第12話:光軍の御挨拶
投稿に間が空いてしまい、申し訳御座いません。
書きたい時に小説を書いてるので、今後も遅くなる様な事が多々あると思います。
どうかお許しの中、楽しんでくださると幸いです。
魔力不足によって倒れたシヴァを助けるべく、外の世界へと戻ってきた俺達。
シヴァはまだ意識は戻っておらず、ただ仰向けになっているだけだ。
そこで、俺はシヴァの腹部に指先を当て、〝治れ〟と思いつつ魔法をかける。
「ほう?」
少し驚いた表情で声が漏れるアビス。
何かに気がついたのだろうか。
俺は何も気にする事はなく、魔法をかける事に集中をした。
魔法がかけ終わると、目を瞑っていたシヴァはゆっくりと目を開いた。
「大丈夫か?」
俺はシヴァの顔を覗き込むかのように、心配をしてあげた。
そこで、薄気味悪く拍手しながら近づいてくるアビスがいた。
「お見事です。本当の緊急事態で、仲間を思いやれるサレア様に感動致しました!」
鼻から下は笑っているのだが、目が全く笑っていなかった。
「ところで、また新たな容姿へと進化したのですね?」
アビスは俺の見た目の変化に、気がついてくれたのだ。
今までは目だけが笑っていなかったのだが、俺の真の姿を見て顔全体が微笑んだように感じた。
「ああ、これか?」
俺は腕や背を見せるように舞い、アビスに新なる姿を見せびらかした。
「これは、俺の好きな女子のタイプをイメージして手に入れた容姿なんだ」
アビスは感激したかのように胸に手を当て、俺の話を整理した。
「ほう。つまりは今の身体が、サレア様のお好きなタイプだと言う事ですね?」
俺が言った事を言い返すように納得するアビス。
俺は少々恥ずかしながらも、小さく頷いた。
こんな雑談は置きとして、そこにシヴァが間に入ってきた。
「あの、サレア様。拙者を助けて下さり、誠に感謝します!一体、なんとお礼を言えば────」
「そんな細かい事は気にしないでくれ。それに、アビスが物知りだった事で助けられた訳でもあるしな!アビスにも感謝してくれよ!」
俺は笑顔で、アビスにも話を吹っかけた。
アビスはニヤリとシヴァを見つめ、シヴァはアビスにも頭を下げる。
「アビス殿も、誠に感謝します!」
「フフフフ。サレア様が助けると言う意思があるのならば、私が力添えするのも当然です」
アビスは口端を上げ、シヴァに頭を下げ返す。
そんな時間が続くと思っていた俺だが、そんな時間は長くは続かないらしい。
突然宙に浮く眩い光の中から、太い声がした。
「おいおい。本当にクラゲが、妖魔帝と鬼王を連れているとはな────」
突然聞こえる怪しげな声に、俺達は警戒する。
「誰だ?」
俺は笑顔から真剣な顔になり、楽に正体を暴こうと訊ねる。
しかし、そんな簡単に名乗ってくれる奴ではなかった。
「『誰だ?』と聞かれて、すぐに名乗るバカが何処にいる?」
この言葉に呆れた俺は、正体特定を諦め、用件も問う事にした。
「名乗りたくないなら良いさ。んで、此処に来た用件は?」
謎の男は、突然笑い出しながら答えが返ってきた。
「ハーハッハッハ!俺様が態々やって来た用件はな、お前達三人諸共抹殺してやる為だ!」
これは、俺達に喧嘩を売ってきた、と言う解釈で間違いないな?
俺は倒せたとして、アビスとシヴァを抹殺出来るかは別の話だ。
アビスはその謎の男を相手にせず、全く話を聞いていないようだった。
何故なら⋯⋯
「サレア様。アイツこそが、サレア様の一番の目的とする光軍の一人ですよ」
俺の耳元で囁くアビスと、ハッと息を呑む俺。
アイツみたいな奴を全員倒せば、俺は元の世界へと戻ることができる。
俺はその事を頭に入れつつ、拳に力を入れる。
そのまま、謎の男をつまみ出す。
「うおあ?!」
「いい加減、自分から姿を現せよ。んで、お前が光軍だな?」
俺がそう確認すると、その男はニヤリとした表情で首を縦に振った。
「そうだ。俺様は光軍の中でも、最高司令官と呼ばれている〝アルベド〟だ!」
中々面倒くさい展開になりそうだ。
しかし、ここでアルベドを倒しておく事で、後々楽に光軍を倒せるのかも知れない。
そう考えた俺は、アルベドを倒すことを決意した。
「アルベド、俺とここで戦わないか?」
アルベドは余裕そうな表情を崩さず、俺に直近してきた。
「可愛い女が何を言う?お前あれだろ?クラゲだろ?いくら見た目が可愛いかろうが、俺様はお前を殺すことだって容易いんだぜ!」
額に顔をくっ付けて来ないで欲しい。
俺は嫌だったので、覇気でアルベドを離す。
「俺は男だし、お前は俺を殺す事は出来ない────」
俺がそう告げると、アルベドは汗を流した。
その汗は、おそらく焦りの汗だろう。
「いい度胸だな。ならば、本気を見せてやろうか!」
アルベドは物凄い魔力を放出し、俺は飛ばされそうになっていた。
更に不思議な事に、アルベドに悪の心が感じられない。
(なんだこの力。コイツ、こんな強かったのか?)
俺は焦りと緊張で、少し足が震えているようだった。
そして、アルベドは超速で俺の顔を殴りかかってくる。
それにしっかりと対応し、ギリギリガードする俺。
俺はガードしたものの、衝撃で後ろまで飛ばされ、更には追撃をされる。
「おいおい、どうした!?見た目通り、力も可愛いもんなのか!?」
完全に押されている。
俺は今までの戦闘で、最強だと思っていたが、どうやら上には上がいたらしい。
(こ、これが光軍の力。こんな強い奴らを、全員倒せと言うのか?)
俺は心の中で、挫折していた。
元の世界に戻るなど、もうどうでもよくなってきていた。
こんな奴等と戦い、苦しい思いをするなら、一生クラゲのままで良い。なんて、弱音を吐いていた。
しかし、俺の本当の力はまだ解放されていなかった。
俺も物凄い魔力を出し、アルベドを威圧する。
「なるほど。女でも、こんな魔力を出せるとはな!」
だから、俺は男だって。いや、元男だな。
こんな俺でも、一応は魔王だしな。
「俺は魔王だ。魔王海月だ。お前が俺にした事を、そっくりそのまま返してやるよ!」
俺はアルベドの前まで瞬間移動し、思い切り腕を振った。
アルベドはガードに間に合ったものの、その腕がちぎれてしまった。
「これが悪の組織の上位、魔王か。今の威力ならば、軽く星一つは壊せるな────」
アルベドはゆっくりと腕を再生しつつ、俺の強さを認めてくれた。
アルベドの腕が完治すると、急に俺の背後へと回った。
そんな事、俺としては想定内だった。
後ろ側に攻撃が出来るよう、敢えて俺の攻撃方向を後ろに持ってきていた。
「ぐわぁ!」
アルベドは何発かクリティカルヒットし、少しダメージがあったようだ。
「ククク。俺様も本気を出さねばならないらしいな!見せてやるよ────!」
アルベドが必殺技を出そうと構えた瞬間、謎の年寄りがアルベドの腕を掴んだ。
「ぐっ!?」
「帰るぞ、アルベド。お前さんでは、まだ魔王に挑むのは早い」
アルベドはそのお爺さんに怖気づき、何も反抗はしなかった。
そしてお爺さんが帰る際、俺に向けて一言言い放った。
「これは、ほんの御挨拶じゃ。何れかは、お前さん達を殲滅させてもらうぞ」
お爺さんとアルベドはそう言って、何処かへと行ってしまった。
あのアルベドを、こうもあっさりと怖がらせるとは、あのお爺さんも中々ヤバい奴だと悟った。
すると、アビスとシヴァがやって来て、アビスは俺に説明をした。
「あの年寄りも、間違いなく光軍の一柱です。恐らくですが、アルベドと名乗った者の師でもあるかと⋯⋯」
アルベドの年寄りへの態度や、力の差からして、そう捉えられたのだろう。
俺も何となくはそう思っていたが、アルベド以上の奴がいるとなると、これから遊んで暮らすのも難しいな。
今はまだゆっくりと考えられるし、休憩するとしよう。
俺とアビスの住処はアビスが用意してくれた。
シヴァは元々居た学校へと一人で戻り、俺達と逸れたのだった。
住処に到着すると、そこは何とも豪華な町だった。
「この時の為に、妖魔族の皆様と協力して、一つの町を築き上げたのです!」
アビスは自慢するかのように、俺に町全体を見せてくれた。
そこには、妖魔族が沢山と手を振ってくれていた。
当然、俺はアビスがこんな事をしてくれている事に感動していた。
「おお!凄いじゃないか!」
「お褒めの言葉、感謝致します。今日からこちらは、サレア様が主上とする町でございます!」
俺は突然そんな事を言われて、対応出来るはずも無かった。
しかし、妖魔族の皆は俺を拝めるように、見つめてくる。
きっと、アビスが躾けたに違いない。
「お、俺が主上か?」
「ええ!サレア様が主上でなければ、この町は成立しませんからね」
俺を町のトップにする為に、一々こんな事を言ってくるのだろう。
この時は笑って過ごしたのだが、この後起きる悲劇は、誰も予想していなかったであろう。




