⑰えっと、暴れん坊で、傲慢で、力こそ正義みたいな奴
そんなことがあった翌日の警備時間。
「ジーッ」
なぜか鈴音に付き纏われている。
「何か……したの?」
「特にこれといって」
「これはこれで幸せかもしれない……」
良かったな……
「だがやりにくくてしょうがないな」
オレはため息を一つついてから鈴音に近づいていこうとしたら、
「ヤバッ!?」
逃げられてしまった。
「何だ全く……」
気づかれてないと思ってるのも驚きなんだが。
それからというもの、様々な場所に鈴音からの視線を感じながら警備を行っていた。
桐生は桐生で喜んでいるのでいいのだが……気になってしまうな。
「今日も警備ご苦労様です……それで、彼女はどうしたのですか?」
猪里さんが小声で訊いてくるが、オレは首を横に振って気にしないでほしいという意思を伝えた。
「まぁ……そういうことならいいですが……では、お疲れ様でした」
「はい」
「お疲れ様でした……」
報告を終えて、オレと桐生はホテルへと帰った。
「って、何でこんなこと泊まってるの!?」
やっと鈴音が話しかけてきた。
「昨日会った猿島さんの厚意で宿泊してるんだ」
「へぇ……」
「しかもロイヤルスイート」
「はっ? ホントに!?」
桐生がこくりと頷く。
「い、いいなー……じゃなくて!」
「なんで後付けてるんだ?」
本題を訊くと、鈴音はしばらく考えてから口を開いた。
「探してる人がいるの」
「どんな奴なんだ?」
「えっと、暴れん坊で、傲慢で、力こそ正義みたいな奴」
「……知らないなそんな人」
「それで、昨日の零一がその探してる奴に見えたの」
「そんな暴れん坊で、傲慢で力こそ正義な奴に見えたか?」
「ちょっとだけ……でも今日の警備を覗いてたら、そんなことなかったから気のせいってことがわかったわ。桐生さんに飲み物を買ってあげたり、道に迷ってた人にも優しかったから」
「そうか」
「あーあ、どこにいるんだか。私の宿敵さんは」
宿敵とは……何かの因縁があるようだな。
「ごめんね零一。今日一日付き纏って」
「まぁ気になってはいたが、ちゃんと話してくれたから大丈夫だ」
「ふふ、零一は優しいね。宿敵さんとは大違いだよ。じゃあね」
「あぁ」
「ライブ……絶対見に行く!」
「ありがとー!」
それにしても中学三年生なのにもう宿敵がいるとは……椛にもそんな奴がいるのだろうか? だが、長い間探しているような話し方だったな……それこそ何十年も探しているような。
それこそオレのように転生者で、記憶持ったまま生まれて来たとかだったりしてな。
…………いや、だったら晴香が何か言うはずだろうからそれはないだろう。
「さて、部屋に戻って食事にするか」
「うん……そうしよう」
鈴音の探し人はだーれだ?




