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魔王クラゲによる世界復古  作者: 夜之医
第一章:蟲王族編
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第7話:蟲王族の脅威

 モントデアと戦うのは俺とアビス。


 スタッグと戦うのはテミスとスカイと決めていた。


 二対一であれば、勝つのは安易なものかと思われた。

 そして、戦いが始まる。



 最初に攻撃を仕掛けたのはスタッグだった。

 先ずはテミスに向かって片手を伸ばし、掌から魔弾を何発か放った。


 それを余裕そうに躱すテミス。

 テミスは自分から攻める事をあまりせず、作戦通りに立ち回るよう心掛けていた。

 テミスとスカイの作戦とは、テミスがスタッグを足止めしている間、スカイが不意を突くと言う作戦だ。

 まだ序盤と言う事もあって、スタッグは一切の油断も見せない。

 そして、更に攻撃をするスタッグ。


 打撃や魔法等、様々な攻撃手段を試すが、テミスには全く効かなかった。

 そこで、スタッグは暢気に言葉を発する。



「スフフ。思ったよりタフなようだね────」


「私はお前みたいな奴を沢山殺してきたからね。タフなのも経験なのかも知れない────」



 スタッグとテミスのやり取りの隙に、スカイが後ろから、手を魔法で変物させた刀で切り裂こうと試みる。


 しかし、スタッグは片手で手剣を抑え、スカイを投げ飛ばした。

 テミスがスカイの方を見ている間にスタッグは、瞬時に生み出した魔法剣によってテミスのお腹を貫通した。



「かっ────!?」


「スフフフ。良い気味だ。所詮、モントデア様に挑むまでもなかったな」



 スタッグは手に強力な魔法陣を出し、遂にテミスへと放った。


 テミスは死を覚悟したが、何故か生きていた。


 何故かと言えば、



「この攻撃。テミス(お前)が食らってたら、死んでたんじゃないか?」



 そう、セウズがテミスを庇ったのだ。

 セウズには傷一つ無く、余裕そうに立っていた。



「いくら身構えていたとは言え、私の魔法を食らって立っていられるとは・・・・・・」



 悠々たる表情で呟くスタッグ。

 スタッグからすれば、こんな事は想定内だったのである。

 そこで、笑顔を崩さずセウズが発言する。




「あれくらいの魔法で、倒せると勘違いしているのかい?」




 二人は、互いに煽り合っていた。

 どちらとも冗談で言っている訳で無く、殺意で覆われていた。

 そこで、スカイがセウズの前に立ち尽くした。



「セウズ様。ここは私にお任せください!」



 スカイは何とも真剣な顔で、剣を持ちながらそう告げた。

 セウズは「うむ」と頷き、ゆっくり後退した。



「一番強そうな奴が、出なくて良いのかよ!!」



 スタッグは目にも留まらぬ速さで、スカイの背後を取った。

 この時、スタッグは(勝った・・・・・・!)と思ったであろう。


 しかし、スカイにそんな小細工は通用しなかった。

 スカイは微動だにしなかったが、魔術によって空気でスタッグを飛ばした。


(何だと!?この雌め。ただの猿かと思ったが、そうでは無いようだな・・・・・・)


 スタッグは冷や汗を掻いていたものの、痛みといったダメージは全く無かった。

 スカイは続けて、スタッグを飛ばした。


(この攻撃。痛みこそ無いが、かなり厄介な術だな。遊んでる暇などねぇ・・・・・・!)


 スタッグは全魔力を解放し、辺りの建物を全て消し飛ばした。

 スカイはニヤリと口角を上げ、スタッグに声を放った。



「どうやら私にムキになるようね。良いわよ、全力で来てちょうだい!」



 スタッグとスカイの間には、凄まじい程のエネルギーを感じられた。

 そして、スタッグが足を踏み出し、二人の戦いは始まった。






 俺とアビスの方では、モントデアとの争闘が起こっていた。

 モントデアは、以前と比べ物にならない程の魔力と技術を身につけていた。


 モントデアと主に戦っていたのは俺だった。

 アビスは、万が一俺が負けそうになった時に備えて、敢えて戦わないそうだ。



「私は皆の大いなる女王よ。アナタ達のような魔物に、負ける訳にはいきませんわ!」



 モントデアが必死に剣を突いて来るが、俺はクラゲの姿と言う事もあって全く当たらなかった。

 人間体と比べて、面積が少ないからな。



「チッ、全く当たらないじゃない!」



 俺は淡々と躱すが、俺の目の前で必死な表情をし、本気で当てに来るモントデアの姿がなんとも面白かった。

 俺は思わず、微笑してしまう。



「フッ」


「何が面白いの!?私を舐めてると、痛い目に遭うわよ!」



 モントデアがそう言問うと、ちょうど俺に当たる場所へと刃が向かって来た。


(来たわ!これは絶対に当たった!)


(マズイ!これではサレア様が────!!)


 モントデアもアビスも、確実に当たると思っていただろう。

 しかし、俺に攻撃は当たらなかった。



「な、何で────」



 モントデアがそう言い漏らすと、俺は一つ足をモントデアの肩に置く。


「終わりだよ。お前は────」


 俺がそう囁いた時、アビスは俺の隣で感激していた。



「必ず当たる挙動だったので少々焦りましたが、流石はサレア様です。攻撃の次元をズラすテクニックを所持していたとは、思いもしませんでした・・・・・・」



 次元をズラすテクニック?

 そんなテクニック、俺は持っていない筈。

 いや。この身体になって、何も使い方など分からなかったが、何となく魔法は出せていた。また、普通に動けていたので、今更疑問を抱いたところで遅いのだ。


「いや、俺は何となく動いているだけで────」


 俺の言葉を聞いたアビスは、驚きを隠せない表情で駭然していた。



「そ、そんな事が・・・・・・!?」



 アビスは思わず本音を漏らすが、この時とある事を思い出した。


(いや、サレア様はもしかすると────)


 アビスが惧れていたところ、モントデアが容赦なく魔法陣でアビスを取り囲んだ。



「油断大敵。先ずは一人目!」



 モントデアがそう叫ぶと同時に、魔法陣の中で大爆発が起きた。

 アビスは真面に食らい、俺は心底不安だった。


 しかし、モントデアが嘲笑していると、煙の中から笑い声が聞こえた。





「フーフッフッフ。何を勘違いされてるのですか?私は傷どころか、触れられた気もしませんでしたよ?」





 アビスは、挑発混じりに吐露(とろ)した。

 モントデアは計算外の出来事に、銷魂していた。



「こ、こうなったら、最強の守護者を呼んでやる!」



 モントデアは頭に血が上っていたがために、冷静さを失っていた。

 そして、モントデアの言うように守護者を召喚する。




(いで)よ!我等蟲王族(インセクト)唯一の〝天下無双/鬼蜻蜓系(マッチレスリベリュル)〟の一柱〝ツアガイル〟!」




 すると、空から舞い降りるとてつもない魔力の守護者が降臨しようとする。

 しかし、ツアガイルがモントデアの元に着く事はなかった。

 何故なら・・・・・・









「そこをどけと言っている!」



 誰かに向かって、怒って声を上げるツアガイルの姿があった。

 その相手とは、世界最古にして最強の一角〝ルイン〟であった。

 これは流石に相手が悪い。



「そう怒らないでよ。ボクは、サレアの仕事が邪魔されるのを防ぐのが仕事さ」



 怒りを爆発させたツアガイルは、膨大な魔力でルインに圧を掛ける。

 しかしルインからすれば、ドングリの背比べのようなものであった。




「どうだ?戦闘だけで言えば、俺はあの女王様をも越える」


「それがどうしたんだい?女王か何か知らないけど、所詮ボクの敵じゃないよね~」




 ツアガイルは怒りの頂点に達し、音速を越える速さでルインに殴りかかる。

 それを何の変哲もないかのように、躱すルイン。


 そう。ルインはこれでも、かなり手加減しているのだ。



「ボクは君を倒そうだなんて思っていなくって、ただ遊び相手として面白いから相手してるんだ。勘違いしないでくれよ。雑魚が────」



 実際の所、ツアガイルはモントデアを上回る程の強さはあった。

 だだ、ルインが相手な為、モントデアもツアガイルも微力であった。




「それは、こっちのセリフだぁぁ!!!!!」




 ツアガイルは怒りのあまり、攻撃を当てることしか考えていなかった。

 こんなヤワな攻撃では、ルインには掠りもしない。



「へいへーい!これで女王越えてるとか、どんだけ小物なんだよ」



 ルインは揶揄いながら、ツアガイルを蔑む。

 そして、ツアガイルは最後の切り札を発動する。




「こうなれば、星諸共木っ端微塵にしてやる!」




 ツアガイルは切り札のポーズを取り、地に向かって魔術を放った。





「宇宙の餌となれ!〝蟲死雷/王系(クオレマサンダー)〟!!」





 蟲死雷/王系(クオレマサンダー)·····四方八方からターゲットに向かって発射される、膨大な魔力を含む稲妻。その威力は星一つ破壊出来る程度であり、どんな強者であろうが、傷付かない事はないだろう。



 ルインは全ての稲妻を諸に食らい、付近は煙で覆われた。


 勝利を確信したツアガイル。


 そう。この技を真面に食らって、生き延びられた者はいないからである。

 しかし、ツアガイルの思想は、一瞬にして去っていった。

 目の前には、人型の影が見えたからだ。




「今までで一番良い攻撃だったんじゃない?もしかしたら女王も倒せるんじゃない?」




 ルインはツアガイルの反感を買うように、訊ねる。



「黙れ!女王様はこの星唯一の雌。絶対に死なせる訳にはいかない!」



 モントデアに対するツアガイルの忠誠心が、勝った。

 ルインは口端を上げ、遊びを終わらせようとする。



「まあ、君が女王に倣っているのはよく分かった。でもさ、その女王が死んじゃったらどうする?ボクは面白いと思うんだけどな・・・・・・」



 あまりの発言に、ツアガイルは魔力の限界を突破した。

 その魔力はモントデアやスタッグの元にも届いており、皆が驚愕していた。



「嘘・・・・・・。何なのこの魔力。ツアガイルなの?」


「スフフフ、面白い。これでは、私の魔力以上じゃありませんか」



 ツアガイルは魔力を溜め終わり、愈々(いよいよ)戦闘が再開されるところであった。


 先に足を踏み出したのはツアガイル。

 ルインのすぐ目の前まで光速で移動し、強力な魔法を放つ。

 しかし、それはルインがベクトルをズラしたせいで、簡単に散っていった。



「今度は、ボクの番だよね」



 ルインがそう告げると、ツアガイルは全身から血を吹き出した。



「おぎゃぁ!!」


「魔法の中でもまだまだ下位な方だよ、この魔法────」



 ツアガイルは喋る間もなく、全身から血が溢れ出る。



「そうだ!良い事教えてあげようか。この魔法の名は〝生者制裁/腕系(ローグ・ナイトメア)〟。死んでまた、来世で遊ぼう」



 ルインがそう述べると、ツアガイルは大爆発した。


 最も大きな魔力が消えた事で、異変を感じるモントデアとスタッグ。


 果たして俺達は、女王とスタッグに勝てるのであろうか。





「バカが。やはり女王様を守る事ができるのは、(スタッグ)一人なんだよ────」




 スタッグは影でボソッと呟いた。

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