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断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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11:まだ夢を見ていて

キリッとした表情になったアンディは。

やっぱり息を呑むカッコよさ。

しかも私の手を取り、その甲へキスをする姿は。

間違いない。

王道を行く王子様にしか見えない。


ゆっくり楽団による演奏が始まり、素敵なメロディが流れ出す。

この曲は……。

私の大好きな海外のプリンセスが主人公のアニメ映画。その主題歌になんだか似ている。

ゆったり美しい音色にあわせ、アンディにエスコートされながらステップを踏む。


ダンスは上手ではないと、アンディは言っていたが。

とも踊りやすいし、リードも上手い。


アンディは。

頭がいい。それは単純に勉強ができる、というのではなく。地頭がいいのだと思う。だから魔法も森の中で生きる術も、教養も含め、ちゃんと身に着けることができている。


それだけではない。

運動神経も優れているし、狩りと日々の森歩きで体も鍛えられていた。


そして。鬼畜イケメンかと思ったけど。

そんなことはなかった。とても優しい。

対価を得られるから……なんて言って、まあ、実際に私の手首からはネックレスとブレスレットが消えたわけだけど。それでも放置することもできた私を、助けてくれたのだ。親切な人なのだと思う。


なぜ、アンディは。

こんな森の中にいるのだろう。

本当に不思議でならない。


でも……。

それだったら。

アンディだって、なぜ私がこんなことになったのか不思議に思っているだろう。いや、もう気づいているかな。私が……王太子の元婚約者であると。私の身に起きたことにも。


「ナタリー、もう一曲、踊ろう」


そう言って微笑むアンディと。

その後も何曲もダンスを踊った。

楽しかったし、舞踏会ではないから、アンディと何曲ダンスを踊ろうが、誰も文句は言わない。踊り疲れると、アンディはアイアン製の椅子を魔法で出してくれて、そこに腰かけ休憩をした。


椅子に座り、眺めた景色は本当に綺麗だった。

湖の真ん中にいるから。360度の大パノラマだ。


「じゃあ、今日のところはこれが最後」


そう言ったアンディとダンスを踊り終えた時は。

思わずその胸に抱きつきそうになり、慌ててストップをかけることになった。


アンディには運命の女性がいるのだ。

ムード満点な雰囲気に流されてはいけない。

ということで踏みとどまった。


そして行きと同じように、アンディのエスコートで飛び石を渡り、湖のほとりへ戻ると。後ろを振り返ろうとする私をアンディが止める。


「ナタリー。まだ夢を見ていて。きっとこの夢はまだ終わらないから」


なんだかロマンチックな言葉に胸が弾んでしまう。

でも夢の続きがあるのかしらと家へ戻ると……。

本当にビックリしてしまう。

テーブルの上には、夕ご飯の用意が済んでいた。


「これはどうしたの? お昼の残り物でもないわよね?」


パール、ブラウン、マシュマロ達、白とキャラメル色のモフモフの使い魔たちを見ると。


「いやー、普通に昼食の片づけをしていたら。食っちまったんだよ。全部。だから代わりに用意したよ」


モフモフの使い魔を代表し、パールがしれっと答える。

どう見てもぬいぐるみに見えてしまうちびっこ使い魔達が、これを用意したのかと立ち尽くしていると。


「ナタリー、せっかくみんなが頑張って用意してくれたんだ。見てご覧、ブラウンの尻尾。先が焦げている。多分、慣れない竈で火傷しそうになったんだ。頑張ってくれたと思う。だからいただこう」


アンディはそう言うと、私を席へと案内し、そしてブラウンのそばに行くと、尻尾に手をかざす。ブラウンの尻尾は綺麗に元通りになっていた。


モフモフの使い魔達が用意してくれた夕食は……。とても美味しくてビックリしてしまう。


イノシシ肉を使ったパスタは、肉をワインで漬け込み野菜と煮込んだトマトソースが絶品。赤ワインで煮込んだイノシシ肉は、メイン料理としても登場し、こちらは沢山の野菜と隠し味に、アプリコットジャムを加えたという本格的な味わいの逸品だった。


昼間、あんなに満腹になるまで食べたのに。


用意されていた料理も完食してしまった。そして今は、食後に用意されたミルクティーとアプリコットジャム入りのチョコレートを食べていた。


「……パール達がいたら、アンディが料理する必要はないわね」


「そう思うだろう? でも奴らは労働に対する対価を求めるから。昼食の片づけをするつもりが、夕食用にとっておいた料理を食べてしまった。だから代わりを用意したに過ぎない。明日の夕食をお願いするなら、相応の何かを渡さないとダメだから」


「使い魔達もしっかり者なのね。さすがアンディの使い魔だわ」


するとアンディは困り顔で私に尋ねる。


「それは呆れている? 皮肉だったりする?」


「まあ、がめついって一度言ってしまったけど。でも対価に関する考え方を聞いて納得したから。魔法はただではない。使えば使った分、疲れるわけだし。使い魔達もこの料理を用意するのに魔法を使ったのだと思うから。対価を要求するのは、妥当だと思うわ」


一応ちゃんと応えたのに。アンディは「俺の第一印象、やっぱり最悪だよな……」と落ち込み、モフモフの使い魔達が、なんだかなぐさめている。

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