SS:二人で休暇を(4)
「ナタリー、俺の部屋へ行こう」
ミルクティーをトレイに載せたアンディに言われ、ドキッとしたが、そこで思い出す。
そうだ!
一緒のベッドで寝ようと言っていたから……。
もしや魔法で、既にベッドのサイズを大きくしているのかしら……!?
「みんなも俺の部屋に集合。ベッドのサイズを大きくしたから、今日からはみんなで眠れるぞ」
「「「「わ~い! パールもブラウンも一緒~?」」」」
「ナタリーも一緒だ!」
「「「「ナタリーも! 嬉しい~!」」」」
もふもふ達がこんなに喜んでくれるなら、ドキドキしている場合ではない!
「みんな一緒にベッドへ行きましょう!」と声を掛け、アンディの部屋に行くと……。
確かにベッドサイズが大きくなっている!
部屋が……少し狭く感じるぐらい。
でもみんなでベッドにのっかり、そこでクッキーを齧り、ミルクティーを飲みながら、おしゃべりをした。もふもふ達が、今日食べた毒キノコの特徴について教えてくれる。
アンディはそれを聞きながらちゃんとメモをとっているのだから、偉い!
しかももふもふ達は、落ちたクッキーの欠片もちゃんと綺麗に片づける。
もふもふ達も、偉い!
その後はなんともふもふ達も含め、トランプで遊んだ。
「「「「楽しかった~! でも眠~い!」」」」
もふもふ達は、枕元にズラリと並ぶと……。
すぐに「スー」「ピー」と眠り始めた。
パール、ブラウン、マシュマロも、彼らに寄り添い丸くなる。
アンディと私は後片付けをして、改めて彼の部屋に戻ることになったのだけど……。
なんだか再びドキドキしてしまう。
まず、寝間着姿でアンディの部屋に向かうことに、ドキドキする。
次に、当然だがこれから一緒にベッドで横になることに、ドキドキだ。
私はこんなにもドキン、ドキンしているが……。
アンディは落ち着いた様子だ。
部屋に戻り、ガウンを脱ぐと、ゆっくりベッドに横になり、「ナタリー!」と私を呼ぶ。
至って健全な顔のアンディを見ていると……。
私、何を一人で緊張し過ぎているの!と、自分ツッコミをいれてしまう。
深呼吸をして、ガウンを脱ぐと、いつも通りの調子でベッドに横になる。
アンディはふわりと優しく私を抱き寄せると、腕枕をしてくれた。
「もう、明かりは消す? それとも明るいままで、少しおしゃべりでもする?」
これは究極の選択だ。
暗いとなんだかムードも高まる気が……いやいやそうではないのだから!
「暗くしてもらって大丈夫よ。みんな寝ているから」
「オッケー」とアンディが応じると、ランプの明かりは消えている。
魔法で消してくれたのだ。
「ナタリー、寝心地はどう?」
「……そうね。余裕があって、寝返りを打っても大丈夫そう」
「ちゃんと眠れそう?」
「それは勿論! ありがとう、ベッドのサイズ、変更してくれて」
今のこの状況を意識していませんというモードで答えたところ。
「そういう意味ではないのだけど……」
「!?」
「これまでは何というか、流れで……一緒に寝ていただろう。でも改めて“一緒に寝よう!”だと緊張する」
これには驚いて「嘘、アンディ、全く緊張している様子ではなかったわ!」と言ってしまう。
「そんなことないさ。俺はナタリーのことを好きなの、分かっているだろう?」
そこでアンディの手が、頬に添えられたと思ったら……。
彼の顔が私に近づいていた。
でもまだ暗さに慣れていないので、石鹸の香り、体温、息遣いでそれに気づく。
その近さから……いよいよもふもふ達も期待する、キスをされる……かと思ったら。
「全部」
「?」
「全部、我慢する」
「な、何を……?」
この距離感で話されると、吐息さえ感じてしまい、いきなり心拍数が上がっている。
「ナタリーとのキス。その先も。全部、結婚式まで我慢する」
これにはビックリ!
この世界、特に王侯貴族の婚前前の接触は、厳し~く禁じられているものの。
皆、キスぐらいしている……と聞いている。
それ以上は……予定外の妊娠のリスクもあるのだ。
よってそれは結婚式以降。
でもキスぐらいは……。
「大切だから、ナタリーのこと。だからちゃんとルールを守る。こうやって腕枕をして、ナタリーと眠れるだけで、満足だ。週末に森の家で過ごすことを許してくれている、ナタリーのご両親を、がっかりさせたくないから」
アンディ……!
なんて誠実なのかしら。
キスぐらい……なんて思ってしまった自分が恥ずかしいわ。
でも……。
年頃なのだ。
キスもスキンシップもしたい年齢だと思う、お互いに。
それを我慢しているのだ。
前世でも、この世界でも、アンディは稀有な存在だと思う。
そんなアンディと婚約していることが、誇らしく思えてしまった。
「アンディ、ありがとう。私のことを大切にしていると、強く伝わったわ。私もこうやって一緒のベッドで眠られるだけで、幸せよ。それに明朝は、アンディの寝顔が見られるから!」
「それはどうかな。俺の方が早く目覚めるかもしれない」
「! ダメよ、アンディ。ぐっすり眠って」
「どうだろう」
そんなことを話しながらアンディは、私を大切そうに抱きしめてくれる。
優しく、一途で、誠実なアンディ。
大好きよ……。
二人の寝息がいつしか重なるようになり、私達はお互いに抱き合ったまま、幸せな眠りについた。
お読みいただき、ありがとうございました!
続編、お楽しみいただけましたか~?
ナタリーとアンディ。
パール、ブラウン、マシュマロ、もふもふ達。
そしてディーンに謎のルマン!
もし彼らにまた会いたいと思っていただけましたら
感想、☆の評価をいただけると嬉しいです~
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