エピローグ
とある梅雨空の日。
「降水確率五十パーセントって傘を持っていくかどうか本当に悩むよね……!」
「そうですね……ロードバイクで来たのは不正解でした」
ロードバイクで登校するかしないか決めあぐねた結果、乗って登校したが見事に予想が外れてしまった。
オレの横で走る栞さんも傘を家に置いて登校してしまったらしい。
「激しく降る前に駅に着きたいですね」
「急ぎましょうか」
このまましとしと降り続いてほしいが、駅に向かえば向かうほど雨足が強くなっていく。
「これはもう、帰ったらお風呂だね……」
「風邪にだけは気をつけてくださいね」
「零一くんもね――ってなんだろうあれ?」
「ん?」
栞さんが走りながら指さす方に顔を動かすと、小さな公園の真ん中に赤い傘を差した人がいた。
すると、こちらに気づいたようで赤い傘を持つ反対の手で手招きをしてきた。
別に無視してもいいことだったのだが、オレと栞さんは不思議と赤い傘の人に向けて足を運んでしまう。
「おやおや、こんな雨なのにどうしたんだい? 忘れちゃったのかい?」
近づけばご年配の女性が柔らかい笑顔でオレたちに訊いてきた。
「はい、そうなんです……」
「そうかいそうかい。ならこの傘を使ってちょうだい」
赤い傘をスッと差し出される。
「それだとおばあさんが濡れてしまいますよ」
「私のことなら気にしないで。ほら、使って」
栞さんの手を取って赤い傘を握らせると、おばあさんは笑みを崩さないまま言った。
「ふふ、懐かしいわね。おじいさんにもこうして握らせたのを思い出したわ」
すると、どこからともなく一匹の極彩色の蝶が現れ、おばあさんの肩に乗った。。
「それじゃ気をつけて帰るんだよ」
別れの挨拶をともに極彩色の蝶が飛び上がると、おばあさんの体は無数の蝶へと変わっていき雨が強く振る空へと飛んでいった。
「「…………………………」」
その光景を呆然とそれを眺めるオレと栞さん。
「ねぇ……零一くん……」
「はい……」
「たまになら……都市伝説を信じてみるのもいいかもね」
「えぇ……そうですね……」
そんな不思議な出会いをしたオレたちだった。
「と、言うことが昨日起きたんですよ」
「「「嘘だ~~?」」」
疑いの声がカーテンで暗くしている生徒会室に響いた。
栞さんがこの話を奏たちに話したいと言い出し、第二回が行われている。
「本当ですよね零一くん」
「あのおばあさんが何者か気になってしたがなかったですね」
とは口に出しているが、大体は検討がついている。
あのおばあさんは間違いなく妖精だろうな。地球に妖精はいないと聞いていたが、人驚かせるイタズラをするのが好きなのも同じ、極彩色の蝶と仲がいいのも同じだったからな。
「柊君も見たってあたりで信用度をあげてますよね。それに上手くできてましたかたら面白かったですよ」
「では、柴咲姫ノ神姫子さん。次の都市伝説のお話をお願い致します」
「あぐぁ!! せ、生徒会長……それはご勘弁ください! 姫ノ神は師範代になる時に得た名前なだけなんですよ……」
「ダメです。柴咲姫ノ神姫子さん、どうぞ」
ニコニコと笑ってはいるが鬼気迫る雰囲気に、柴咲は冷や汗を掻きながらタブレット端末を操作していた。
「あーじゃーえーっと……SNSで噂になってる東京魔導学院都市の悪を断ち切る銀髪女剣士……」
「ダメです。自分の目で見た都市伝説をお願いします」
「……………………」
「うわ……姫子、女の子がしていい顔じゃないよ?」
「すごいな、人間は追い詰められたらげっ歯類みたいに前歯を出すんだな」
それにしても、東京魔導学院都市の悪を断ち切る銀髪女剣士とは少しばかり気になる話だ。
八月には東京に来いと挑戦状が来ているからな丁度いい内容だ。もしかすると、銀髪女剣士も奴の仲間という可能性もあるからな。
「柴咲、それはどんな話なんだ」
「え? 聞いてくれるの?」
「あぁ、聞こう」
「もぉ……零一くんは甘いんだから……」
「栞いいじゃないか、面白そうな話だ」
「えーっと……SNS内の話をまとめると……女剣士は痴漢からテロ事件まで幅広く現れるらしいよ。学院都市内は騒動が多いみたいで、その解決に一役買っているみたいだね。それで……その剣には名前があるらしくて……イクシス? エクシズ? みたいな名前だって」
……何か聞き覚えのある剣の名前だな……いや、まさかな……
「そのような人がいるなら安心できそうね悠子」
「あぁそうだな」
二人が安堵した表情で話し合っているので、オレは訊いた。
「何かあるんですか?」
「何って……あぁそうか、柊くんは一年生だから知らないか」
「八月に魔導祭が行われるんですよ。その東京魔導学院都市で」
二章が終わりました。ここまで読んでいただきありがとうございます。
三章もやりたい放題書きますのでよろしくお願いいたします




