「アンディ、ごめんなさい。私を助けたから、アンディの大切な森が……こんな風に……」


涙がどうしたって次から次へと溢れてくる。


「ナタリー、泣くなよ。こうなったのはナタリーだけのせいじゃない。俺がもっとよく考えて、ブレスレットとネックレスを換金すればよかったんだ」


アンディはそう言うと、いつも私が泣いた時にそうするように。自分の胸に私を抱き寄せる。


「あのネックレスとブレスレットに使われていた宝石。あれは俺が取り寄せたものだった。婚約者になるナタリーに贈るアクセサリーを作るために。……宝石には魔法がかけられていた。子供だった俺はまだ魔法なんてよく分かっていなかった。ただ、ナタリーに何かあったら知らせてくださいって、その宝石に願っただけだ。でも俺の祈りは魔法として、あの宝石に作用していた」


これには驚いて、思わず涙が止まり、尋ねてしまう。


「魔法を使うためには詠唱が必要でしょう? 呪文を唱えずにそんなことができたの?」


アンディは私の頭を撫でながら、優しく答えてくれる。


「どうやら俺が強く願うと、体内を巡る魔力に作用するみたいなんだ。呪文を唱えずとも魔法が作用する。勿論、生半可な願いではダメだけど」


これには驚きだ。「それはすごいわ」と感心する私に、アンディは静かに話を続ける。


「まさか俺の魔法が込められたその宝石で、ブレスレットとネックレスが作られているとは思わなかった。マルセル国では、婚約者にブレスレットとネックレスを贈るのが伝統だから、すぐにスチュがナタリーに贈ったのだと気づけた」


「そうなのね。そんな伝統があったとは知らなかったわ。でもそのブレスレットとネックレスをスチュ王太子さまに贈られて、片時も外すなって命じられて……。嫌々つけていたの。だから正直、アンディに対価として要求された時は……ああ、お好きにどうぞって感じだったわ」


顔を上げた私を見て、アンディは頬を優しく撫でてくれた。涙を拭ってくれたと分かり、思わず心臓がトクンと高鳴る。

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