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魔導高校生の魔王様  作者: 伊吹わなご
第一章:魔導高校入学編
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⓹魔導高校に昨日入学した、ただの一年生だよ

 昼休みの時間となり、約束通りに生徒会室に赴いた。


「ようこそ、生徒会室へ」


 ノックをする前に扉を開けてくれたのは生徒会長ではなく、桐島先輩だった。


「なぜ桐島先輩が?」


「いつもお昼はここで食べてるんだよ」


「そうでしたか」


「私のことはどうでもいいから、生徒会長が今か今かとソワソワして待ってるから早く入れ」


「は、はぁ……」


 そんなに待ち遠しいのか?


「ソワソワ……ソワソワ……」


 待ち遠しかったらしい。ソワソワという気持ちを直接言う人なんていたのか。


「生徒会長ー? ……ったく、栞ー? 後輩たちが来たのだから挨拶をせんか」


「え? あぁそうよね! すぅ……はぁ……今日は無理なお誘いに来ていただき誠にありがとうございます」


 それはパーティーなどで使用する挨拶では?

 周りを見てもそういう目で見て黙っているし、桐島先輩なんかは呆れながら首を左右に振っていた。


「……とりあえず席に座ってくれ。昼食は弁当を持ってきているかい?持ってきてないなら食堂のランチを配膳させるぞ」


 オレは無言で弁当箱を見せて、生徒会室の中央に陣取っている長机の椅子を引いて腰掛ける。その隣に恭介、その隣に奏という順で座り二人は配膳を頼んだ。

 

 向こうを見れば、オレの真向かいにしゅんとしている生徒会長、右に桐島先輩、もう二人の女子生徒が座っているという席順で、その見知らぬ二人の女子生徒はオレを物珍しい目で見ていた。


「これが噂の新入生、ですか」


「んー? となりの男の子の方がかっこいいと思います!」


 桐島先輩の隣に座っている眼鏡をかけた人は落ち着きがある人だが、その人の隣の金髪少女は初対面なのに失礼な人だった。


「わたしは三年機械科、そして生徒会副会長をしています日向樹です」


「アタシは魔導科二年生で会計の、北上フェリシーラでーす。フェリスちゃんって呼んでね☆」


 性格が極端に違いすぎる二人の自己紹介にオレはともかく、隣の二人は唖然として自分たちの自己紹介にまごついていた。


「あとは書記に藤川という二年生の男子と――どうやら来たみたいですね」


「お待たせしました」


 綺麗なお辞儀で挨拶して入ってきたのは女子生徒だった。その後ろには恭介たちが頼んだ料理を乗せたドローン型ワゴンが飛んでいる。


「では、お配りいたしますね」


 彼女が歩くとドローン型ワゴンもついていき、まずは桐島先輩から料理を配っていく。

その姿を注視していた恭介が、オレに小声で聞いてきた。


「零一、あの子……誰だっけ?」


「昨日の入学式で、新入生代表で答辞をしていた戌井飛鳥。もしかして寝てないよな?」


「いや、バッチリ起きてた」


「じゃあ覚えてやれよ……恭介のバイクを作った戌井重工業の会長の孫娘が、彼女になるんだぞ」


「うへ、マジかよ……超お嬢様じゃん……」


 苗字に干支の戌が入っていて、魔導師としても優秀な血を彼女は受け継いでいる。というのはあまり深くは知らなそうだったので会話を終えた。

 その間にも料理を淡々と運ぶ戌井さんは、チラッと、オレを見ると何か思い出したかのように話しかけたきた。


「柊……さんでしたよね?」


「そうだけど」


「わたし、魔導科一年A組で生徒会会計の戌井飛鳥と申します。先ほどは助けていただき、ありがとうございます!」


 自己紹介と共に、礼儀作法のお手本のようなお辞儀をする戌井さん。

 先ほど、というのは三年生の魔導を止めた件だろう。新入生が多くて認知はできなかったがあの場にいたのか。


「二階席から見ていましたが、とても勇敢ある行動で素敵に思いました」


 二階席……? オレの間違いでなければ闘技場の二階席は防魔ガラスが貼られているから、例え殺傷性が高い魔導が飛んできてもひび割れすらしない設計がなされているはずなんだが……


「ねぇ、戌井さん……それは助けたに入るのかな?」


「はい!」


「あぁ……はい……」


 肩まで垂れているサイドテールが揺れるほどの力強い返事に、奏が押されてしまった。

 なんだろうな生徒会というのは、個性が強くないと入れないところなのか?と勘違いしてしまうぐらい個性的な人たちだ。


「戌井さん。料理が冷めてしまうので速やかにお願いしますよ。感謝は食事をしながらでもできますから」


「あ、申し訳ございません!」


 日向先輩の指摘に、深々とお辞儀をして急いで料理を置いていく戌井さん。

 そして、全て置き終えると戌井さんは奏の横に座り食事は始まった。

 最初は変な緊張感があって静かに食事をしていたが、北上先輩がそれをぶっ壊した発言が着火剤になって他愛のない談笑で賑やかになっていった。


「それにしても見事だよ柊くん。上級生、しかも三年生を止めるなんてな」


「ほえーすごいね、レイレイくんは!」


 北上先輩に変なあだ名を付けられたが誰も気にせず会話が続く。


「でも、すごい速さで走ってたよね?加速魔導でも使ったの?」


「あぁ、まぁ……そうだが……」


「緊急対応だ。黙認しておこう」


「すみません」


 オレの発言になにか引っかかったのか、奏が疑問を投げてきた。


「でもさ、零一君。魔導デバイスを操作してるの見えなかったよ?」


「あの一瞬でよく見てたな奏。実は、自分で詠唱して加速魔導使ったんだよ」


 オレの言葉に、疑問符を頭の上に作る一年生たち。向かいを見れば驚く顔を表に出す三年生たち。そして、


「す、す、すごーーい! レイレイくんは魔導デバイスなしで、そんなに速く魔導使えちゃうんだー!」


 歓喜する二年生を見て――しまった……と思った時には遅かった。


「魔導は魔導デバイスがなくても発動はできます。問題は最低でも原稿用紙半分の文字数の魔導文字(メイジ)を、言い間違えなく詠唱しなくてはならない点です。そして加速魔導は原稿用紙一枚と半分の文字数なので、緊急性の高い場面で即座に一字一句間違えずに、魔導を実行した柊君は……とんでもない新入生、ということになりますね」


 湯吞に入った熱いお茶を丁寧に啜りながら、理解できてない恭介たちに日向先輩は説明をした。話を聞き終えた恭介たちの目線は当然、オレに向けられている。


「柊君、今ここで君の魔導を見せてもらえませんか?」


生徒会長はそんなことを言い出した。


「生徒会長、授業以外の魔導使用は禁止では?」


「生徒指導委員長」


「生徒会長……それはあまりにも私的な理由すぎて黙認するしかないじゃないか」


 これが職権乱用ってやつか。

 ()()()の小言が増えそうだが、魔法を使って記憶操作するよりはマシだからいいだろう。


「……他言無用にしてくれるなら嬉しいんですが?騒がれてしまうと授業がまともに受けられなくなるのは嫌なんで」


 全員無言で頷く。


「ここで加速魔導は狭いので飛行魔導にしますね」


 言い終えると同時に、足元に魔導陣が展開し、ふわりと浮いてみせた。


「す、すごいですね柊君は……」


 口に手を当てて驚く生徒会長。


「ワーオ! レイレイくんかっこいい!」


 両手を上げて嬉しそうしてる北上先輩。


「これは見事だ」


 顎に手を置いて驚く桐島先輩。


「原稿用紙二枚半ですよ飛行魔導は……」


 眼鏡を取って、詳しく見てくる日向先輩。


「柊さんは天才なのですか?」


 両手を右頬に置いて、疑問を投げかけてくる戌井さん。


「零一君すごいね!」


 両手で拳を作って上下に振りながら褒めてくる奏。


「零一……お前なにもん?」


「魔導高校に昨日入学した、ただの一年生だよ」


 腕を組んで訊いてくる恭介と、十人十色には足りないが、様々な反応を見せてきた。


「でもよ、詠唱って言葉に出さなくてもいいのか?」


「イメージで、心の中で詠唱をすれば魔導は発動できる」


「そして、柊君は今でも心の中で詠唱し続けていることになりますね」


「そうなのですか?」


 戌井さんの質問に日向先輩ではなく、生徒会長が答えた。


「飛行魔導は、連続して詠唱をしていないと飛び続けることができない魔導です。魔導師が簡単に飛べているのは、魔導文字(メイジ)を内包できるメイジカートリッジと、その内包した魔導文字(メイジ)の配列で飛行魔導なのかを解読し、正しい飛行魔導の配列と解読すれば詠唱し発動権を譲渡する。という処理を超高速でしてくれている魔導デバイスが、連続処理をしているから飛べているのです。ですから今の柊君は」


「メイジカートリッジと、魔導デバイス状態ってこと?零一君?」


「まぁそういうことだな」


「そんなに喋っていると落ちてしまわないかい?」


「飛行魔導だから大丈夫です」


 何が大丈夫なんだ? と言いたい顔を、北上先輩を除いた全員にされている。

 ただ、生徒会長は他にも伺いたいという顔も見せていたが、予鈴が鳴り響いたのでここでお開きとなった。

ちょっと魔王らしい部分を

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