⓷校内で断トツの一位に選ばれたからだよ
「はーい、お待たせー。カミサワハンバーグよ」
なんとか椛を落ち着かせて店内に入り席に着くと、晴香がタイミングよくキッチンカミサワの名物料理を運んできた。
「わー! 美味しそー!」
熱々の鉄板の上に握りこぶしほどの大きさのハンバーグに奏たちは目を輝かせている。
「それじゃ、乾杯といきますか! みんな、テストお疲れさまー!! かんぱーい!」
『かんぱーい!!』
今日の計画担当した恭介が乾杯の音頭でテストお疲れ様会が始まった。
「うーん♪ 美味しいーー!!」
「紅林さんありがとう、父に伝えておくわね。それでは、ごゆっくりどうぞ」
お辞儀をして晴香が厨房に戻っていった。
「零一様はこのような美味しいご飯を食べて育ってきたのですね……本当に美味しいですわ……」
「わたくし、嬉しすぎて味がわかっておりません……」
「あたくしもですわ雉幡さん……」
「いや、もっと大きく食べようよ二人とも……」
柴咲の言葉に大きな笑い声が上がる。
「ふふ、確かにそうですが、それだけこの時間を大事にしたいと思っているのですから、いいじゃありませんか」
「そうそう、美味しくいただくのは大事だよ姫子」
「奏っちはもうちょっとゆっくり食べたら?」
奏の鉄板にハンバーグがすでになくなっていた。
「何言ってるの姫子。おかわりするんですー! しかも、ダブルチーズインハンバーグをな!!」
そう大々的に宣言してメニュー用端末機を操作した。
「奏っち……なんて恐ろしい娘!」
そんな賑やかなやり取りをしている中、北上先輩たちは魔導祭で行われる行事の一つを喋っていた。
「今年の魔総会は絶対に勝たないといけませんよね!」
「えぇそうですね。前年度は二位になってしまいましたからね」
「お兄ちゃんは出るの魔総会?」
魔総会とは、魔導総合技術大会のことで、全国から優秀な成績を納めている十二の魔導高校が魔導技術で競い合うために行われる大会。それに中部魔導高校は毎年出ているようだが、優勝したのが四年前らしく、今年こそはと生徒たちは燃え上がって期末試験に挑んでいた程だったが、オレは少しだけ違っている。
「オレは出る気はないな」
「そうなの?」
「あぁ、やることがあるからな」
影の主からの挑戦状のことがあるから魔総会には出る気はない。というのが本音だが、ここでそんなことは言えないだろう。
「あれ? レイレイって……」
「魔総会に行くことが決まりそうなんですよ零一くんは」
…………嘘だろ?
「ま、待ってください。栞さん、勝手に選ばないでくださいよ」
「私は独断で選ぶ権利は持ってないですよ?」
「なら、なんで……」
「校内で断トツの一位に選ばれたからだよ」
柴咲があっけらかんとオレに向かって言い放った。
なんだそれは、知らないぞ……そんな投票していたのを。
「もー……お兄ちゃんってば、少しは興味を色んな方向に向けなよー……」
「そうは言ってもな……」
だが、これはこれで好機かもしれないと考える。影の主は何かをしようとしているのは明確だからな。ここは魔総会に参加しても良さそうだ。
「確か……月末からでしたよね戌井さん?」
「はい、そうですわ。警備生徒は一足先に現地に行く予定ですから」
………警備生徒?
「なんですかそれ?」
「魔総会の警備生徒に零一くんが選ばれた話ですよ? 東京魔導学院都市が魔導祭での警備員不足に悩んでいたので、それで魔総会に出る高校から各二名ずつ警備生徒として補充してほしい打診があったようです」
つまりなんだ?
「皆が出たくないからオレに投票したと?」
「誰が一番強い生徒ですか? という質問でしたから自然と零一様に集まったようです。もちろんあたくしたちは零一様に入れましたわ!」
「俺も入れたわ」
「あたしも入れあっつ! チーズあっつ!」
「実はボクも入れたりして……」
「アタシも普通にレイレイが浮かんだから入れたけどね」
「当然、私も入れましたよ」
……………………
「あ、珍しお兄ちゃんが固まったよ」
魔王が警備ですか、やりますね




