⓹桐生……呉羽……です……
一学期が終わる週初め、中部魔導高校の生徒たちは落ち着かない様子で登校していた。
今日は試験結果が発表される日でもあり、同時に点数が良ければ魔総会のメンバーに選ばれると栞さんが言っていた。
オレは警備生徒で行くことになるので関係ない話にはなるが、恭介や柴咲は緊張した面持ちで席に座って待っている。
「奏は緊張してないんだな?」
「ん? スカイラクロス部で東京に行くことになるから全然気にしてないよ」
そうか、全国大会も魔導祭の日に行われるのか。だから祭と名がつくんだな。
「それよりも、あたしが気になるのは点数だよ……零一くん」
「そうか」
そして、点数発表の時間となって教室内が緊張が走り、クラス全員が端末機の画面に食い入る。
まずは魔導科の総合成績上位者の発表が画面に流れてくる。
一位、A組、戌井飛鳥。
二位、C組、猿島奈々。
三位、D組、樋口菫。
雉幡さんは惜しくも四位で、柴咲は十位と健闘していた。恭介はどうやら四三位という結果のようで安堵した表情に変わっていた。そして奏は……
「うぉぉぉ!! ギリギリゼーフ!!」
一五七位で赤点からは逃れたようだ。
次は機械科の成績発表。
一位、B組、柊零一。
二位、C組、桐生呉羽。
三位、A組、三木善久。
という結果だった。
「さすがだね、れ――柊君」
柴咲が明後日の方向を見て言ってきた。
「どこ見て言ってるんだ柴咲」
「ごめん、あんま見ないで……」
「祝杯ですわぁぁぁぁぁぁ!!!」
「「零一様ーー!! お見事ですわーーー!!」」
静かだった教室内が戌井さんたちよって騒がしくなる。
この入ってくる光景が、慣れてしまったB組一同は完全に無視できるようになっていて、一々騒がなくなった。
「あんね飛鳥。飛鳥も魔導科で一位なんだからもうちょっとさ? 自覚してほしいんだけど?」
「飛鳥の一位なんて、零一様の一位比べればばばばぁ!!!!」
「はーい、静かにしようねー」
いつものように口を塞ぐが、雉幡さんが代わりに喋り始めた。
「零一様、ご紹介したい方がいるのですが、よろしいですか?」
「あぁいいぞ」
「桐生さん、どうぞこちらに」
猿島さんに呼ばれてB組に入ってきたのは、どこかのピンクのパジャマを着たライオンのようにボサボサな黒髪のロングに黒縁眼鏡、それに加えておどおどした態度が印象的な少女。
「は、始めまして……桐生……呉羽……です……」
少々元気のない自己紹介をする桐生さんは、指と指を絡めたりして落ち着かない様子でオレを見たり猿島たちを見たりしていた。
「オレは柊零一だ。よろしくな桐生さん」
「よ、よよよろしくお願いしま――あふゃ!?」
「桐生さん大丈夫ですか!?」
どうやら舌を噛んでしまったらしいので、雉幡さんにオレは訊いた。
「それで、桐生さんを紹介した理由は?」
「桐生さんがもう一人の警備生徒のようなのです」
「大丈夫なのか? 一年生だけ、しかも機械科の生徒が代表で警備生徒って」
オレの質問に戌井さんが答えた。
「それに関しては零一様がご一緒なら大丈夫。と確信していますが?」
まぁそうなんだが……
「や、やっぱり……うちじゃ……た、頼りないよね……」
「いや、そこは問題じゃないだろ」
「え…………?」
「オレは桐生さんが頼りないなんて思ってないよ。三年生や二年生を退けて警備生徒になるんだ、それだけ実力があるってことだろ?」
「あ、あの、うち……戦闘魔導……得意じゃないよ……?」
「そうか、何が得意なんだ?」
「あう……えっと、えっと……重力魔導……」
「それも闇系統魔導の重力魔導か、貴重な戦力だよ」
「う、うちの……属性系統……わかるんだ……すごい……」
「ほら、言った通りではありませんか、零一様は凄いお優しい方で凄い方ですよって」
そうか、自信が持ててない桐生さんを励ますために先に紹介したのか、少しは自信がついただろうか?
「うぅ……眩しい存在……怖い……」
どうやら時間がかかりそうだな自信がつくには。
おどおど女の子登場。




