⑪ようこそ、サシマロイヤルホテルへ
オレたちの降りたモノレールの駅から歩くこと数分で宿泊するホテルは建っているのだが、高級感が溢れ出ている外観に桐生は立ち止まって見上げていた。
「本当に……ここ?」
「あぁ、そのようだぞ」
出入りする人の身なりはそれ相応の服装で、一介の高校生が泊まるには敷居が高すぎるのではないだろうか?
「お待ちしてましたよ。柊くんに、桐生さん」
見慣れた制服を来た男子生徒がオレたちに近づいてきた。
「初めまして、生徒会書記二年の藤川憲人です」
……今まで生徒会室に出入りしていたが初めて見たな。
「僕は普段生徒会室で仕事をしていないですから会う機会は滅多にありませんよ」
「そうなんですか」
「効率が良くないですからね。リモートでできることならリモートでやらせてもらうという条件で、生徒会に入ったので。おっと無駄話でしたね。ご案内いたしますこちらへ」
藤川先輩の後ろをオレたちはついていく。
エントランスは煌びやかな装飾の数々に彩らており、魔王城にでも戻ってきたのか錯覚してもいい程の絢爛さだった。
「ようこそ、サシマロイヤルホテルへ」
サシマ? ……猿島……なるほど、猿島さんの……ということは……
「零一様ぁぁぁぁぁぁ!!!!」
心地の良いのBGMを掻き消す声がエントランスに響いた。
振り向くと、サマードレスを着た猿島さんが意気揚々とこちらへやってくる。
「あう……猿島ちゃん……ここのホテルって……」
「えぇお父様の手掛けているホテルですわ。あたくしの敬っているお方と、大事なお友達が学院都市に滞在すると、お父様にお話をしたら是非ともうちで宿泊していきなさいと許可をもらいましたの」
「す……すごい……」
「それで。オレたちの泊まる部屋はどこになるんだ?」
「憲人さん」
「はい、お嬢様」
藤川先輩は猿島さんに、二枚の認証キーを手渡すと胸に手置いてお辞儀した。
「リ、リアル執事!?」
「えぇ、そうですの。憲人さんのお家は代々執事を生業としている家庭なんですよ」
そうだったのか、つまりリモートで生徒会をしているのは執事業に影響がないようにしているのか。
「そして、零一様たちがお泊りになるお部屋は!」
一般的なホテルの認証キーとは違った白銀に輝く認証キーをオレたちに差し出してきた。
「ロイヤルスイートですわ!」
「おい」
「ふぇ!? ロ、ロイヤル……スイート!? あぁ……」
あまりの豪華な部屋に桐生が昇天してしまった。
本当にいいのか、高校生がどう足掻いても払えるわけがない金額がする部屋に泊まっても。
「最高の思い出を提供いたしますわ零一様」
「あ、ありがたいんだが、オレたち二人だけ高級な部屋で二週間も過ごしてもいいのか?」
「どうぞ、あたくしの気持ちですから受け取ってくださいませ」
ここまで言われたらもう断れないな。
「わかった。ありがとう猿島さん」
「では、あたくしはここで失礼いたしますわ。また後日会いましょう零一様」
「失礼いたします」
お辞儀をして猿島さんは藤川先輩とともにエントランスを後にした。
さてと、桐生を起こしてロイヤルスイートというのを体験するか。
羨ましいぜ零一たちが




