41:甘えたい
宮殿に戻ったアンディと二人、パール、ブラウン、マシュマロを連れ、食堂で昼食を摂った。
この昼食の後、アンディは例の鐘事件の犯人について、国王陛下と話すことになっている。
一方の私はというと。
夜、建国祭を祝う舞踏会があるのだ。屋敷へ戻り、ドレスを着替える必要があった。
「ナタリー、昨日みたいに着替えは隣室でしないか? 一応部屋は建国祭の間、ずっと押さえているから」
食べ終わったトレイを棚に戻しながら、アンディが私に尋ねる。
どうやらアンディは少しでも長い時間、私と一緒にいたいようだ。
宮殿と我が家、そう離れた距離にあるわけではない。
手紙を届けてもらい、ソーニャに昨日と同じように宮殿に来て欲しいと頼めば、問題なく来てくれるだろう。
「分かったわ、アンディ。昼食の後は、昨日の部屋で待機させてもらうわ」
「本当に! 良かった。嬉しいな。飲み物と軽食を届けさせるよ。食堂の昼食はワンプレートランチでデザートもなかっただろう」
そう、そうなのだ!
本当はアンディが頼めば、執務室に昼食を届けてもらえたのだけど、私は食堂へ行きたいとお願いしたのだ。その食堂は普段、宮殿で働く人々、例えば事務官たちが利用している。勿論、利用したことなどない。
食堂ではコース料理などではなく、仕事の合間にさっと食事できるよう、ワンプレートランチを提供していると聞き、食べてみたくなったのだ。
確かにデザートなどついておらず、ワンプレートには肉!魚!豆!あとはパン!という感じだった。
でも食堂で料理を作るのも、宮廷料理人の皆さん。味は間違いなく美味しい! デザートがないのは寂しかったが、売店ではテイクアウトできるスイーツも販売されていた。
さすがに「アンディ、デザートも食べたいわ!」なんて言っている場合ではなかったので、我慢していたけれど……。お腹には余力がある。無論、舞踏会があるので食べ過ぎはNG。でもまだまだ時間があった。
それに。
「デザート、食べたいぜ!」
「食べたいわ~!」
パールとブラウンもデザートをご所望なので、便乗して「デザート、お願いします!」と返事をしていた。こうして食堂を出て、アンディにエスコートしてもらい、昨日の部屋に到着すると。私は早速家へ手紙を書くことにした。
「ナタリー、手紙はベルで呼べば従者が来て、屋敷まで届けてくれる」
「ありがとう、アンディ。でもメール室もあるのでしょう?」
「そうだね。今は建国祭の最中だけど、各国の来賓が母国へ手紙を書くから、メール室は開いている」
「せっかくだからメール室まで、パールとブラウンと冒険してみるわ。メール室はさすがに利用したことがないから、ちょっと気になるの」
私がそう言うと、アンディは私をぎゅっと抱きしめる。
「そばにいられなくてごめん。それなのに宮殿へ来て……なんてリクエストして」
「気にしないで、アンディ。私もアンディのそばにいたいから、こうしているの。それに食堂も初めて利用できたでしょう。この後美味しいスイーツも届く。メール室にも探検に行ける。大丈夫よ」
「俺がナタリーに甘えたくて、つい……」
「昨晩は私が甘えて、アンディはちゃんと付き合ってくれた。だから今日はアンディが甘えるのでいいの」
するとアンディは私の耳元でこんなドキッとする言葉をささやく。
「ナタリーの寝顔はいつ見ても可愛い。無防備で、気持ちよさそうに寝ているから。思わず襲いたくなる」
またも不意打ちの甘々発言に、全身から力が抜けそうになる。
だがパールとブラウンの「チューする? チューしちゃうの?」の視線と扉をノックする音で甘々モードは終了。アンディは部屋を訪ねてきた侍従と共に国王陛下の所へ向かい、私は手紙を書き始める。
しばらくするとスイーツと飲み物が届き、パールとブラウンは大騒ぎ。
私もチョコレートをつまみながら、手紙を書き終えると……。
「パール、ブラウン。冒険へ行くわよ!」
「「わーい!」」
廊下に出ると、そこには護衛の騎士が待機してくれていた。
メール室へ行くことを告げると、当然、ついて来てくれることになる。
では、ということで早速右手へ歩き出すと――。
「メール室はこちらですよ」と護衛の騎士に言われてしまう。
その後もパールとブラウンの野生の勘で、あっちへ行こうとしたり、こっちへ行こうとすると、護衛の騎士が後ろから「そちらは厨房です」「そっちは食堂です」と言われ、気が付く。
パールとブラウンの野生の勘では、食料がある場所に辿り着いてしまうと。
ここは自分の勘を信じようと歩き出したまさにその時。
銀髪ロングに碧眼で、瞳と同じ碧いローブを着ている綺麗な女性の姿が見える。
ブルームーン帝国の帝国魔術師のストリアだ!
「ストリアさん!」と声を掛けると、彼女はハッとした表情で私を見る。
なんだか深刻そうな様子にドキリとしてしまう。
どうしたのかしら……?
「ナタリー様、ごめんなさい」
この言葉に「!?」となった時には意識がなくなっていた。
























































