第4話:最古竜族ルイン
サレアとセウズは共に息を凝らしており、互いに見合っていた。
セウズはサレアの隙を。
サレアはセウズの苦手な立ち回り、属性等全てを解析していた。
「手加減は、致しませんよ」
セウズがそう告げるのと同時に、戦いは始まったのであった。
先程戦ったカルマとは、全く次元の違う強さを誇り持っていた。
遂に戦闘が始まり、先に攻撃を仕掛けたのはセウズだった。
脚に青い炎を纏わせ、サレアの方へと蹴りを食らわす。
しかし、サレアは動じずに立ち止まっていた。
そして、セウズの攻撃が当たった────かのように思われたが、それは誤解だった。
(な、何故当たらない!?)
かなり強力な蹴りを、何もせずに対処されてしまったセウズは、この一発で焦燥感に駆られていた。
一方サレアは、当たらない事は把握済みだった。
「悪いな。俺に攻撃は届かないみたいなんだ。さて、今度は俺の番だな」
サレアは余裕と共に、勝ちを確信していた。
この時セウズは、思いも寄らない発想が、脳裏を過ぎっていたのだ。
(ま、まさかとは思うが、コイツ────)
しかし、今は戦闘中。
そんな事を考える暇など一切無く、サレアの攻撃が飛んでくる。
サレアは空中の空気を踏み切り、セウズの頬を目掛けてパンチを試みる。
但し、身構えていたセウズは、サレアのパンチなど安易に躱した。
(いや、俺の悪寒は気のせいだったようだな────)
サレアがそう感じた次の瞬間、外れたパンチが何故か当たっていたのだ。
(バカなっ────!?)
それは何故か。
────当時のサレア自身は気付いていなかったのだが、彼には「概念、不可能、規則」等、他の魔物とは異なる力を所持しているのだ。────
外れれば外れる────と言う規則は、サレアには存在しなかった。
それを誰も理解していないまま、練習試合は続く。
「ほう。もしやすると、遺物級には値するかもな・・・・・・」
サレアの隠された力に興味を抱いたテミスは、分析するように呟いた。
セウズもまだ本気は出しておらず、ここからが本気の戦いになろうとしていたその時、何者かが二人の間に君臨して来たのだ。
「やあやあ。中々面白そうな事をやってるみたいだな────」
その少年は、見た感じ幼かった。
サレアは少し警戒しながら、落ち着いて問い掛ける。
「誰だお前?」
するとその少年は、抱腹しながら俺の問いに対して口を開けた。
「ハーハッハッハッハ!待ってました!その質問待ってました!僕の名を聞いて驚くなよ────」
少年が名乗ろうとしたその瞬間、セウズが魔力を膨大に膨らませた弾を少年に向けて放った。
その少年は片手でその弾を受け止め、「フッ」と小さい炎を消すかのように消し止めた。
「いきなり危ないじゃないか。この〝ルイン〟に対して無礼だぞ!」
名を聞いた皆は、一瞬にして空気が冷えるように静まり返った。
その中で、何も驚いていなかったのは、サレアのみであった。
「ルイン、と言ったな?お前こそ、急に割り入って危なかったんだぞ」
サレアは注意するトーンで話しかけたが、周りの反応は予想とは違った。
サレアはその空気を把握し、何やらマズイ予感を感じた。
そんな事を思っている間に、テミスが口を挟む。
「そ、その御方は、世界でたったの二体しか存在しない〝古竜族〟よりも古い存在〝最古竜〟の一種なんだぞ!!」
テミスは冷や汗を掻きながら、サレアに厳しく諫言した。
まあ、ですよね。
皆、名前を聞いた瞬間に顔が青褪めていたんだもの。
サレアは異世界に来てから時間が経っていない為、最古竜族の偉大さを理解していなかった。
サレアは小さな声で、「すまん」と謝罪した。
「ほほう。この僕の凄さが分かる?いや、分からない方が可笑しいんだけどさ。やっぱ君達って面白いよね~。僕は只々挨拶程度で来ただけなんだけどさ、驚愕と絶望を混ぜ合わせじみた表情すんのがマジでオモロいんだよね~」
ルインは最古竜族の一種。
世界に二体しか存在せぬ貴重な人物に対して、誰も安易に声を発しようとする者はいなかった。
そんな中、ルインの魔力を鑑定する。
どれどれ・・・・・・。
(うーん。おかしいな。何度試しても鑑定失敗する────)
サレアは必死に探るが、ルインの魔力を測定する事は出来なかった。
そんな事をしてる最中に、ルインは忍び笑いをしながらサレアに対して発言する。
「君さ、今僕の魔力を鑑定してるよね?別に良いんだけどさぁ、許可くらい貰ってからしてくれないと、泥棒と一緒だよ~」
何と小言煩いガキか。
サレアは内心そう思いつつも、空気を読んで黙っていた。
そう思っている間、クラゲの姿へと戻り、大きな溜息をついた。
「ほう。君が噂に聞いたクラゲか。見る限り、激甚な魔力を備えているようだね────」
ルインは笑顔を崩さず話し、終いには「ああ、怖い」と思ってもないような呟きが聞こえた。
サレアはルインの魔力を感じ取れない以上、どれくらいの強さか把握していなかった。
そのため、仮にルインと敵対した時が厄介であり、常に警戒せねばならなかった。
するとそこで、セウズがサレアに訊ねた。
「サレアは〝四聖魔物階〟と言うのはご存知でしょうか?」
当然、サレアは知らないので否定する。
「いや、分かんないな。何なんだそれは?」
「それでは〝四聖魔物階〟について、教えてあげましょう」
皆は息を呑み、セウズの話を真剣に聞く。
それに対しルインは、腕を組んで偉そうにし、興味無いかのようにしているようだ。恐らくだが、実際聞きたいと思っている筈。
「先ず、この世界には宇宙規模や宇宙よりも大きな存在を創造したり、破壊する魔物が四種族潜んでいます。その四つの種族は非常に危険であると認定されており、それを四聖魔物階と呼びます。で、その中の一種〝最古竜族〟の一人なんです」
サレアはこの時、初めてルインが雄偉な存在だと知るのであった。
するとルインが、一瞬でサレアの背後につき、頭を握り持ったのだ。
「へぇ~。これが新たなる魔王か。そうは見えないけどなぁ・・・・・・」
セウズは即座に距離を置き、警戒した。
スカイはどうすれば良いか分からず、ただ様子を伺っていた。
するとそんな中、テミスが足を踏み出し、ルインに対して魔法陣を仕掛ける。
「許してくれよ!悪魔系=大魔噴火!」
それはルインを倒す為の魔法ではなく、サレアを守るための魔法だった。
サレアはそれを正しく判断しており、一瞬にしてシールドを張った。
それに対してルインは、恰も自分を倒すために向けられた魔法だと勘違いし、少し憤っていた。
「ふ~ん。僕にこんな事するんだ。ならば君達、この星諸共殲滅させちゃおっかな~!」
ルインは余裕の笑みを浮かべていたが、目の奥にはこの星が燃えたぎる光景が映っていた。
テミスは誤解を解くために説得しようとするが、一言喋るのは、もう遅かった。
「違ッ────」
最初の被害者はセウズ。
ルインは目にも留まらぬ速さでセウズの目の前へ行き、セウズの首を把持していた。
判断が遅れた皆は、セウズが気絶した頃に振り返った。
「さ~て、次はお前だ!」
ルインはスカイの方を指差し、これもまた神速で移動したのであった。
しかし、スカイは首を守りきっていた。
「私に同じ手は通用しないのです。それでは、私から行きます!」
スカイから攻撃を仕掛けた。
スカイはルインの全身を覆う様な魔術を放ち、その中に閉じ込めて潰した。
だが、ルインには傷一つ付いてはいなかった。
それどころか、傷付いたのはスカイ本人だった。
「そんな馬鹿なッ────」
テミスは吃驚し、思わず声が漏れていた。
それはサレアも同じように驚いていたが、サレアには冷静さがあった。
「サ、サレア────た、た、助け────」
ボロボロになったスカイに、更に追撃しようとするルインに歯向かったテミスは、今までに無い怒りを露にしていた。
「おのれルインめ!いくら最古竜族とは言え、ここまでやれば黙ってはいないぞ!」
するとルインは、またも鷹揚に笑っていた。
「ハーハッハッハッハ!黙ってなくても良いんだけどね。君、死んじゃうよ?」
そこで冷静さを取り乱したテミスは、星を消す規模の魔術を片手に込めた。
その魔術に更なる魔力を注ぎ込んだ。
「その魔力の数値、どうやらただの御雑魚さんではないようだね・・・・・・」
ルインは言いたい放題だったが、テミスの魔術を受けるつもりでいた。
そこで、テミスからルインに問いを投げかける。
「どうした?避けないのか?」
「避ける必要がないのさ。僕は目がいいからね、傷一つ付かない魔術系は食らってあげるんだ」
これは、紛れも無い煽りであった。
テミスもそれは理解しており、準備が整った魔術をルインに放った。
ルインは言葉の通り、避けることなく真面にヒットした。
(いくら最古竜族とは言え、これは耐えられまい────)
と、テミスが思ったのも束の間。
ルインには傷一つ無く、逆にテミスが大怪我を負う結果になった。
「お、お前。攻撃の向きを変えているのか?」
テミスは最後の力を振り絞って、ルインに質問する。
それに対してルインは、笑顔で答える。
「そう。僕は攻撃方向を変えているんだ。君の放った魔術は、君自身が受ける。どう?痛かった?」
テミスは口端を釣り上げ、気を失った。
残るはサレアのみとなり、ルインとの怠慢勝負であった。
「俺は戦う気などないんだがな。どうしても、と言うのならば────」
サレアはそう言いながら、魔力を解放した。
ルインは内心驚きつつも、ニヤリと笑った。
こうして、二人の戦いを幕を開けるのであった。




