SS:二人で休暇を(1)
アンディと丸々一週間。
森の家で過ごせる!
これは嬉しくてならない。
もうニコニコしながらベッドへ潜り込み、パールとブラウンの寝息に合わせ、私もすぐ爆睡。
明日の朝は早起きしてアンディにアーリー・モーニングティーを出そう!
彼の寝顔は天使のようなのだ。
また見たい!
そのためにはアンディより早起きをしないと。
そう。
森の家ではアンディが、アーリー・モーニングティーを淹れてくれる。
これが恒例になっていた。
だから彼の寝顔を見るためには!
先を越されないようにしないと。
ということで翌日の朝。
バチッと目覚めることが出来た。
この世界では目覚まし時計もなければ、スマホのアラームもない。
貴族であれば使用人が起こしてくれるが、ここは森の中のポツンと一軒家なのだ。
鶏の声を頼りに目覚めることが多いが、その鶏よりも早く起きる。
となると、体内時計が物を言う。そしてこの世界の皆様、幼少の頃よりこの体内時計が発達している。変な話、気合い(!?)で目覚めることができるのだ。
その気合いにより目覚めた私は、まずは顔を洗い、ミルクティー色のワンピースに着替える。ウールでもこもことして暖かい。腰に革の細いベルトをつけ、茶色の革のブーツを履くと、キッチンへ向かったが……。
「「!」」
驚いた。
廊下でアンディと鉢合わせしたのだから!
アンディは白のチュニックに紺色のズボン、革のロングブーツというカジュアルな姿。外に出るときは,、いつものローブをまとうのだろうけど、森に相応しいラフな装いをしている。
「おはよう、ナタリー」
もふもふ達がまだ寝ているので、小声でささやいたアンディが、私を抱き寄せる。
「アンディ、おはよう」
私もぎゅっとアンディに抱きつく。
「もしかして俺のために、アーリー・モーニングティーを淹れてくれようとしていた?」
これにはドキリだが、それ以外の理由でこんな朝早くには目覚めないだろう。
正解なので「その通りよ」と答えると、アンディが後頭部に手を滑り込ませ、自身の顔を私の耳元に近づける。
「ダメだよ、ナタリー。それは俺の役目」
「!」
アンディの息が耳にかかり、一気に全身から力が抜けてしまう。
同時に。
彼の役目と言われれば、「そうよね」と返事をしそうになり、なんとか踏ん張る。
「わ、私も、アンディ―の寝顔を見たいわ!」
「!? 俺の寝顔を見たいの?」
また耳元でささやかれ、両手で必死にアンディのチュニックを握りしめる。
ち、力が抜けるわ……!
そんな状態ながらも「そう、見たいの……」と甘えるように答えている。
するとアンディは。
「ナタリー。そんな可愛くおねだりされたら、困る!」
三度目で耳元でささやかれ、もう全身をアンディに預けると、彼は嬉しそうに腕に力を込める。
「俺もナタリーの寝顔を見たいんだけど……」
ようやく耳元から顔を話し、そう呟くと、体を離した。
まだ抱きついていたかったが、アンディは代わりに手をつなぎ、キッチンの方へと歩き出す。
「お互いに寝顔を見たいなら……一緒のベッドで休む?」
「!?」
それは嬉しい!
嬉しいけど、い、いいのかしら!?
勿論、変なことはないわ。絶対に。結婚するまで。
「でも、あれか。二人ともベッドが小さいからな。サイズを大きくするか」
アンディはそう言いながら、竈の火を起こし始めた。
私は水甕の水をケトルへ移し、紅茶の茶葉が入った缶を取り出す。
「ベッドのサイズを大きくするなら……ナタリーの部屋は少し狭いから、俺の部屋のベッドを大きくした方がいいよな」
慣れた手つきでアンディは既に竈の火を起こしていた。
私はケトルを火にかける。
「俺の部屋のベッドを大きくして、一緒に休む。これでお互いの寝顔を、早起きした方が見ることができる。どう?」
アンディがラピスラズリのような瞳をキラキラさせて私を見た。
朝から眼福な顔で、つい拝みたくなる。
そうではなく!
べ、ベッド……そう、大きくして、アンディと一緒に……!
何度か一緒にベッドで休んだことがあるのに。
改めてベッドのサイズを大きくして~と言われただけで、なんでこんなにもドキドキしちゃうのかしら。
「ナタリー?」
立ち上がったアンディが不意打ちで顎クイをする。
これにはもうドキーンとしてしまう。
「う、うん! ベッド、大きくしましょう。そうしたら一緒にグッスリ休めるわ。そ、その寝顔を……。あ、もふもふ達もみんな一緒に寝られて喜ぶわ! そうよ、そう! もふもふ達のために、ベッドを大きくしましょう!」
なんとかそう答えたのだけど、アンディは少し拗ねたような顔になる。
「使い魔達は……まあ、それはそうだけど。俺はナタリーのために、ベッドのサイズを大きくしたいのに」
そこでアンディは、私の腰を両手で抱き寄せると。
自身の鼻を私の鼻に甘えるようにすり寄せる。
まるで大型犬みたいな動作だが、心臓大発作案件!
だがしかし!
視線を感じる。
「うん……?」
アンディも気づき、そちらを見ると、もふもふ達が勢揃いして私達を見ている。
「ちゅーするの?」「ちゅーするんだよ!」
「ちゅーするんだ!」「わーい、ちゅーだぁ~」
無邪気にそんなことを言い出すから!
「おい、お前たち、ちゅー、ちゅーネズミじゃないんだから、騒がない。それよりもう目が覚めたなら、朝食の準備だ。卵と芽キャベツ、ケールの収穫!」
「「「「は~い!」」」」
もふもふ達が元気に家を飛び出して行った。
























































