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男子高校生✿裏垢女子やってます。  作者: 甘夏
【第三章】アリスのチェシャ猫騒動
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第25話 裏垢女子はいろいろ画像と悩みを共有=RTする 1/2

――あのさ……あとで、ちゃんと話したいんだけ……ど

……有栖の恰好なら考えてもいい――


 そんなやりとりがあったのは、今日の昼頃で。

 市河と、なにより榊と解散してから、ずっと俺は考えていた。


 まず、1点目チェシェちゃんの炎上のこと。

 炎上した理由は、なりすましによるバイトテロだった。

 

 そして、その真犯人はクラスメートの塩野目汐里さん。

 榊に告白した女子だと思われること。


 この件はチェシャちゃんにいま伝えるべきなのだろうか。いや違うと思う。まずは事実確認が大切だろう。憶測で進めるべきじゃない。

 とくに店長さんと話会う前までには確認すべきことだ。


 つぎに2点目。

 これは俺のこと。いや正確な言い方をすれば『有栖わたし』のこと。

 クラスの悪友の一人、榊に知られていた。

 これはこれまでの同じ裏垢女子に見つかってしまった身バレとは少し違う。

 本人は、言うつもりはないとのことだけど。


 だれかに言わなかったらそれでいい。

 口を封じていればそれでいい。ってわけにもいかないよなぁ。

 これからどんな顔で新見旬として教室で関わればいいかもわからないし……。


 そして、3点目。

 また榊のことだけど。

 塩野目さんを振ってまで、榊がチェシャちゃんのことを好きなのだとすれば、その気持ちを応援するべきじゃないかと思うけど。

 正直、当の本人の考えもわからなければ、チェシャちゃんはつかみどころのない子だし。そっちもわかんないし。


 それに、裏垢女子とそのフォロワーが直接かかわることはよくないんじゃないかなって、思う気持ちもある。


「――て感じで3点まとめてみたんだけど」

「よくできました。有栖ちゃんがデートにまざりたいっていうからそんなに愛されてるのか~~って思ったんだけど、ほんとに色々ともめ事を伝えたかったのね」

「まぁまぁ、詩帆、ちょっと話聞いてるといろいろ《《お姉ちゃん》》も大変そうだから、《《いちおー》》相談のってあげよーよ」


(ん? 『いちおー』のところで嘲笑ぎみだったよね、絶対いま)


「加恋がそういうならいいけど、よかったわねー良い妹をもって」


 ここまでの会話でわかるように、俺は映画を見にいっていたシロちゃんと加恋のお出かけに加わっていた。『有栖』として。

 なぜまた女装なのか。

 というと、シロちゃんとの間でLINEでのこんなやりとりがあったから。


       ***


<あのね。ごめんねー口滑っちゃって。有栖ちゃんのこと全部ばれちゃった>

『……へ?』

<加恋に馴れ初め、聞かれちゃって~。ちょっと惚気てたらー、裏垢のこととか、トワイライトのこととか、べらべら~ってね>

『いや、え、ちょっと。まって。加恋なんて!?』

<あーやっぱりーって感じ。てゆか、前の加恋ちゃんの制服が見切れてた画像の件覚えてる?>

『あー。あー……あのすぐ削除したやつ?』

<うん。あれちょっと東女の中で話題になってたみたいでね、だれ? だれ? って。そして、有栖ちゃんってのが加恋に少し輪郭とか似てないー? って話になってたらしくて。もしかして……みたいな憶測はあったらしいの>


(ああ、身から出た錆じゃん……)


 という経緯。

 あまり強くシロちゃんを責められない状況だったので、とりあえずは観念して妹にも洗いざらい話をすることになった。という流れでの……加恋からの一言。


<あ、お姉ちゃん。合流するならわかってるよね! とびっきり可愛い恰好でくること。あと、もう隠さなくていいから、これからは加恋ともっと話をすること。いい?> 


       ***


「さすがに、幻滅してる……だろ」

「うん」


 加恋の顔を直接見るのが怖くて、少し伏目がちに聞いてみる。

 即答で、肯定されてしまったのだけど。

 さすがに……落ち込む。


 まぁ、冷静に考えて、俺もチェシャちゃんが言うように、『へんたい』なんだと思うけども……。いまもこんな話をしながらも有栖の恰好だし。

 それも、オーダー通り、とびっきり可愛い恰好をしたつもり。


 髪型は桜色のウィッグをチョイスして、しっかりアイロンで巻いて。

 その髪の色に合うようにホワイトのボレロ。

 ワンピースは鮮やかな水色のもの。

 珍しく、パンツスタイルじゃなくてスカートにしたのは、それこそとびっきりにするためだった。


 シロちゃんに感化されて購入していたアイスブルーのカラコンに、さっきはとっさに外したけど。改めてイヤーカフを取り付けて。

 少しヒールの高い靴を選んだ。


「だって、お姉ちゃん。らしくない。喋り方がかわいくないよ」

「……?」


 思わず目がテンになったまま、隣に座るシロちゃんを見る。

 ああ。

 左手でお腹を押さえて、右手で口をおさえながら……めちゃくちゃ腹抱えて笑ってるじゃん。


「あ……加恋、ごめん。じゃあ……んッこほんッ! これで、どう、かしら?」 


 声色をあらためて調声して、有栖の声で再度話かける。

 よろしい。との一言。

 ありがとうございますお代官様……といった具合のやりとりがあっての。


「――て感じで3点まとめてみたんだけど」

 

 3つの相談ごとが始まったわけ。

 ちなみに。シロちゃんとの会話のやり取りの中、加恋からのLINEが届いていた。


<今度、可愛くなる方法いっぱい教えて。それでほんとにほんと。許してあげる>

『そんなことでいいなら……わたしにまかせて。加恋はいまのままでも可愛いけど、もっとよくする方法はいくらでも知ってるから』


 そう返しておいた。

 昔とその形は違ってるかもしれないけど。

 加恋との距離は、少しずつ近づいてるのかもしれない。

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