第7話:蟲王族の脅威
モントデアと戦うのは俺とアビス。
スタッグと戦うのはテミスとスカイと決めていた。
二対一であれば、勝つのは安易なものかと思われた。
そして、戦いが始まる。
最初に攻撃を仕掛けたのはスタッグだった。
先ずはテミスに向かって片手を伸ばし、掌から魔弾を何発か放った。
それを余裕そうに躱すテミス。
テミスは自分から攻める事をあまりせず、作戦通りに立ち回るよう心掛けていた。
テミスとスカイの作戦とは、テミスがスタッグを足止めしている間、スカイが不意を突くと言う作戦だ。
まだ序盤と言う事もあって、スタッグは一切の油断も見せない。
そして、更に攻撃をするスタッグ。
打撃や魔法等、様々な攻撃手段を試すが、テミスには全く効かなかった。
そこで、スタッグは暢気に言葉を発する。
「スフフ。思ったよりタフなようだね────」
「私はお前みたいな奴を沢山殺してきたからね。タフなのも経験なのかも知れない────」
スタッグとテミスのやり取りの隙に、スカイが後ろから、手を魔法で変物させた刀で切り裂こうと試みる。
しかし、スタッグは片手で手剣を抑え、スカイを投げ飛ばした。
テミスがスカイの方を見ている間にスタッグは、瞬時に生み出した魔法剣によってテミスのお腹を貫通した。
「かっ────!?」
「スフフフ。良い気味だ。所詮、モントデア様に挑むまでもなかったな」
スタッグは手に強力な魔法陣を出し、遂にテミスへと放った。
テミスは死を覚悟したが、何故か生きていた。
何故かと言えば、
「この攻撃。テミスが食らってたら、死んでたんじゃないか?」
そう、セウズがテミスを庇ったのだ。
セウズには傷一つ無く、余裕そうに立っていた。
「いくら身構えていたとは言え、私の魔法を食らって立っていられるとは・・・・・・」
悠々たる表情で呟くスタッグ。
スタッグからすれば、こんな事は想定内だったのである。
そこで、笑顔を崩さずセウズが発言する。
「あれくらいの魔法で、倒せると勘違いしているのかい?」
二人は、互いに煽り合っていた。
どちらとも冗談で言っている訳で無く、殺意で覆われていた。
そこで、スカイがセウズの前に立ち尽くした。
「セウズ様。ここは私にお任せください!」
スカイは何とも真剣な顔で、剣を持ちながらそう告げた。
セウズは「うむ」と頷き、ゆっくり後退した。
「一番強そうな奴が、出なくて良いのかよ!!」
スタッグは目にも留まらぬ速さで、スカイの背後を取った。
この時、スタッグは(勝った・・・・・・!)と思ったであろう。
しかし、スカイにそんな小細工は通用しなかった。
スカイは微動だにしなかったが、魔術によって空気でスタッグを飛ばした。
(何だと!?この雌め。ただの猿かと思ったが、そうでは無いようだな・・・・・・)
スタッグは冷や汗を掻いていたものの、痛みといったダメージは全く無かった。
スカイは続けて、スタッグを飛ばした。
(この攻撃。痛みこそ無いが、かなり厄介な術だな。遊んでる暇などねぇ・・・・・・!)
スタッグは全魔力を解放し、辺りの建物を全て消し飛ばした。
スカイはニヤリと口角を上げ、スタッグに声を放った。
「どうやら私にムキになるようね。良いわよ、全力で来てちょうだい!」
スタッグとスカイの間には、凄まじい程のエネルギーを感じられた。
そして、スタッグが足を踏み出し、二人の戦いは始まった。
俺とアビスの方では、モントデアとの争闘が起こっていた。
モントデアは、以前と比べ物にならない程の魔力と技術を身につけていた。
モントデアと主に戦っていたのは俺だった。
アビスは、万が一俺が負けそうになった時に備えて、敢えて戦わないそうだ。
「私は皆の大いなる女王よ。アナタ達のような魔物に、負ける訳にはいきませんわ!」
モントデアが必死に剣を突いて来るが、俺はクラゲの姿と言う事もあって全く当たらなかった。
人間体と比べて、面積が少ないからな。
「チッ、全く当たらないじゃない!」
俺は淡々と躱すが、俺の目の前で必死な表情をし、本気で当てに来るモントデアの姿がなんとも面白かった。
俺は思わず、微笑してしまう。
「フッ」
「何が面白いの!?私を舐めてると、痛い目に遭うわよ!」
モントデアがそう言問うと、ちょうど俺に当たる場所へと刃が向かって来た。
(来たわ!これは絶対に当たった!)
(マズイ!これではサレア様が────!!)
モントデアもアビスも、確実に当たると思っていただろう。
しかし、俺に攻撃は当たらなかった。
「な、何で────」
モントデアがそう言い漏らすと、俺は一つ足をモントデアの肩に置く。
「終わりだよ。お前は────」
俺がそう囁いた時、アビスは俺の隣で感激していた。
「必ず当たる挙動だったので少々焦りましたが、流石はサレア様です。攻撃の次元をズラすテクニックを所持していたとは、思いもしませんでした・・・・・・」
次元をズラすテクニック?
そんなテクニック、俺は持っていない筈。
いや。この身体になって、何も使い方など分からなかったが、何となく魔法は出せていた。また、普通に動けていたので、今更疑問を抱いたところで遅いのだ。
「いや、俺は何となく動いているだけで────」
俺の言葉を聞いたアビスは、驚きを隠せない表情で駭然していた。
「そ、そんな事が・・・・・・!?」
アビスは思わず本音を漏らすが、この時とある事を思い出した。
(いや、サレア様はもしかすると────)
アビスが惧れていたところ、モントデアが容赦なく魔法陣でアビスを取り囲んだ。
「油断大敵。先ずは一人目!」
モントデアがそう叫ぶと同時に、魔法陣の中で大爆発が起きた。
アビスは真面に食らい、俺は心底不安だった。
しかし、モントデアが嘲笑していると、煙の中から笑い声が聞こえた。
「フーフッフッフ。何を勘違いされてるのですか?私は傷どころか、触れられた気もしませんでしたよ?」
アビスは、挑発混じりに吐露した。
モントデアは計算外の出来事に、銷魂していた。
「こ、こうなったら、最強の守護者を呼んでやる!」
モントデアは頭に血が上っていたがために、冷静さを失っていた。
そして、モントデアの言うように守護者を召喚する。
「出よ!我等蟲王族唯一の〝天下無双/鬼蜻蜓系〟の一柱〝ツアガイル〟!」
すると、空から舞い降りるとてつもない魔力の守護者が降臨しようとする。
しかし、ツアガイルがモントデアの元に着く事はなかった。
何故なら・・・・・・
「そこをどけと言っている!」
誰かに向かって、怒って声を上げるツアガイルの姿があった。
その相手とは、世界最古にして最強の一角〝ルイン〟であった。
これは流石に相手が悪い。
「そう怒らないでよ。ボクは、サレアの仕事が邪魔されるのを防ぐのが仕事さ」
怒りを爆発させたツアガイルは、膨大な魔力でルインに圧を掛ける。
しかしルインからすれば、ドングリの背比べのようなものであった。
「どうだ?戦闘だけで言えば、俺はあの女王様をも越える」
「それがどうしたんだい?女王か何か知らないけど、所詮ボクの敵じゃないよね~」
ツアガイルは怒りの頂点に達し、音速を越える速さでルインに殴りかかる。
それを何の変哲もないかのように、躱すルイン。
そう。ルインはこれでも、かなり手加減しているのだ。
「ボクは君を倒そうだなんて思っていなくって、ただ遊び相手として面白いから相手してるんだ。勘違いしないでくれよ。雑魚が────」
実際の所、ツアガイルはモントデアを上回る程の強さはあった。
だだ、ルインが相手な為、モントデアもツアガイルも微力であった。
「それは、こっちのセリフだぁぁ!!!!!」
ツアガイルは怒りのあまり、攻撃を当てることしか考えていなかった。
こんなヤワな攻撃では、ルインには掠りもしない。
「へいへーい!これで女王越えてるとか、どんだけ小物なんだよ」
ルインは揶揄いながら、ツアガイルを蔑む。
そして、ツアガイルは最後の切り札を発動する。
「こうなれば、星諸共木っ端微塵にしてやる!」
ツアガイルは切り札のポーズを取り、地に向かって魔術を放った。
「宇宙の餌となれ!〝蟲死雷/王系〟!!」
蟲死雷/王系·····四方八方からターゲットに向かって発射される、膨大な魔力を含む稲妻。その威力は星一つ破壊出来る程度であり、どんな強者であろうが、傷付かない事はないだろう。
ルインは全ての稲妻を諸に食らい、付近は煙で覆われた。
勝利を確信したツアガイル。
そう。この技を真面に食らって、生き延びられた者はいないからである。
しかし、ツアガイルの思想は、一瞬にして去っていった。
目の前には、人型の影が見えたからだ。
「今までで一番良い攻撃だったんじゃない?もしかしたら女王も倒せるんじゃない?」
ルインはツアガイルの反感を買うように、訊ねる。
「黙れ!女王様はこの星唯一の雌。絶対に死なせる訳にはいかない!」
モントデアに対するツアガイルの忠誠心が、勝った。
ルインは口端を上げ、遊びを終わらせようとする。
「まあ、君が女王に倣っているのはよく分かった。でもさ、その女王が死んじゃったらどうする?ボクは面白いと思うんだけどな・・・・・・」
あまりの発言に、ツアガイルは魔力の限界を突破した。
その魔力はモントデアやスタッグの元にも届いており、皆が驚愕していた。
「嘘・・・・・・。何なのこの魔力。ツアガイルなの?」
「スフフフ、面白い。これでは、私の魔力以上じゃありませんか」
ツアガイルは魔力を溜め終わり、愈々戦闘が再開されるところであった。
先に足を踏み出したのはツアガイル。
ルインのすぐ目の前まで光速で移動し、強力な魔法を放つ。
しかし、それはルインがベクトルをズラしたせいで、簡単に散っていった。
「今度は、ボクの番だよね」
ルインがそう告げると、ツアガイルは全身から血を吹き出した。
「おぎゃぁ!!」
「魔法の中でもまだまだ下位な方だよ、この魔法────」
ツアガイルは喋る間もなく、全身から血が溢れ出る。
「そうだ!良い事教えてあげようか。この魔法の名は〝生者制裁/腕系〟。死んでまた、来世で遊ぼう」
ルインがそう述べると、ツアガイルは大爆発した。
最も大きな魔力が消えた事で、異変を感じるモントデアとスタッグ。
果たして俺達は、女王とスタッグに勝てるのであろうか。
「バカが。やはり女王様を守る事ができるのは、私一人なんだよ────」
スタッグは影でボソッと呟いた。




