56:自然に
マシュマロ、パール、ブラウン。
ピッタリとアンディに寄り添っている。
そのアンディは……。
アイスブルーのサラサラの髪は少し乱れている。
その前髪の下にキリッとした眉。
瞳は閉じられ、長い睫毛が呼吸と共にわずかに揺れていた。
陶器のような肌は、わずかに射しこむ午後の陽射しを受け、透明感が増している。鼻梁が通り、薄紅色の綺麗な形の口からは寝息が漏れていた。
ルマンの言う通りで、アンディはろっ骨を骨折していた。
でもそれは聖女ルビーが既に回復してくれている。
他にもいくつか打ち身、打撲、擦り傷などもあったが、すべて回復してくれていた。
もう怪我については問題ない。
あとは魔力が回復し、自然に目覚めるのを待つまでだ。
ちなみにアンディに同行していたマシュマロは、島の西側に避難した人々と一緒にいた。アンディの指示で、避難した人たちを守るため、彼らと一緒にいたのだ。だがこれまでに感じたことのない強い魔力を検知し、アンディと私の所へ戻って来てくれた。
そして。
ここは王宮のアンディの部屋。
私は初めて足を踏み入れた。
メビウス・リングを使い、ここへアンディとマシュマロを連れて帰ってからは、もう大変だった。
アンディの回復を頼みたいが、聖女ルビーは街中にいる。
いる場所は分かっていたので、メビウス・リングを使い、彼女に会いに行った。
事情を説明し、聖女ルビーを連れ、一度王宮に来てもらうことに。
ここでもメビウス・リングのおかげで、瞬時に王宮へ移動できた。
そこでアンディを回復してもらうと、マシュマロに彼を任せ、聖女ルビーと共に再び街へ。
聖女ルビーと別れた後は、メビウス・リングにパールとブラウンの元へ導いてもらった。
二人はストリアの魔力を追い、王立学園にいた。
屋上でストリアを発見し、応援を呼び、彼女を連行するのに手を貸していたのだ。そして私を再度探そうしていたその時。
私が現れたのだ。
パールは雄叫びを上げ喜び、ブラウンは号泣。
護衛の騎士は力が抜け、「ナタリー様……!」とへたり込んでしまう。
皆と共に宮殿へ戻り、そこからは宰相マクラーレンに面会を求め、全てを報告し――。
それが終わるとアンディのところへ戻り、パール達の「お腹が空いた」の言葉で、お昼も、ティータイムもないまま、夕ご飯の時間も過ぎていることに気が付いた。
一旦空腹を認識してしまうと、もうお腹が空いて堪らない!
厨房に顔を出すと、料理人達はまだ忙しく動いている。
宮殿の敷地には、受け入れを行った怪我人などが溢れていた。
彼らに提供する食事の用意に追われていたのだ。
そこでシチューとパンを食べさせてもらった後は。
パール達と共に、負傷者へ夕食を届ける手伝いをした。
それが終わると、アンディの部屋でバスルームを借り、その後はソファで休ませてもらった。
それから至る現在というわけだ。
私がいろいろしている間。
アンディはひたすら眠り続けていた。
彼の使い魔であるパール達も、アンディ同様に眠り続けている。
そろそろ目覚めてもいい頃かしら?
「アンディ……」
そっと手を伸ばし、その頬に触れようとしたところ。
私の手をぎゅっとアンディの手が握りしめた。
「!」
「ナタリー……」
アンディが眩しそうに目を見開く。
ラピスラズリのように美しい瞳。
その瞳がゆっくり細められ、アンディの顔に、甘い笑顔が広がる。
握った私の手の甲にアンディは「ちゅっ」と可愛らしくキスをすると、嬉しそうな声を上げる。
「いつもナタリーを起こすのが俺の役目だったのに。目覚めたらナタリーの顔を見られるなんて。俺、なんだかすごく幸せ」
これにはもう頬が緩みそうになり、大変!
なんとかにやけそうな顔を引き締め、真面目に尋ねる。
「アンディ、お腹、空いていない? お水、飲む?」
「そうだな。言われるとお腹、空いたかも」
「腹、減ったぞー!」
「お腹空いたわぁ~」
「あたしもー!」
パール、ブラウン、マシュマロも目が覚めたようだ。
そこでまず、ベッドサイドに用意していたお水をアンディやパール達に渡す。
その間にメイドを呼び、少し遅い昼食を用意してもらった。
昼食を摂りながら、アンディと昨日、何があったのかを話すことになる。
まずはアンディがモルデル島での出来事を教えてくれた。
「俺がモルデル島に着くと、実に静かな状態だった。静か過ぎて……不気味なぐらいだ。収監施設に近づくと門番も衛兵も姿が見えない。おかしいと思ったら……全員、魔法で眠らされている。魔法と言えばファーガソンだ。奴が暴動に乗じ、脱獄した可能性を考え、まずは彼が収監されている部屋へ向かった。するとまさに魔術師達が、彼を部屋から出そうとしているところに出くわした」
ファーガソンの部屋には逃亡防止のため、魔法がかけられ、扉や鍵も特殊だった。ゆえにそう簡単に突破できない。足止めを喰らっているところに遭遇できたわけだ。
同時に。
モルデル島では暴動が起きていると聞いたが、そうではないと理解する。ファーガソンを逃そうとする協力者の魔術師がいることで、これは脱獄計画が進行中であると気付けたという。
「そこから魔術師達と戦闘になった。人数は多いが倒せないことはないと思ったが……奴らは俺への攻撃より、建物への攻撃を始めた。収監施設には多くが収容されていたが、その全員が眠らされている。このままでは死傷者が増えてしまう。結果的に建物と彼らを守りつつの戦闘だから、一筋縄ではいかなかった」
























































