SS:モフモフたちの可愛い冒険(後編)
みんなを見送ったブラウンに、起きてきたパールが声をかけます。
「おいらの名演技に、みんな騙されたな。でもこれでアイツらは試練を乗り越え、強くなるはずだ」
「本当に大丈夫かしら? ……心配だわ」
「ブラウンは心配性だな。じゃあ、みんなの様子を見に行くか」
こうしてパールとブラウンも家を出発します。
一方、幼いモフモフたちは、地図を頼りに元気よく“向こうが見える滝”を目指していました。
「なんだか久々に外に出ると、気持ちいいね」
「冬は寒いから、外に出るのは苦手だと思ったけれど……」
「こうやって走るのは楽しいよ!」
彼らは冬になると、怖い獣がみんな、冬眠していることにも気が付きました。
「なんだ、冬のお外はパラダイスだぞ!」
「そうだね。こうやって走ったら、ぽかぽかだし」
「あ、“向こうが見える滝”も見えて来たよ!」
“向こうが見える滝”。
そう呼ばれているのは、滝の裏側に回り込む道があるからです。そしてその道は、滝の裏にある洞窟に続いていました。
「よし、このまま洞窟まで競争だ!」
「負けないぞ!」
「スノーフラワーは、僕が一番で見つける!」
幼いモフモフ達は、我先にと駆けて行きます。
誰が一番乗りで洞窟に着くのでしょうか。
「わーい、僕が一番乗りだぞ!」
洞窟の入口に真っ先に着いたのは、子ぎつねの姿のモフモフです。
「スノーフラワーは僕が一番で見つける!」と宣言していたのもこの子。
本当はみんなと合流してから、洞窟の中に入る約束でしたが……。
パールに褒められたい!
そう思った子ぎつねは、みんなの到着を待たず、洞窟の中へと入ってしまいます。
洞窟の中には、光を発する虫がいるようで、天井はキラキラと星空のように輝いていました。
「わあ、綺麗だなぁ~」
子ぎつねが思わず感動すると、鼻の頭がコツンと何かにぶつかりました。
「!?」
すると「シャーッ」という威嚇と共に、鎌首をもたげる大蛇が現れました。
なんとこの洞窟で、大蛇が冬眠をしていたのです!
「わあああああ!」
子ぎつねが逃げようとすると、大蛇は尻尾をぴしゃり。
尾が当たり、子ぎつねは吹き飛ばされてしまいます。
「俺の睡眠を妨害して、ただではな済まなさいぞ! ちょうど腹も空いている。よしお前のことを丸呑みだ!」
大蛇が赤い舌をチロチロさせ、子ぎつねに向かおうとした時。
「そうはさせないぞ!」
「仲間を守るんだ!」
一斉に幼いモフモフたちが、大蛇に立ち向かいます。
子ヤギのキックに大蛇は驚き、子犬に噛まれ、悲鳴をあげました。小鳥のモフモフにつつっかれ、子たぬきも尻尾で大蛇を攻撃。
「うわあ、なんなんだ、コイツらは! チビのくせになんて力があるんだ!」
大蛇が叫んでいます。
幼いモフモフたちは、姿は愛らしくても、アンディの使い魔。キックも噛む力も、成獣どころの比ではありません。
「助けてくれ~!」
大蛇はまさに尻尾を巻き、洞窟の奥へと退散。
そして大蛇がいなくなった後には、スノーフラワーの花畑がありました。
綿のようなふかふかのスノーフラワーの花畑を、ベッド代わりにして、大蛇は冬眠していたようです。
「みんな、助けてくれてありがとう。僕、抜け駆けしたのに……」
「気にするなって。みんな、仲間だろう」
「そう、そう。みんな仲間なんだから!」
子ぎつねは目をうるうるさせ、そして離れた場所でこの様子を見ていたパールとブラウンも……。
「よかったぜ。オイラの後ろ蹴りの出番かと思ったけど、みんなで大蛇を追い払った」
「ふふ。なんだかんだでパールの方が心配性だったわね」
ブラウンが笑い、パールは頭を掻いています。
その間に幼いモフモフたちは、スノーフラワーをみんなで協力して集めました。
「よーし、これで完了だ!」
「お家へ帰ろう!」
「パールに届けよう!」
これを聞いたパールとブラウンは、大慌てで家へ戻ります。
こうしてみんなが家に帰ってくると、パールはスノーフラワーを受け取りました。
「……ということで、大蛇をみんなで倒したんだ!」
「冬のお外は寒いけど、冒険もできて楽しかった!」
「これからもっと森の探索をしたくなったよ!」
元気な報告を聞いたパールはニコニコとして、幼いモフモフの後輩たちに伝えます。
「みんなのおかげで元気になった。沢山とってきたスノーフラワーは、みんなも食べるといいぜ。これはコットンキャンディみたいで、甘くて、口の中で溶けるぞ!」
「本当に!」「わーい」
「「「いただきます!」」」
幼いモフモフたちは大喜びで、スノーフラワーを口に運びます。
「美味しいね」
「本当だ」
「沢山運動したから、いつもより美味しく感じるよ」
怖い大蛇もみんなで協力すれば、倒せると知ることができましたが……。
冬でも元気に駆け回ることで、食事も美味しくなると、学んだようです。
パールとブラウンも満足気に微笑むのでした。
そして後日。
森で暮らす動物たちが、幼いモフモフたちを訪ねてきました。みんな手にはお土産を持っています。
大蛇がスノーフラワーの花畑で冬眠していたので、実は森の動物たちは困っていました。大蛇を撃退してくれたモフモフたちに、感謝するためにやってきたのです。
こうしてモフモフたちは、森の動物とも仲良くなり……。
家の中は日中、空っぽ。
みんな新しく出来た森の仲間と、楽しく外で遊んでいるからです。
そして枯れ葉が積もるその下では、春を待ち侘びる草花が、目覚めの時を待っていました。
〜おしまい〜
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