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傍若無人な長谷川真希

後半、人生初の女性視点に切り替わります。

 4月28日(金)放課後。




「きのした~!明日の午後、ひとみ借りていい~!?」


 まだ教室にはほとんどのクラスメイトがいるというのに、長谷川真希には遠慮と言うものがなかった。

 いや、そういった状況だからこそ、長谷川は遠慮しなかったのだ。呼びかけられたぼく、木下一哉は、それがわかっているからこそなおさらに苛立つ。

 文句の一つでも言ってやりたいが、そんなことをしたら余計に面倒になると言うことをすでに何度も身をもって知らされている者として、答えに選択肢などは持たない。一択。


「いいよ」

 ぼくがあっさり答えると逆に長谷川が拗ねる。


「も~!折角アンタが嫌がる言い方で言ってやってんのにさ、そんな反応じゃつまんないじゃん」

「はいはい」


 この長谷川という女子はかつてぼくに、自分のズッ友の『草野瞳との昼休み時間』を奪われたと激怒し、友を取り返すために『女性恐怖症』という弱点をえげつないほどに突いてぼくとやりあった過去を持つ。約10日前。


 ぼくが、女性恐怖症であるにもかかわらず、なぜ長谷川に怯えなくなったのか?と言う事には理由がある。

 ぼくはもはや、この長谷川を女だと認めていないことが一つと。

 ぼくには『長谷川』から自分を守ってくれる『仲良し』の草野瞳が守護神として、とり憑いているからである。守護霊ではない。


「マキ、ほんっとそれ、もうやめな」

 守護神登場である。草野瞳。

「ぶ~~~っ、つまんないの~~~」


 つまり、ぼくの女性恐怖症は治ったというわけではなく、長谷川に対してだけ免疫をつけたと言い切って良いであろう。

「で?話続けて」

 ぼく、冷静。


「私が言うよ。マキに任せると話がどんどん逸れていくから」

 さすが草野。あの長谷川のズッ友だけはある。すでに9年。


「マキが料理覚えたいって言うから、ちょっと買い物に付き合うだけよ」

「GW中ってさ、アンタたちと絡めないから暇じゃん?アンタらリア充だし?だから初日だけでもひとみを貸してくれたら?あとは家に引きこもってお母さんに特訓付けてもらうからさ」


 確かにぼくと草野はまだ付き合っているわけではないから、リア充とは言い切れないが、リア充である。確定している。させてやる。1年後。


「まぁ、そもそも草野はぼくの所有物じゃないから、草野さえよければ好きにしていいんじゃねぇの?」


「へへ~~ん。やったね。()()からオッケーもらったよ。ひとみ」

 長谷川真希。人の話を聞かない奴。傍若無人ぶり健在。


「(小声)ご、午前中は一緒にいようね?」


 草野、彼氏呼びした長谷川にツッコまない。ズッ友ゆえツッコんでも無駄だと知り尽くしている。流石。


「じゃぁ明日ね~ひとみ~」


 嵐は去った。いや、長谷川は先に帰った。


「私たちも帰ろ?」

「……ああ。帰るか」






~~~~~~~~~~~~~~~~


 4月29日(土)昭和の日。午後12時30分。



 ☆★☆草野瞳視点☆★☆



 ホームセンター帰りの私とマキは、クラスの委員長に出会った。

 安田ひかり。上品で責任感のある子。

 ちなみにこの安田さん、桐生くんと霧島さんの小学3~4年『仲良し時代』を知る貴重な同級生なんだって。


「あ、安田さんだ!おーい!いーいーんーちょー!」


 マキの大声に安田さんが驚いてる。そりゃぁそうでしょう。まだ友達でも仲良しでもない、ただのクラスメイト。しかも知り合って1か月弱。絡みもないし。ほぼ初対面なのに。まぁ、やると思ってたけどね。


「ねぇねぇ、いいんちょって、家この辺なの?」


 流石マキ。遠慮も躊躇いもない。まさに自由人。


「え、えぇ……割と近いですよ」

「へ~?この辺って、霧島とか桐生の家も近いの?」

「えぇ。すぐそこですよ」


 安田さんが指さした先を見ると、その家から見慣れた男女が出てきた。桐生くんと霧島さんだ。

 現在地からは20メートルと言ったところかな。


「あ、桐生と霧島じゃん?声掛けに行こ。いいんちょも来て!」

「ちょっとマキ、邪魔するのは無しよ」

 言っても無駄か~


「あれ?えーと?」


 私が付いてくるのは当然と思ってるんでしょうね。

 安田さんを逃がさないようにしっかりと手を引いて、桐生くんと霧島さんの邪魔をしに行くマキ。


「き~り~し~ま~!」

「ちょっとマキ、大声出さないでよ」

 ちなみにマキは地声もでかい。どうでもいいかもしれないけど歌もうまい。


「あれ?桐生は行っちゃった?」

「うん。お仕事だから……それより、どういう組み合わせ?安田さんと仲良しなの?」

 霧島さんの疑問ももっともだけど。

 その前に私は驚いた。私よりマキはもっと驚いてた。

「あれ?霧島って、いいんちょは大丈夫なの?恐怖症」

 実は霧島さんも女性恐怖症を患っている。

 転校した先での小学生時代、クラスの女子全員にいじめられ、不登校になった過去を持っている。


「うん。安田さんは小学校3~4年の時クラスメイトだったし、優しくて委員長だったからかな?大丈夫だったの。家も近所になったし、わたしと近衛くんの事も知ってたというか覚えててくれてたしね」


 そうだったのね。少し安心した。


「へ~……じゃ、もしかしてこの家って、霧島家?」

 マキが指さしたのは新築と思われる一軒家。


「うん。そうだけど……」

 嫌な予感がするよ。霧島さん覚悟を決めて。私じゃマキの好奇心は止められない。


「寄って行っていい?」

 こうなるよね。霧島さんはあきらめた。受け入れるしかないもんね。


「い、いいよ……」

 どもりは緊張からって一哉が言ってた。


 こういった偶然の出会いで、霧島家に、私とミキと安田さんでお邪魔することになった。

 ほんとうに偶然なの?

 マキの悪だくみじゃないの?

 それになんで安田さんまで巻き込むの?





「どうしてわたしまでお仲間に入れられているんですか?」

 意外と冷静に安田さんが私に聞いてきたけど。


「マキって、言っても聞かないから諦めて……」

 そう答えるしかないよね。

続く。

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― 新着の感想 ―
[良い点] イチャイチャがすごいんじゃー [一言] 運動した後に読んだから、頭が回りません。 楽しみにしています。
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