㉕神剣と神槍でズタズタに切り裂いた上に大穴開けてやりたい気分なんだけど
「う、う……ん……ここは…………ホテル……か……」
眠りから覚めると、泊まっている部屋の天井が目に入ってきた。。
「零一くん起きた?」
隣の部屋から栞が様子を伺ってくる。
「あぁ起きた……」
「全く……いきなり寝るなら寝るって言いなさいよね」
栞の後ろで無理なこと言ってきたのはフィーリアこと鈴音だった。
「お前もいたのか」
「いちゃ悪かった? 魔王」
「口外するなよ?」
「辰弦さんから丁寧に教えてもらった。契約してるなんて思ってもみなかった。しかもヴェレンティアナが監督してるってホント?」
オレはゆっくりと頷く。
まだ眠気が取れてないようだな……頭が重く感じる。
「今何時だ?」
「十六時です。あの騒ぎから六時間ほど経ってるよ」
「事後処理は警備隊長みたいな人が指示してやってくれたわ。風華たちも一時間前に目覚めて安静してる」
「猿島さんも軽傷だったから安心なんだけど……」
栞さんの表情が少し曇る。多分、スカイレースを台無しにされたことで落ち込んでしまっているんだろうな。
「次のレースに向けて、もう練習しているの……あんな妨害に負けるほど軟じゃない。だってさ」
落ち込むどころか、逆に闘志を燃やしてしまっているみたいだ。
「それだけ元気なら大丈夫だろう」
「それで、あの力はなんなの?」
鈴音が不快な顔して訊いてくる。
「いまいちわからない。ただ、魔導でもなければ、魔術でもないとは思っているぞ」
「そうなの?」
「確信には至ってはないがな。そこはヴェレンティアナ……晴香が調べている最中だ」
「魔法を極めて鼻高々な魔王でもわからないことがあるってだけで驚くことなんだけど」
嫌味をふんだんに込めた言葉に、オレではなく栞が笑顔のまま鈴音に詰め寄る。
「ふふ、少々言葉がキツイようですが、気のせいですか?」
「……アハハ、ソウデスカ?」
さすがに戦女神は無理だろうと思ったが、冷や汗をかいてそっぽを向くぐらい気迫があるんだな。変なことは言わないでおこう。
「そ、それでさ。犯人は何がしたいわけ?」
「さぁな」
「さぁなって……そんな簡単で言いわけ? 私は仲間があんな風にされたの腹立たしくて、神剣と神槍でズタズタに切り裂いた上に大穴開けてやりたい気分なんだけど」
「やめろ。地球を壊すつもりかお前は」
「私も、かなり腹立たしいから魔眼使って探してあげようかと思ってるぐらいだけど?」
全く……なぜオレがストッパー役になっているんだ。
おーこえー二人とも




