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男子高校生✿裏垢女子やってます。  作者: 甘夏
【第三章】アリスのチェシャ猫騒動
22/50

第21話 裏垢女子といかれたお茶会 1/2

「……んーそうなんすよ。だから私じゃないですし。あ、このパスタいけますね」


 ファミレスでパスタを頬張りながら、事の顛末を語るチェシャちゃん。

 ネットにあがっていた本名は正しいようで、根井円香ねいまどかちゃんというのが彼女の名前らしい。

 

 俺とシロちゃんは、あの日彼女に助けられた恩もあり彼女の助けになれないかと集まったのだが。

 当の本人はあまり気にしていない様子で、待ち合わせたファミレスに着くや、大盛りのカルボナーラを注文した。


 ちなみに、俺とシロちゃんはドリンクバーでコーヒーと紅茶だけ。

 事が事だけに、そんなに食事が喉を通らないのだけど。

 

 彼女だけ本名を言っているのもあれだから、俺は新見旬の名前と、あらためて男子であること。

 そして、シロちゃんは仲田詩帆の名前と白兎というIDのことを語った。


――ナカダシホーダイって感じの名前で、すっごく裏垢やってそうですね。でもナンパするような人には気をつけないとだめっすよ


 と、いった傷口をえぐるような発言を飄々としていた。

 シロちゃんの顔はひきつってたからそれなりに効いていると思う。

 

 たすけられた恩と差し引いて……たぶん少しマイナスくらい? な気がしてる。


「え、っと。じゃあ円香ちゃんがあの写真をあげたんじゃないとすると……。だれかがカラオケ屋の店員の服を着て、お店のなかで撮影してたってことだよね? なにか身に覚えのある他のバイトの子とかいるの?」


 どうして、俺が女性口調で話しているかというと。

 有栖の恰好だから。

 以上。


 もう説明はいらないと思うけど。


「いないんですよね。ほかのバイトで女子って。あ、有栖センパイみたいにかわいー男子もいないからね。あとチェシャちゃんでいいですよ。私もおふたりのことは垢名で呼ぶっすから」


 もしいたとしても、炎上した写真はほとんど上半身が見えているもので……。

 チェシャちゃんくらい大きなバストのお姉さんだったけど。

 左の鎖骨下に、ホクロはなかった。


 だから、俺はすぐにチェシャちゃんは冤罪だと気づいたのだけど。

 その理由をシロちゃんに説明するのは苦労した。

 まえからのフォロワーで知ってたとか、実はあのときのバイトの子が……とか。


 実際に見せられたことを伏せながらあたふたして説明して納得してもらった感じ。


「でも、実際には猫ちゃんがやったって思われてて個人情報とかも漏れてるし、そこのとこどう思ってるの?」


 身バレした経験をもつシロちゃんだからこそ、そのあたりは気になるところだろう。


「あー、そうっすよねぇ……。これで私もインターネット・ミームの一つとして世のサーバー・ストレージのなかで、半永久的に生き続けることになるんすね」 

「なんか、喜んでない?」

「まさかぁ。だって、令和初期の痴女代表として語り継がれるなんて。そんな、ねー?」


(あー……変態だこの子)


「うん、猫ちゃんが変態なのはわかったし、それはいいんだけど、お店とか、ご家族とか、学校のこととか、そういうのは?」

「そんな変態なんて言わなくてもぉ。そもそもトワイライトで投稿してるひとも、見てる人も、みんな変態ですよー、私も変態、うさちゃんセンパイも変態。有栖センパイも、とーぜんヘンタイっす」


 正論だけど。

 世のJKはファミレスで変態を連呼しちゃいけないと思うんだよね。

 パスタすごい勢いで食べてるし。


 今日のチェシャちゃんはバイトのときのような黒髪ではなく、桜色の明るい髪色で、スウェット生地のパーカー姿。どことなくパンクな感じの雰囲気は彼女がチョーカーをつけているからかもしれない。

 だぼついた服だけど、胸はやっぱり大きい。

 

「でも、そうっすね。学校はさいきん流行りの不登校なのでいいんすけど、家族もべつに……でも、てんちょーが心配っす。めいわくかけちゃってるのは……しょーじき嫌っす」


「お店には、なんて言われてるの?」


 シロちゃんが尋ねる。

 みんな同じ年だけど、身バレ経験者はさすがに落ち着いてて少し年上に見える。


「んー、もともとバレてたんすよねてんちょーには。だから、ほら。スマホ自分のものはバイト中にてんちょーに預けてたっすから」


 あー、それで忘れ物のスマホを持ち出してたのか。あれ、でもバイト中にDM来てなかったかな。


「あれ、でもDMしてきてなかった?」

「うん、てんちょーの前でぷち休憩時間だったから」

「ん? ん? 意外と仲良しなの? その怖い店長さんと」

「てんちょーは怖いけど、やさしいひとですよ」


 その言葉を聞いて、少しシロちゃんの顔が曇った気がする。


「ねえ猫ちゃん。その店長さんって信用していい人なの? なにかされてない? 言い寄られたりしてない?」

「あ、だいじょーぶっす。てんちょー女の人なんで」


「へ?」

「え?」


 俺とシロちゃんの驚嘆の声が重なる。

 だって、ふつーに強面のおじさんをイメージするじゃん……ねぇ?

 

「それで……もしよかったらなんすけど。お二人にもてんちょーと会ってほしいなって……思ったりしてまして。だめっすかね」

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