⓼魔導アイドル……マジカルメイデンだよ……
リニア列車は本当に便利な乗り物だな。一時間もかからずに東京に着いてしまった。
そこから学院都市まで直通のモノレールに乗るのだが、入校許可証をもらうために手荷物検査などを今は行っている。
「ふ、布団に、毛布……枕……」
学院都市の警備員が引きつった顔で桐生の荷物を検査していた。
列車内でも多くの人を集めていたが、ここでも注目の的だ。
「い、異常はありません。どうぞ入校許可証です」
「あ、ありがとうございます……」
そして布団一式が入ったリュックや鞄を軽々と持ち上げる桐生に、警備員はもっと驚いた顔をした。
桐生は重力魔導が得意と言っていたが、どうやら荷物にかけているな。地味でわかりにくいが魔眼で覗いたら魔力が集まっていた。
「では、次の方」
オレの番になり、衣服が入った鞄と学生証を差し出した。
「柊……零一さん…………はい、確認できました。荷物も確認できましたので、入校許可証です」
「ありがとうございます」
入校許可証を受け取ってゲートを潜ると、
「おい、あれ見ろよ。マジカルメイデンじゃね?」
「マジだ! すげー! 初めて生で見た!」
そうゲート付近が騒がしくなった。
「なんの騒ぎだ?」
「魔導アイドル……マジカルメイデンだよ……」
「魔導アイドル?」
オレは桐生に訊くと、自身気のない瞳だったのが輝き始めた。
「デビュー間もない五人組のアイドルグループで……デビュー曲の『もってけ私の魔力』がストリーミングで一億再生もされたぐらい人気上昇中の女の子たちなの……」
やけに詳しいな。もしかして……
「アイドルが、好きなのか?」
こくりと頷く桐生。
すると、そのマジカルメイデンと思われる少女たちが人だかりの中から現れ、オレたちの通ったゲートとは違うゲートからモノレールのホームへと足早に去っていった。
「ラッキーだったね……魔導祭でライブするって言ってたけど……見たいなー……」
「時間が合えばいいな」
「うん……!」
そしてオレたちもモノレールのホームに足を運んだ。
「あそこだけ人が群がってるな……」
先頭車両付近でモノレールを待ってるのだが、魔導アイドルを一目見ようとしている人間たちで後方車両側のホームは埋め尽くされていた。
「これだと見れないな」
「うん……しょうがない……人込みは嫌い……」
ただな桐生……オレたちの後ろにいるマスクにサングラスをかけて、深く帽子を被った五人組がいるのには気づいているのか?
多分……いや、間違いなくマジカルメイデンの少女たちだろうな。
「おい、桐生……」
「な、なに?」
桐生にしか見えないように、指を後ろにさした。
「えっと……? 後ろ? …………………オバケ!?」
「オバケちゃうわ!!」
「あ、こら雪奈! シーーッ!!」
五人組の右端にいた関西弁を喋る少女の大声に、残りの四人は一斉に口を塞いだ。
「アハハ……ごめんなさーい、大声出して」
「……そ、その声……朱美ちゃん?」
「あっ……バレたわ……」
いや、その恰好をしてる方がおかしいと思うが……
「あ、あの、お願いだから静かにしてほしいなーって……」
「あう……その声は海李ちゃん」
「う、嬉しい!」
これはまさかとは思うが……
「じゃあ、喋ってない残りの二人はわかるのかな?」
「ん……………」
「「……………………」」
「右が風華ちゃん。左が鈴音ちゃん」
「……やばいじゃん……合ってるよ。なんでわかったの?」
朱美……だったよな? が桐生に訊くと、自分の鼻をさした
「鼻がどうしたのかな?」
「風華ちゃんは香水使うって言ってたから……う、うちも同じの持ってる……使ったことないけど……」
「アハハ、それは嬉しいな~」
さすがにこれは凄いと言わないとな。桐生はファンの鏡と言えるだろう。
「ここまでバレたら仕方ないか。じゃあみんな、声を小さくして、私たちの自己紹介をしようか。せーの……」
『……私たち、魔導アイドルのーマジカルメイデンでーす……』
小さな声に小さくピースをすると、桐生も小さく拍手して喜んでいた。
もってけ私の魔力。西暦二〇八一年六月発売予定(めっちゃ嘘)




