⓶お嫁さん決定じゃん!!
その日の夜。オレは椛と一緒にキッチンカミサワの店前でみなを待っていた。
「お兄ちゃんのお友達とワクワクするよ」
「落ち着けって椛」
みんなに会うのが楽しみな椛はオレの周りをグルグル回っている。
「おーい! 来たよー!」
最初に来たのは奏と恭介と柴咲のクラスメイトたちだ。
「あれ? この子は誰だい?」
「はじめまして! 柊椛っていいます!」
椛が元気よく挨拶すると、驚く表情をされた。
「零一の妹!?」
「妹いたんだ!?」
「全然っ似てないね!?」
失礼な奴らだな……
「お兄ちゃん……家の話したことないでしょ……?」
………………そういえば。
「したことないな」
「もぉー! ちゃんとコミュニケーションをしようねって言ってるよね!?」
「ちゃんとしてるから友達が出来ているんだが?」
「そーゆーことじゃーありませんのー!」
椛、それは誰なんだ?
「これじゃーあれだねー来月お兄ちゃんの誕生日ってこと、お友達さんたちに言ってないでしょ?
「あぁそうだな」
オレがそう言うと思いきり鼻から息を吸って、大きなため息を吐いた。
「ダメダメ。全くもってダメ! お兄ちゃんは高校生なの、華がある高校生なの。わかる? 椛みたいなちんちくりんな今年受験生とは訳が違うの! 青春を謳歌していいの! オーケー?」
「……いきなりどうした椛?」
やたら熱が入った弁にオレが訊くと、椛に指をさされる。
「お兄ちゃん、どっちのお姉さんと付き合う気なの?」
……………………は?
「オレが……なんだって? 付き合う?」
「そう! こっちのお姉さんはポニーテールが似合って目が真ん丸で可愛いじゃん。んで、こっちのボーイッシュなお姉さんは手足が細くてパンツスタイルなファッションがとてもとてもかっこいい中に可憐さがある。こんな両手の花状態なのに、お兄ちゃんは手を出す気はないと?」
この世界風に言ってやろう。
ねーよ。
「は、恥ずかしなー……えへへ……」
「ボ、ボクが可憐だなんて……柊君の妹さんは口上手だね……アハハ……」
口上手な椛の言葉に、顔を赤らめて嬉しそうにしている二人を横目に、オレと恭介はお互いに見合って苦笑いをした。
「おーここが神沢先生のレストランなんだねー! レイレイ、フェリスちゃん到着したぞ☆」
北上先輩がピースして登場すると、椛の目が強く見開いた。
「な、なんて可愛い外国人さん!」
「んー? ……もしかして、レイレイの妹?」
「はい、そうでありんす!!」
今度は誰だ椛……
「ワーオ☆ アタシは北上フェリシーラだよ。フェリスちゃんって呼んでね☆」
ギリザイエの時が素の北上先輩なんだろうが、よく恥ずかしがらずにできるな。
「了解ですフェリスちゃん☆ 椛はモミーと呼んでください!」
「了解だよーモミー☆」
共鳴しているぞ……
「しかし、隅に置けませんなお兄ちゃんは」
「なんだ……」
「花がもう一本あったなんて……ねぇ?」
椛を連れてきたのは間違いだったか?
「花? 花がどうしたの?」
「なんでもないです……気にしないでください」
椛のテンションにたまについて行けないことがあるが、今日は特について行けないな。
これで栞さんが来たら大変になるのは目に見えるぞ。
「ふふ、とても賑やかですね」
「あ、栞……さん?」
「うっひょーーー!!!! とびきり和装美人が、キターーーーーー!!!!」
栞さん、どうして着物を着ているんですか……椛が興奮して飛び跳ねたぞ。
「あらあら、ありがとう。私は辰弦栞と申します。よろしくね零一くんの妹さん」
「お嫁さん決定じゃん!!」
何をいきなり失礼なこと言ってるんだ。
「あら、椛ちゃんが義妹なんて嬉しいですね♪」
そこでなぜ乗っかるんですか栞さん。
そして戌井さん、雉幡さん、猿島さんもやってくると、いよいよ椛の興奮度合いが限界突破してしまい、オレの肩に手を置いて言った。
「ふふ、ハーレムやんけお兄さん」
なんなんだお前は……
椛のターン!! ドロー! 魔王封殺!!




