第9話:新たな仲間と今後
皆が緊張して俺とモントデアの戦いを見る中、一人だけ閑暇な奴がいた。
「あーあ、つまんねーの。ボクもっと強い奴と戦いたかったな~」
そう呟いたのはルインだったが、モントデアの表情が変わるのを俺は察した。
(もっと強い奴?一体、誰と戦ったと言うんだ?)
モントデアがそう思うと、ルインは笑顔で独り言を口にする。
「さっきのトンボみたいな奴がボクに喧嘩を売って来てさ。弱かったから良いんだけど────」
ルインの言葉は、モントデアの心に大ダメージを負う事になった。
モントデアは胸を抑え、自身を落ち着かせる。
(落ち着け、私。まさか、私をも越えるツアガイルを、恰も弱いだなんて────)
モントデアは再度ルインの顔を見るが、ルインから出る凄まじい覇気に押し潰されそうになっていた。
モントデアは胸が苦しくなる一方で、戦意を損失していったのである。
しかし、女王と言う肩書きの名において、敗北は許されない。
女王が負けた。つまり、それは〝この星の敗北〟を意味するのである。
「私の配下でも、圧倒的に強いんだけどね。でも、そんなツアガイルを弱い呼ばわりするなんてね。タダでは帰さないわ」
モントデアは星の為を思い、全魔力を解放する。
俺はゆっくりと前に歩み出て、他の皆を守るべく守盾を張る。
モントデアは両手を広げ、宙へ飛んで行く。
俺はそれを見つめながら、ゆっくりとモントデアに近づく。
「たかがクラゲの分際で、調子に乗るな!」
魔力を使い果たしたのか、今度は打撃で攻撃を出して来た。
しかし、そんなパンチを止めるまでもなく・・・・・・
「届いていない!?」
「たかが一つの国の女王の分際で、魔王に手を出すとはな────」
俺はモントデアと同じように返答し、そのままお腹を目掛けて蹴り飛ばした。
「あまり女性に手を出すのも好きでは無い。だがな、そう言う思考では、悪を善とする女輩も増えるんだよ」
モントデアは口から出た血を、舐めるように拭き取る。
「ウフフ。私はアナタ方にとっても善となる行動しかしていないのだけどね。困ったな・・・・・・」
何を寝言言っているのだ。と、突っ込みたくなる気持ちで山々だった。
「ところで、先程クワガタ野郎に聞いたんだが、お前が我々を狙っていると言うのは事実であるか?」
そう質問したのは、目の奥に燃えたぎる景色を映していたテミスだった。
そうそう。元々何故モントデア達と戦っているかと言えば、俺達の命を狙っているとアビスから聞いたからだ。
アビスは微笑しながら、話を聞く。
「アナタ達の命を狙おうとした事は、紛れもない事実だわ。だけどね、それには理由があるの」
テミスは「サレア含むボクらの命を狙おうとしたのなら」と、手に魔気を込める。
それを止める俺。
「理由を聞かせてくれ」
俺がそう言えば、テミス達もモントデアも、話す場聞く場を作ってくれる。
モントデアは思い悩んだ表情で、淡々と話し始める。
「私には、大切な故郷があったのよ。そこには沢山の花が咲き誇り、我々蟲王族も多く居たわ。だけど、その時は訪れた。平和と息災で満たされている中、サレアのようなクラゲ共に故郷を壊され、挙句は多くの蟲王族が奴隷として養われたわ────」
胸が痛くなって来たせいか、俺は自然とモントデアに喋ることを阻礙した。
「過去に辛かった事があったんだな。もう、それ以上は思い出さなくて良いぞ」
俺が話を止めると、他の皆も頷く。
「お前にはお前なりの事情があって、俺達の命を狙ったんだろ?俺達も俺達で事情を聞かず、勝手に攻めたのは申し訳ない」
俺はそう言い終えた後、俯くモントデアに手を差し伸べた。
「俺達は互いに生きているんだ。殺し合いなんかせずに、笑って過ごそうぜ!」
俺は笑顔で仲間に勧誘した。
今まで戦ってきたのに、今更何をと思う人もいるかもしれない。
だがな。遅くてでも良いから、相手の心に気付いてやる事が大事なんだと思う。
俺はその考えを大切にしながら、仲間への勧誘をしてのである。
アビス、セウズ、テミス、スカイ、ルイン。
誰一人と嫌な顔はしていないし、寧ろ俺の意見に納得出来たと思う。
そこで、モントデアが口上する。
「ありがとう。でも、私もアナタ達の事情を知らずに戦を起こした。誠に申し訳ない!」
モントデアが涙を流しながら、俺達に頭を下げる。
俺はニッコリと笑い、モントデアの頭を上げる。
「その気持ちは俺達も一緒なんだから、謝罪は無しだ!」
俺の微笑みに釣られるように、モントデアの口角が上がった。
この空気、如何に清々しいのだろうか。
戦闘が起こっていた重苦しい空気から、平和で爽やかな空気へと変化されたのは、実に素晴らしい。
俺は、我ながら感激を受けていたのである。
そこに、テミスが一つ借問する。
「サレアよ。ボクのところに、彼女をこちらにくれないか?」
彼女とは、モントデアを指しているのだろう。
最初は戸惑いこそしたが、すぐに結論が出た。
「う~ん。俺との縁でモントデアが過ごしづらいのかもと考えると、その意見には賛成だな」
俺は、キッパリと賛成したのであった。
それに喜ぶテミスと、緊張から解されたモントデア。
「本当か!?それは助かる!」
「よく分かりませんが、私は彼について行けば宜しいのですね?」
テミスは頷き、モントデアに対して軽く自己紹介を行った。
別の人達の事だが、セウズとスカイは元に居た星へと帰るらしい。
ルインは特に戻らなければならないと言う事情は無く、俺に付いて来るらしい。
そして、セウズ達やテミス達は、それぞれの居場所へと戻って行った。
皆が帰った後、俺の背後からアビスが一つ質問を投げかけて来た。
「失礼します。サレア様は以前、学校に通われていたと思われますが、そこで鬼のような者は居ませんでしたか?」
俺は、一人だけ心当たりがあった。
『これはこれはテミス様。お呼びでしょうか?』
『呼んだから来てるんだろ?鬼王。ボクの隣にいるこのクラゲは、今からボクや君達の王だよ────』
俺はテミスと出会ってすぐの時を回想し、その時の状況をアビスに伝える。
「居た!確か、そいつは〝鬼王〟と名乗っていたような・・・・・・」
俺がシヴァの名を出すと、ルインとアビスは目を見開いた。
そこで、ルインが質疑して来た。
「ほう、シヴァとな!?一体、サレアは何を話したんだ?」
俺は顎に手(?)を当てつつ、話した内容を思い出した。
「そうだな。俺が何処から来たのか、とかかな?優しそうな奴だったし、何も思わなかったけど・・・・・・」
俺がそう述べると、続いてアビスが警醒する。
「シヴァは穏やか且つ温厚ですが、破壊力は凄まじい程ですよ────」
アビスが言うから余計信じているが、正直最初から気づいていた。
「そうなのか?それで、何でシヴァの話題を出したんだ?」
俺は逸れていた話を戻すべく、アビスにそう問いかける。
「ああ、話が脱線しましたね。シヴァについてですが、先程も話したように、破壊力は世界トップを誇る程です。その為、戦闘や破壊については物凄く長けているのです。そこで、サレア様はシヴァの元に稽古を付けに行くのはどうでしょうか?」
何を急に────と、俺は困惑していた。
当然の如く、俺は直ぐに頷く事無くじっくりと考えた。
そこで、俺は一つ疑問を抱いていたので、流れに乗って問う。
「何故シヴァなんだ?他は居ないのか?」
「居ない事はないですが、サレア様の本気を実感出来ると思われます。何をしようと、全て破壊されますし────」
なるほど。他者に対する危険な魔法を放てるからこそ、修行になると言う事か。
俺はそう解釈した。
「ボクじゃダメなの?」
ルインは、アビスを嫌味ったらしく睨みつける。
すると、アビスはクスクスと笑いながら返答する。
「とんでもない。ルイン様でも全然可能なのですが、余りにも危険すぎます。ここはきっちり専門家に任せないと────」
アビスの話の途中で、ルインはアビスに殴りかかる。
しかし、アビスは指一本で受け止めて見せた。
「何!?」
「急に殴りかかるなんて、危ないじゃないですか。私だから良かったものの、サレア様にしたら命は無いですよ?」
ルインは歯軋りをしつつ、測定出来ない程膨大な魔力を放出する。
そこの間に入るかのように、俺が喋りかける。
「抑えろ、ルイン!二人とも仲間なんだから、喧嘩しないでくれ────」
案外ルインは、すぐに大人しくしてくれた。
力及ばずな俺からすれば、全く以て助かる話である。
「話を戻しますが、サレア様はシヴァの元でないといけません。女王モントデアとの戦いを見て、数多な能力を所持していると推測出来ましたので、どんな事をされるか分かりませんよ」
ルインは頬を膨らますが、俺自身も納得できる。
何故あんな能力が出せたか、とかさ、思っちゃってたから。
取り敢えず、殴り合いになるような事は起きなくて良かった。
俺がこの場を収め、シヴァの元へ向かう事にしたのであった。




